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安斉かれん

March 31,2023

自身初となるアルバム『ANTI HEROINE』、『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』の2枚を同時にドロップ

From FLJ ISSUE 88(03.30.2022)

安斉かれんが、自身初となるアルバムを3月29日にリリースした。『ANTI HEROINE』と『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』の2枚同時リリースで、それぞれのアルバムにはスタイルがある。『ANTI HEROINE』では、ヒロインをテーマに、ジャンルレスの最先端のポップ・ミュージックを思い切り表現。一方、『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる』では、デビュー時のサイバーパンク、’90s&Y2K感という、今となっては時代を先取っていた世界観を継承している。FLJでは2020年9月にリリースしたシングル「GAL-TRAP」の時に安斉かれんを取材しているのだが、今振り返ると、その時に話していたことが見事に1stアルバムとして形になったように思う。そして何よりも、ポップ・ミュージックとしての自由度、音楽のクオリティの高さが、日本発の世界レベルとなっているのがヤバいのだ。


 
 2020年にFLJで取材した時に盛り上がったのは、安斉かれんの聴いていた音楽のプレイリストだった。マシン・ガン・ケリー、ドージャ・キャット、トラヴィス・スコット、Slowthai、舐達麻……。ヒップホップが多かったけど、オールジャンルで音楽が大好きで聴いていたのだ。ジャンルに関係なく良い音楽をやりたい。「GAL-TRAP」はそういう思いで初めて作曲・プロデュースに参加した曲だった。
「趣味はそのまま全然変わってないと思います。今もヒップホップは好きですけど、昔よりもっといろんなジャンルを聴くようになって。J-POPも聴くようになりました。最近はロックがめっちゃ好きです。なので、ギターを始めました。形から入っていこうと思って(笑)。ロックはマシン・ガン・ケリー、ヤングブラッドも好きですけど、一番好きなのはベタにオアシスとか、’80年代、’90年代の昔のロックなんですよ」。
 気になるのは、今回出す1stアルバムのプロモーションにこんな言葉が並んでいることだ。
 “安斉かれんって知ってる? じゃあ、かれんの音楽、知ってる? アタシ『に』歌なんて、必要ないのかな? アタシ『の』歌なんて、必要ないのかな? どうせ 、 アタシなんて…… アタシの本性=音楽を知ってよ。”
「一番最初は、まだ何が正解なのかもわかってなかったんです。探り探りでずっと来て、でもその中でも、もっとああしたいな、こうしたいなっていうのがどんどん出てきて。それで今っていう感じなんですね」。「「GAL-TRAP」あたりからやりたい好きな音楽も徐々に定まってきて。次にこういう曲作りを作りたいって思って、作曲に携わったのが、「不眠症☆廃天国」と「YOLOOP」なんです」。
 「不眠症☆廃天国」のMVを観ると、安斉かれんが表現しているのは単なる音楽だけじゃないというのがわかる。音楽、リリック、映像、衣装、ヘアメイク、世界観と、全体のクリエイティヴをやっているのだ。
「元々ギターの曲を作りたくて。ギターでこういうコードで作りたいっていうのを伝えて。その場で弾いてもらったギターに合わせてメロディを作って、この曲が出来たんです。それでその日のうちに「YOLOOP」も作りました」。「「不眠症☆廃天国」のMVでは、不眠症なのでベッドを入れて、夢の続きがループしていく、みたいな風にしたくて。だから森の中とか、あり得ないところにベッドが置いてあるんです。衣装も緑の中で映えるオレンジにしたり、各シーンでこだわりましたね」。
 この曲はリリックの方でも、「I’m Super Super ミルフィーユ」という表現があったり、「駄菓子歌詞、甘いコトはキライ!!」、「馬・鹿・蝶・嘘」のような言葉遊びがあったりして、ラップのような面白さが入っているのにも注目だ。
「言葉遊びとかをやってもいいんだっていうのを最近知って。型にハマらなくていいんだなっていうので考えました。わけがわからないようでいて、自分の中ではわかってる、完結してる表現を使ってますね。そこはだいぶくだけてきたんだと思います」。
 今回の1stアルバムは出し方も面白くて、『ANTI HEROINE』と『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』の2枚同時リリースとなっている。『ANTI HEROINE』の方は、ヒップホップ、ロック、エレクトロニック、さらに言えばポストパンクもベースミュージックもダークウェイブもすべて飲み込んだ、ジャンルレスの究極のポップ・ミュージックとなっていて、今のハイパーポップにもシンクロする文脈が感じられる。その上で、音楽性、楽曲、サウンドのクオリティ、そのどれもが世界レベルの出来となっているのだ。一方、『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』の方は、デビュー時に表現していたサイバーパンク感、’90年代J-POPやY2Kリバイバルのサウンドと世界観をまとめて継承したものになっている。
