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ゆるふわギャング

May 31,2017

ポップ&コミカルからエモーショナルなメッセージまでラップする、Ryugo IshidaとSophieeによるユニット

PHOTO: Jesse Kojima

From ISSUE 54 (05.31.2017)

’93年生まれのRyugo Ishidaと’94年生まれのSophieeの二人のラッパーが、プロデューサーのAutomaticとともにゆるふわギャングを結成したのがまだ去年の2016年。最初にできた曲「Fuckin’ Car」をMVで発表した後、「Dippin’ Shake」のMV発表、EPの公開とともにクラウドファンディングで制作費を募り、ファースト・アルバムを完成させ、4月5日にリリース。4月28日には渋谷WWWでワンマンライヴも行い、大成功。ここまでの勢いは当然、二人の作る世界観のオリジナルさと楽曲の素晴らしさがあるからこそ。身の周りの日常から言葉をピックして二人で何ともポップでカラフルに広げていくラップは、Automaticの作るエッジーながらも気持ち良い音と融合して最高の化学反応を起こしている。アルバム後半になると自分たちのエモーションをポジティヴなメッセージに変えていくのもイイ。スゴく新しいんだけど、ピックされた言葉、韻、フロウの面白さもあるし、大好きな映画や音楽の引用もあるし、映像が浮かんでくるような世界観もあって、スゴく楽しくてカッコいいヒップホップなのだ。Ryugo IshidaとSophieeに話を聞いた。

FLJ 地元は?
Ryugo Ishida 茨城の土浦です。
Sophiee 東京の品川です。

FLJ 最初に音楽にハマったのは?
Ryugo Ishida 3つ上のいとこの影響で、Zeebraの「Street Dreams」のビデオを観たのがきっかけです。小学校6年生の時、自分で初めて聴いたのがエミネム。そこから入った感じですね。
Sophiee Sophieeも最初のヒップホップはエミネムを聴いて、その時に衝撃がスゴくて、カッコいいと思いました。

FLJ 自分でもラップをやろうと思ったのは?
Ryugo Ishida ヒップホップがスゴい好きな人が1コ上の先輩にいて、その人の家に遊びに行ったりしながら、ラップをやりたいっていう風になっていって。中学2~3年の時に、初めて行ったクラブで土浦のラッパーの人がいて、CDをくれて。俺もこれやりたいです、みたいな感じで始まったのがきっかけですね。
Sophiee 自分で始めたのは、当時の友達にラッパーが多くて。よく遊んでて。その場のノリでやったのが始まりなんですけど。最初は、暇だから遊んでやってる感じでした。

FLJ そこから火がついたのは? 最初に曲をレコーディングした時とか火がついたりはした?
Ryugo Ishida 自分が最初にレコーディングしたのは、孤児院に入ってる友達がいて、そいつが親のところに帰れるっていうので、そいつのために曲を書いたんです。それで初めてレコーディングした時に、MTRを知って。MTRをゲットして、家で録ってました。ただ自分はラップを始めた時から「これしかない」と思ってたので。
Sophiee 最初にレコーディングした曲は、今聴けたもんじゃないです(笑)。EPを出した時は、けっこう自分が苦しんだ時期だったから、ゆるふわの曲とは全然逆で、暗さしか出てない。レコーディングをして火がついたのは、ゆるふわをやり始めてからですね。その前は音楽で食べてこうって、そこまで思ってなかったから。りゅーくん(Ryugo Ishida)と出会ってから、自分が本当に音楽をやりたいんだって気づいたんです。

FLJ 二人の出会いは?
Ryugo Ishida 自分がちょうど1年くらい前に、『Everyday Is Flyday』っていうアルバムを出して。それで東京にライヴに呼ばれることになって。ライヴしに行ってる時に、Social Club Tokyoで出会ったんです。
Sophiee 友達の友達だったから紹介してもらって。その時はRyugo Ishidaを知らなかったので、一旦帰って、自分で調べて。そしたら「YRB」のPVが出てきて。その時自分がやりたかったことを先にやってるなあと思って。「うわあ、ヤラレたあ」と思って。これは一緒にやらなきゃいけないなと思って。それで、自分から「曲をやりたいんだけど」みたいなお願いをDMで送って。そこから遊ぶようになって。Ryuくんの友達のLUNV LOYALっていう秋田のラッパーもいるんですけど、3人で最初にチャンス・ザ・ラッパーの「No Problem」のビート・ジャックをしたのが最初だよね?

