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Internet Money

September 30,2020

LAの家で共同生活と制作をする、新しい形のヒット・プロデューサー&アーティスト集団

From FLJ ISSUE 73(9.30.2020)

「Internet Money Bitch」という声が入ったヒット曲を聴いたことがある人は多いと思う。ジュース・ワールドの「Lucid Dreams」、トレヴァー・ダニエルの「Falling」、リル・テッカの「Ransom」、XXXTentacionの「Fuck Love feat. Trippie Redd」といったヒット曲の数々。そのすべてを手がけてきたのが、インターネット・マネーという集団だ。インターネット・マネーは、プロデューサーとアーティストの集まりであり、企業であり、レーベルであるという、新しい形のクリエイティヴ集団なのだが、同時に新しい形のビジネスモデルも打ち出している。タズ・テイラー、ニック・ミラが中心になって結成され、LAの家で共同生活とスタジオ制作をしながら、ヒット曲を次々と生み出すということをやっているのだ。そんなインターネット・マネーが、8月28日には記念すべき1stアルバムとなる『B4 The Storm』をリリースした。創設者であるタズ・テイラーに話を聞いた。

FLJ 元々お父さんがドラマーで、自身もバンドを組んでいたらしいですね。音楽に囲まれた環境で育った感じでしょうか?
タズ・テイラー 親父はバンドでドラムを叩いてたし、毎週のように練習をしてたね。そういう中で僕は自然とギター、ベース、ドラムを手にしたわけだけど、すべて独学で覚えた。自分でもバンドを組んでたよ。それで今ではビートを作ってる。音楽はあらゆるタイプのものが好きだね。音楽は常に自分の人生の中にあるものなんだ。

FLJ 音楽で生計を立てていこうと思ったきっかけは何でしたか?
タズ・テイラー 僕は仕事をしたこともないし、学校も7年生(日本では中学1年生)でドロップアウトしてるから、「人生でこれをやるべきだ」っていうのがないんだよ。最初に稼いだお金は音楽だったし、そこからすべてが始まってるんだ。子供が生まれたし、ママが癌にかかってしまったから、すべてをちゃんと仕切ってまとめなきゃいけなかったんだよ。音楽は常に僕とともにあったから、自然と音楽を仕事にするようになったんだ。

FLJ 最初のステップは何でしたか?
タズ・テイラー 最初はFL Studio(音楽制作ソフト)をいじることからだったね。どうやってビートを作るのか覚えたよ。周りからはひどいビートだって言われたけど、とにかく作り続けたね。そしたら良いビートが生まれたんだ。

FLJ そこからどのようにビートを売ってメイクマネーしましたか? タイプビートですか?
タズ・テイラー そうなんだ。YouTubeでタイプビートを売り始めたんだ。そもそもYouTubeでタイプビートを販売し始めた走りの一人が僕なんだ。それで人気が出て、タイプビートのネット上の販売だけで年間50万ドル(約5200万円)稼げるようになって。いろいろオファーも来るようになった。それが僕が音楽業界に入るきっかけとなったんだ。

FLJ タイプビート販売のプロだったんですね。
タズ・テイラー そうなんだ。僕はビートメイカーでいるよりもビジネスマンでいる方が得意なんだ(笑)。

FLJ そこを上手くできたコツはあったんですか?
タズ・テイラー 自分がスゴくストリート・スマートだってことを理解してたからね。家を売る時だって、白いペンキをきれいに塗れば高く売れるだろ(笑)。

FLJ 相棒のニック・ミラとの出会いと、そこからのインターネット・マネー結成のいきさつは?
タズ・テイラー ニック・ミラと出会ったのは15歳の時で、「コール オブ デューティ」とかいろいろゲームを一緒にプレイしてたんだよ。同じ頃にDTにも出会って。彼らはジュース・ワールドを発掘して育てて、ヒットを飛ばすようになるんだけど、僕たちが会った時はキッズだったんだ。ビデオゲームをプレイして、音楽の話をするのが好きなだけで。僕はすでにネット上では有名なプロデューサーだったんだけど、他の人がそんなことは眼中にない中、彼らは僕の存在を知ってて、そこから始まったって感じさ。

FLJ インターネット・マネーという名前の由来は? 今の話を聞いたら、完璧なネーミングだと思いましたが。
タズ・テイラー ありがとう。デンゼルっていう友達がいるんだけど、僕たちの友達みんなにいろいろ名前をつけるようなヤツなんだ。アート・マネーとかモー・マネーとかいう風にね。それで、僕はネットでお金を稼いでたから、インターネット・マネーって名前がつけられたんだ。それをある日ツイートしたら、いきなり他のネット・プロデューサーたちがこの名前を使い始めたんだよ。「何言ってるんだ。これは僕の名前だよ。この名前の権利も買うから」と思って。それでインターネット・マネーと名乗るようになったんだ。