FLJ そこでビート・ジャックをして言葉を乗せていったら相性が良かったのかな?
Ryugo Ishida そうですね。それで夏遊んで、車で帰ってる時に、車の中で「これ作っちゃおうぜ」って。
Sophiee 最初に「Fuckin’ Car」っていう曲を作ったんです。

FLJ 「Fuckin’ Car」が最初の曲なんだ?
Sophiee それが二人でやった一番最初の曲で。そのPVを出したら、りゅーくんの地元の先輩でビートを作ってくれてるAutomaticさんが面白がってくれて。「せっかくだからEP出しちゃおうよ」ってなって。Automaticさんの言葉をきっかけに、どんどん曲を作っていって。1ヶ月くらいで5曲できたんだよね。それを最初にボンとEPで出して。そこからアルバムも作っちゃおうかってなって。
Ryugo Ishida クラウドファンディングでお金を集めて、アルバムを作り始めたんです。

FLJ 最初の「Fuckin’ Car」からいっちゃってるよね。
Sophiee (笑)ほぼほぼ記憶ないから、いっちゃってたんですよね。


Ryugo Ishida

FLJ でも曲を聴いてると、一つのワードがあったとして、そこから二人でバーッとラップで広がっていく感じがスゴいあって、そこが聴いててカッコ良かったな。
Ryugo Ishida 本当にそんな感じで。「今の言葉面白くない?」って言って。面白い言葉を見つけたら、そこから広げて曲にしていくっていうのはありますね。
Sophiee ゆるふわギャングもそうで。「“ゆるふわギャング” って面白くない?」って言って。

FLJ ゆるふわギャングっていうネーミング、天才的だと思ったけど、そんな感じで出てきたんだ?(笑)
Sophiee そうなんですよ。それもいきなり出て。「Fuckin’ Car」のPVを作ってる途中で、何か文字を入れたくなって。何か言葉ないかな?ってなって。
Ryugo Ishida 男と女だし、何か面白い名前で何かないかな?と思って。Sophieeがこれいいんじゃない?って言うから、じゃあそれでいっちゃう?ってなって。そしたらそのまま名前になっちゃって(笑)。
Sophiee 自分がりゅーくんの『Everyday Is Flyday』っていうソロ・アルバムを聴いた時に、自分の勝手な個人の感想なんですけど、リリックがゆるふわだなと思って。その時から「彼はゆるふわだ」っていうのが頭にあって。でも生い立ちとかもスゴいし、刺青もガンガン入ってるし、ギャングっぽいし。勝手に自分の中で「ゆるふわギャングだ」ってなってた(笑)。

FLJ 二人での曲作りはふだんどういう風にやってるの?
Ryugo Ishida アルバムに関して言うと、前半はノリっていう感じだったんですけど、後半からはやっぱり自分たちなりのメッセージを込めてちゃんと作っていったんです。だから今はもうそれに変わったよね。
Sophiee あのアルバムはほとんど車の中でリリック書いて。レコーディングも家でやったり。今はちゃんとしたスタジオに入れるようになったんで、ガッツリ、スイッチ入れて作ってますね。
Ryugo Ishida ちゃんとスタジオに入るようになったのは最近で。だからまたちょっとずつラップも変わってきてるのかな。また新しい感じになってるというか。新たな発見がありますね。

FLJ 話は戻るんだけど、アルバムの制作費をクラウドファンディングで集めた理由は?
Ryugo Ishida インディペンデントで俺たちはどうやって食っていくのかっていうのを考えてて。その時は自分のアルバムもそんなに売れてもなかったし。そしたら、Automaticさんがそういうのがあるよって言ってきて。最初は、自分たちで映画を作りたいっていうのがあったんです。でも、それよりもまずアルバムから作ってみようって話になって。そこからクラウドファンディングを始めたら、スゴくたくさん集まって。目標額以上でしたね。思ってた額の5倍集まって。

FLJ 制作費も集まったところで、どういうアルバムにしようと思ったの?
Ryugo Ishida お金が集まった時点で、批判があったんですよ。そういうやり方が気に入らなかったんでしょうね。俺たちは自分たちの世界に行こうと思って、アルバム後半はメッセージを込めるようにしたんですよ。アルバム自体の方向性としては、そこですかね。とりあえず自分たちの身に起こってることをリアルに伝えようと思って。とてつもない怒りもあったし。それをポジティヴに変えようと思った。俺たちはもう次元が違うから。
Sophiee 変な人が多くて。
Ryugo Ishida 大人たちも変なのがスゴく近寄ってきたのもあったし。
Sophiee 何か悲しくなっちゃって。
Ryugo Ishida 悲しくなった分、スゴいポジティヴな曲を書いたんです。でもそのままで行きなよって言ってくれた人もいて。それが今回のジャケットを描いてくれたKANEさんなんです。それで、こんないい大人の人たちがいるんだと思って、「大丈夫」っていう曲を書いたんです。あと、「Escape To The Paradise」は一番最後に作った曲なんですけど、あの曲には全部込めましたね。

FLJ 「「このまま」からする脱走」で始まってるもんね。自分を信じてやってることがある一方で、認められない苛立ちや悲しみがあるっていうのは、曲の中でも出してるよね。
Sophiee 好きなことをやってるだけなのに、何?みたいな。
Ryugo Ishida まあポジティヴに殺してるんですけど。ネガティヴな人がたくさんいたから、それすらもポジティヴに全員殺してる気持ちなんです。でも本当はスゴいあったかい気持ちなんですよ。やっぱ聴いてもらいたいのは子供たちだし。そういう風になってほしいっていうのが一番なんで。俺たちはみんなに対してピースでいたいなと思ってて。