FLJ インターネット・マネーの作った曲にはどれも「Internet Money Bitch」って入っているから、それでインターネット・マネーの名前も広まりましたよね。
タズ・テイラー 今言ったみたいに「Internet Money Bitch」って、僕らの曲でも言ってほしいな。スゲエFireだよ!(笑)

FLJ インターネット・マネーを立ち上げた時に、良い音楽を作るだけでなく、ビジネルモデルも作りましたよね。どういうアイデアがベースにあったんですか?
タズ・テイラー 音楽業界ではほとんどの人が公平なビジネスをしてないってことに気づいてね。信頼もおけないし、知り合う必要もないような人たちとたくさん仕事をするよりも、仲間を一つにまとめて、そこで一緒に協力し合いながら仕事をしたいと思ったんだ。僕一人が業界相手にいろんな問題を片づけながら仕事をするよりも、ファミリー的な環境でみんなで仕事を一緒にやりたかったんだ。

FLJ 音楽プロデューサーのお金の稼ぎ方というのは、すでに昔からパターンがあったわけですが、タズは新しいパターンを見つけたわけですね。
タズ・テイラー そうなんだ。当時すでにネット上で僕たちはゲームのトップにいたからね。ずっとそこでトップにいると飽きてしまうんだよ。例えて言うなら、攻略し終わったビデオゲームを再びやる意味はないよね。だから、ネットを牛耳ったように、音楽業界を牛耳ろうと思ったんだ。

FLJ 最初にレーベル契約したのはAlamo Recordsですか?
タズ・テイラー そうだね。2018年にAlamo Recordsと契約したんだけど、良いパートナーシップにはならなくてね。2019年に10K Projectsとパートナーになれたから、本当に良かったと思うよ。

FLJ Alamoはインターネット・マネーがTiny Meat Gangと契約してほしかったらしいですね。
タズ・テイラー ははは。Alamoは僕に契約してほしかったみたいだ(笑)。誰々と契約してくれって言われた時点で、僕的にはなしだったね。それで自分たち自身でやろうってなったんだ。

FLJ ジュース・ワールドの話も少し出ましたが、楽曲のプロデュースだけではなく、ジュース・ワールドも含めて、新人アーティストを発掘して、育てて、売り出すということもやっていますよね。
タズ・テイラー ジュース・ワールドは最初DTが面倒を見てて、二人で一緒に曲を作り始めたんだ。当時まだ僕はネットで曲を売ってたから、新人アーティストと契約しようなんて思ってもなかったね。二人ともまだキッズだったから、音楽作りが楽しくて、そこから良い曲が生まれただけなんだよ。僕は何度かジュース・ワールドをレーベルに紹介して、「このキッズと契約した方がいい」って薦めてたのを覚えてるよ。その後ジュース・ワールドがビッグ・アーティストになったのはみなさんご存知の通りさ。

FLJ 新人アーティストを見る時、どこを見ますか?
タズ・テイラー 大切なのは音楽であって、ルックスとか、フォロワー数とか、どこ出身とか、そういうことじゃないんだ。無名であっても、何のコネクションがなくても、ルックスがあか抜けてなくても、良い音楽をやってたらそこを見るね。トレヴァー・ダニエルの「Falling」は大ヒットになったけど、良い音楽だからヒットすると思ったし、実際にヒットしたよ。つまりそういうことなんだ。音楽が重要なんだよ。もしアーティストがもっと伸びると思えたら、僕たちは育てたいと思うよ。

FLJ まずは音楽ありきなんですね。
タズ・テイラー 音楽ありきさ。イメージなんていくらでも後でいじれるんだ。どんなブランディングだって可能なんだけど、音楽だけはごまかせない。持って生まれた才能のあるアーティストとだけ僕たちは仕事をしたい。

FLJ インターネット・マネーが手がけた初期の楽曲の裏話も聞きたいのですが。
タズ・テイラー トレヴァー・ダニエルの「Falling」の裏話を話そう。トレヴァー・ダニエルを僕たちのスタジオに連れていってね。当時ポスト・マローンのプロデューサーだったチャーリー・ハンサムを入れて制作を始めて、うちのプロデューサーのキムもいたからドラムのビートも入れたんだ。発表してから1年から1年半かかったんだけど、曲は大ヒットしたよ。XXXTentacionの「Fuck Love feat. Trippie Redd」は、ループを使ってデックス・ダンカンと制作したんだけど、WavSupplyっていうウェブがあってね。そこでは僕たちのループとサンプルのキットをいろいろ売ってるんだ。いろんなプロデューサーが使ってるよ。

インターネット・マネーの中心メンバーである、タズ・テイラー(左)とニック・ミラ

FLJ 音楽スタイルとしては、ヤバいビートに美しいメロディの組み合わせが、インターネット・マネーらしさと思います。このスタイルはどのように確立しましたか?
タズ・テイラー メロディは間違いなく重要だね。インターネット・マネーのメンバーはありとあらゆる音楽ジャンルにインスピレーションをもらってるんだ。2000年代のポップ・パンクからの影響は、ジュース・ワールドの曲を聴いてもらえればわかると思う。僕たちは一つのところにとどまりたくないし、限界を超えるような新しいことをやっていきたいんだ。

FLJ いろんな音楽を好きというのが、作る楽曲にも現れているということですね。
タズ・テイラー その通り。好きな音楽は’60年代まで遡るし、テンプテーションズも大好きだ。ビーチ・ボーイズも大好きで、ブライアン・ウィルソンは大好きなプロデューサーだね。いろんな音楽が好きで、あちこちからインスピレーションを受けてるから、メルティング・ポット状態なんだ。

FLJ FLJで2年前にジュース・ワールドに取材した時にも、彼がブラック・サバスからエモまでいろいろな音楽に影響を受けたことを話していました。いろいろなインスピレーションの中から新しい音楽が生まれたという印象を受けましたね。
タズ・テイラー 僕たちは同じ時代に育ったわけだし、音楽にとっては良い時代だったんだ。ヒップホップの黄金時代だったし、ポップ・パンクも生まれた。ワープド・ツアーのシーンもあったから、エモも盛り上がった。それがトラップの時代になって、そういった音楽の要素がブレンドされるようになった。そういう音楽のブレンドは僕たちが始めたことなんだ。音楽というものは歴史なわけだから、何度も何度も繰り返されるものだ。それに音楽には尽きることがない。たとえ同じテーマであっても、人によって音楽は違うものが生まれる。音楽にはルールブックなんてないんだ。だからルールと思えたものも簡単に破れてしまう。限界がないんだよ。

FLJ ポップ・パンクとワープド・ツアーも好きだったんですね。
タズ・テイラー 親父がバンドをやってたから、ロックは何でも入ってきたよ。出身もフロリダのジャクソンヴィルだから、レイナード・スキナードもリンプ・ビズキットも同じ地元だし、サザン・ロックからニュー・メタルまでいろいろ聴いてたんだ。

FLJ LAにある自宅兼レコーディング・スタジオはどういう環境ですか?
タズ・テイラー LAの自宅にスタジオがあって、そこでみんなで一緒に住んでるんだけど、誰の制作をしてるのか、何人いるのか、どれだけ状況がクレイジーなのかによって、日々変わってくるね。毎日いろんなアーティストと一緒に制作をやってるよ。同時に4つぐらいのセッションをやってることだってある。とにかくクリエイティヴを大切にして毎日やってる感じさ。最近ここに移ってきたばかりで、スタジオも2つあるし、ライヴができる部屋も一つある。デカい家だし、工場みたいなんだ。ちょうど今はインターネット・マネーの2ndアルバムに取りかかってるところだよ。

FLJ インターネット・マネーのメンバーはどのようにして集めたんですか?
タズ・テイラー 人それぞれパーソナリティが違うわけで、いろんなパーソナリティが混ざることによって新しいもがを生み出されるわけだから、メンバーはスペシャルな人間でなきゃいけない。ほとんどのメンバーはスカウトして集めたんだ。知り合ってすぐにスカウトしたメンバーだっているよ。

FLJ もしインターネット・マネーに入りたい場合、どうしたらメンバーになれますか?
タズ・テイラー まずは僕の関心を引かなきゃダメだね。僕は集中力がないから、スゴい難しいことだと思うよ。もし僕の聴いたことのないような音を持ってきたら、即決だ。

FLJ アルバム『B4 The Storm』ですが、どういうものを作ろうと思いましたか?
タズ・テイラー 特にコンセプトとかはなくてね。元々はフェスみたいなものをやりたかったんだけど、コロナウィルスのせいでできなくなってしまって。それで、クレイジーなものを作ってるんだっていうのをみんなに伝えたかったんだ。あと、去年の10月に「Somebody ft. Lil Tecca & A Boogie Wit Da Hoodie」を出した時に、多くの人から「アルバムはないの?」って言われてね。それでアルバムを作ろうと思ったんだけど、特に誰にも何も言わず、1ヶ月でアルバムを作って世に出すことにしてみたんだ。