FLJ アルバム通して等身大のリアルを歌ってはいるんだけど、どこかふわっと夢を見てるみたいな感覚で、映像が浮かんでくるような曲が多いなと思って。「パイレーツ」は船が出てくるし、「Hunny Hunt」とか夢見心地だし、「Bleach The World」にはラスベガス感もあるよね。
Ryugo Ishida それはありますね。映画もスゴく観るので。映画の主人公が置かれてる状況が自分たちに似てたりするのもあって、それを映画と重ね合わせたりしますね。

FLJ 「Sunset」の曲の中に僕も大好きな映画『トゥルー・ロマンス』が出てくるからうれしくなっちゃって。
Ryugo Ishida スゴい好きな映画ですね。「Fuckin’ Car」のPV作ってる時も、『トゥルー・ロマンス』を送って、入れてもらったりしたんです。
Sophiee あれはうちらの中でも一番好きな映画です。あんな感じでブンブンいきたいな、っていうのは最初にあったよね。

FLJ あと、ザ・ブルーハーツが何回か曲の中に出てくるよね。
Ryugo Ishida ザ・ブルーハーツは自分がずっと好きで。曲を聴くとスゴく元気をもらえる。だからそういうパワーを与えたいなと思って。それで自然と「あの時ああだったよな、頑張れ」って言いたくなるんです。

FLJ 「大丈夫」の中で「助手席に座る彼女を見てたい それだけで景色は2倍」っていうのがスゴく良いリリックだなと思って。
Ryugo Ishida ありがとうございます。もうそういう感じだったんですよね。車をパーキングに停めて書いてたんですけど。
Sophiee 「大丈夫」は一番エモーショナルな曲ですね。


Sophiee

FLJ あと、「Dippin’ Shake」のバニラシェイクとポテトフライがdirty sexみたいだっていうのもスゴイなと思って(笑)。
Sophiee あれもけっこうパッて浮かんだんだよね。その時は二人でドライブがてらお台場に遊びに行ったんです。ポケモンGOが流行ってる時で。海に遊びに行ったのに、そこにいる人みんなは海を気にせず、携帯を見てポケモンGOで走り回ってる。「何かヤバくない?!」って。スゴく気持ち悪くなっちゃって。一回何か食べようってなって、それでマックに行って。
Ryugo Ishida 「これが一番落ち着くね」って言って帰ったんです(笑)。
Sophiee 車の中で食べてて。Automaticさんのビートを聴いて。その時にできた曲なんです。

FLJ ビートメイカーのAutomaticはどういう人?
Ryugo Ishida 仙人みたいな人。
Sophiee 今もここら辺にいますね(笑)。
Ryugo Ishida スゴく陽気な人で、一番ポジティヴなのかもしれない。いつも元気をもらってますね。

FLJ アルバム・ジャケットは、さっき話に出たグラフィティ・アーティストのKANEが描いてるんだけど、何か「気」みたいなのが出ててスゴい絵だよね。
Sophiee わかりますか? うちらもKANEさん、Estraさんがいるスタジオに行った時、KANEさんのグラフィティが部屋にたくさん飾ってあって。それを見たら、何か出てたんだよね。「出てたよね?」「もし描いてもらえたらいいよね」って話になって。それで描いてもらえることになって。やっぱ出てますよね(笑)。
Ryugo Ishida 俺たちの宇宙をイメージしてくれたんですよ。ゆるふわギャラクシーっていう絵なんですけど。最初はフォトブックにしようっていう話もあったんですけど、あの絵がとんでたから、それをジャケットにしようってことになったんです。

FLJ アルバムが実際に出てから、反響や変化は?
Ryugo Ishida 褒めてくれる人が多くて。地元に帰った時も「何が起こったの?」っていう感じでしたね。よほど俺たちがこうなるのが信じられないみたいで、スゴいビックリしてましたね。スゴい良かったと言ってくれる人もいれば、離れていった人もいます。まあそんなもんかな。とりあえず聴いたらわかるじゃんと思って。でもみんな喜んでくれましたね。

FLJ 次にやりたいことは見えてる?
Ryugo Ishida そうですね。やりたいことはたくさんあるので、一個ずつ形にしていきたいなと思ってます。次はSophieeのソロを作って、ゆるふわの2ndも作ろうと思ってるし、自分のソロも作ろうと思ってます。どれから手をつけようかなって感じです。

FLJ 4月22日に土浦GOLDでリリース・パーティ、4月28日に渋谷WWWでワンマン・ライヴをやったんだけど、どうだった?
Ryugo Ishida 土浦は若い子がスゴく多かったし、いろんな人が観に来てくれて。東京から来た人もいたし。スゴい楽しかったよね。ワンマンも最高だったね。楽しさも最高に放出した感じだったし。
Sophiee 一番上手くいったライヴですね。すべて出し切ったって感じかな。

FLJ ゆくゆくはどういうアーティストになっていきたい?
Ryugo Ishida 世界で戦いたい。スーパースターになりたいなと思って。それだけですね。




Mars Ice House』
(Mary Joy Recordings)
4月5日リリース

www.maryjoy.net/artists/yurufuwagang

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