FLJ アルバムのジャケットも、遊園地でローラーコースターを楽しんでいる絵ですから、その雰囲気もありますね。
タズ・テイラー つまりそういうことなんだよ。僕ら的にベストだと思える音楽のショーケースを見せたかったんだ。その中で、曲によって全く違う乗り方、違う経験ができるんだ。曲同士のつながりがないなんて言う人もいるんだけど、そういう狙いじゃないからね。Gunnaの曲とKevin Gatesの曲が違うなんて言ってもしょうがないじゃん。だから、『B4 The Storm』は曲同士がつながって構成される「アルバム」ではなくて、「プレイリスト」って言った方が近いね。いろんな曲を聴いて楽しむ感じさ。曲ごとにヴァイブスが違うから、ずっと永遠に聴いていられるんだよ。そういうつもりで作ったからね。17曲、違うタイプのヒット曲を入れたかったんだ。

FLJ 客演のラッパーはどのようにして選びましたか?
タズ・テイラー 人生のどこかのポイントで出会ったラッパーを選んでるね。それぞれの曲でハマると思った人選をしてるよ。何か基準があるというよりも、僕の目で見てピンと来た人に、ピンと来た曲で参加してもらってる感じさ。

FLJ 客演の組み合わせも面白いですね。例えば、Swae LeeとFutureのような組み合わせは、プロデューサーしかできないことですが、アーティスト側にもエゴがあるし、レーベルの言い分だってありますよね。どのようにして形にするんですか?
タズ・テイラー エゴに関しては今でも苦労してるよ(笑)。「このアーティストとの共演はNG」なんてことはたくさんある。だけどね、結局は僕たちの曲なんだ。僕たちがやりたいようにやるしかないだろ? もし気に入らないのだったら、やらなくていいんだ。誰が僕たちのアルバムに参加したくないのか。そんなの気にする必要のないことだからね。

FLJ 亡くなったジュース・ワールドが参加している「Blastoff ft. Juice WRLD & Trippie Redd」では、ジュース・ワールドと親しかったトリッピー・レッドも参加していて、スゴく意味のある楽曲になったと思います。
タズ・テイラー 実際この曲は、去年の11月ぐらいかな、ジュース・ワールドとトリッピー・レッドで作ってた曲なんだ。この曲はジュース・ワールドが亡くなる前日に制作に取りかかってたんだけど、ジュースが亡くなってしまってね。今回、この曲に関わる人たちによって自然と形になったから良かったと思う。誰か関係のない人が入ってきて、その人がやりたいように作ったものじゃないから。この曲はトリッピー・レッドとバハマに行って完成させたんだけど、バハマはジュース・ワールドとトリッピー・レッドがレコーディングしてた場所なんだ。余計な人は連れていかなかったよ。特別なレコードを作りたかったし、僕たちにとってこの曲はジュースに向けたお別れになるんだ。

FLJ タズにとって音楽とは?
タズ・テイラー 音楽はすべてだよ。ママの面倒を見るために必要なもの、息子を育てるために必要なものでもある。音楽がなければ僕は死んでしまうと思うね。僕には何の資格もないし、学歴もない。他に何もできないんだ。音楽がなかったらマクドナルドで働くしかないだろうね。だから音楽は超能力みたいな感じさ。僕は音楽に救われたんだよ。




『B4 The Storm』
(Internet Money/10K Projects/Caroline International)
8月28日リリースの1stアルバム

1. Message ft. TyFontaine
2. Really Redd ft. Trippie Redd, Lil Keed, & Young Nudy
3. Lost Me ft. Iann Dior, Lil Mosey & Lil Skies
4. Right Now ft. Cochise & TyFontaine
5. Familiar ft. TheHxliday
6. J-Lo ft. Lil Tecca
7. Thrusting ft. Swae Lee & Future
8. Speak ft. The Kid Laroi
9. Blastoff ft. Juice WRLD & Trippie Redd
10. Take It Slow ft. 24kGoldn & TyFontaine
11. Somebody ft. Lil Tecca & A Boogie Wit Da Hoodie
12. Giddy Up ft. Wiz Khalifa & 24KGoldn
13. Block ft. Trippie Redd & StaySolidRocky
14. Devastated ft. Lil Spirit
15. Let You Down ft. TyFontaine & TheHxliday
16. No Option ft. Kevin Gates
17. Lemonade ft. Don Toliver, Gunna & NAV


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