「『ANTI HEROINE』の方は、いろんなことに挑戦していきたいっていうアルバムですね。5月でデビュー5年目になるんですけど、デビュー曲を今聴くと、自分の中でスゴくエモく感じて。そういうのも経て、新しい自分もいる。自分の中で良い意味で成長したものを出せたと思うんです」。
 『ANTI HEROINE』には様々に異なる曲のスタイルがある分、リリックでも様々なヒロインが描かれている。
「ヒロインってみんなの期待の中で生きてるじゃないですか。だからちょっとでも余計なことを言ったら叩かれちゃうし、アンチされちゃう。私はアニメで言えば、「ドラえもん」に出てくるしずかちゃんというよりは、ドキンちゃん(『それいけ!アンパンマン』)になりたいタイプなんですよ(笑)。バイ菌って言われるけど、スゴい一途に食パンマンのことを思ってる感じとか、自分のことを菌だってわかってる感じとか、かわいいところがあるんです。安斉かれんにしても、「安斉かれんってこうだよね?」とか、「安斉かれんってこうあるべき」っていうのが、ありがちだと思うんです。でも、音楽でやりたいことをやってる安斉かれんも、それも全部含めて安斉かれんだから、『ANTI HEROINE』というタイトルにしてるんです」。
 いろいろあるヒロイン像の中で、一番お気に入りは「おーる、べじ♪」で、たまに出てくるヤバいヒロイン像は「ら・ら・らud・ラヴ」だという。
「今日はあまり元気が出ないなって時、ちょっとずつ自分をつくろったりするじゃないですか。ちょっと自分のテンションを上げていこうみたいな。とりあえずハッピーっていうオーラを出しておくんです。でもそれで本当にハッピーになっていくことがあるんです。この曲の曲調もスゴく明るいんですけど、明るすぎなくて。良い意味で自分に嘘をつくヒロインなんです」。
 ハイパーポップ的なジャンルレスで言えば、一番究極にはっちゃけている曲は、この「おーる、べじ♪」だろう。この曲ではPaleduskのDAIDAIことDaisukeが作曲で参加している。
「「おーる、べじ♪」はメロディがスゴくはっちゃけてたので、いろんなワードが出てきたんです。このメロディだったらこういう歌詞を乗せてもまとまるんじゃないかと思って。ちょっとぶっちゃけたような言葉とかもいっぱい乗せました。音楽的には良い意味でのごちゃごちゃですね(笑)」。
 リリックのヤバさは、「なんなら全員野菜だと思お🎶」って歌ってしまう発想にも現れている。
「相手が野菜だと思ったら何も別に響いてこないから(笑)。理不尽なことを言ってくる人をいい意味でシャットアウトして、野菜だと思えばいいなと思って」。 しかも、最後に「わんこがいるから まあ、いいかな~。」って、最高のオチで締めていたりする。
「わんちゃんは2匹飼ってます。わんちゃんがいるから、いろんなことがあっても結局は癒されますね。私の中のメンタルケアみたいな感じなんですよ」。
 今回、制作に参加したクリエイターを見ると、Charli XCX、CHVRCHES、Danny L Harleといった世界のトップ・アーティストが作曲を担当しているし、幅広いジャンルの様々なクリエイターたちが名を連ねている。
「誰とやりたいっていうよりかは、こういう音楽をやりたいっていうのを言ってて。「へゔん」とか「ギブミー♡すとっぷ」のようなアプローチは今までやったことがなくて、日本語にするとどうなんだろう?みたいな不安もあったんです。でもそれが日本語でちゃんとハマったのがスゴく新鮮で。うれしかったんです」。
 前に取材した時、リリックの方は、高校1年生の時に書き始めて、以来ずっと書き溜めていると話していた。今回はリリックのアプローチも変わったようだ。その中で気になるのは、昔のリリックの一人称にはよく「僕」が出てきてたのだが、新しい曲では「私」となっているところ。そこには目線の変化があるのかもしれない。
「今回アルバムを作るにあたって、いろんな曲をバーッて聴いて。その場で、「あ、これはこういう曲にしたいな」と脳みそがなって、そういうワードがいっぱい出てきましたね。今のテンションで新しい歌詞を書きました」。
 1stアルバムにして安斉かれんは本当にヤバい作品を作り上げたと思う。でもすでに2020年の取材時にこんな話をしているのだ。
「いろんなジャンルをやってみたいし、いろいろ音楽に挑戦したいですね。「安斉かれんと言ったら、こういう曲」っていうのがないようにしたい。とりあえずいろんな「安斉かれん」を見せていきたい」。
 ある意味、その時に話していたことを、ブレずにその後もどんどん追求していった結果が1stアルバムとして形になったのかもしれない。アルバム・リリース後の動きもスゴく楽しみだ。
「何か面白いことをしてると思ってもらえたらいいですね。ライブハウスにもマジで出たいです。食らわせたいですね。さらにやりたいことも増えてるので、地道に頑張っていきたいなと思います。まずはリアルなことをやりたいです」。


『ANTI HEROINE』
01. へゔん
02. ら・ら・らud・ラヴ
03. 夜は未完成
04. ちゃんと世界線
05. Secret Love
06. GAL-TRAP
07. おーる、べじ♪
08. 現実カメラ
09. 18の東京 feat. 初音ミク
10. ギブミー♡すとっぷ
11. 恋愛周辺(Demo)
12. 私はドキンちゃん – それいけ!アンパンマンの楽曲Cover –
13. 不眠症☆廃天国 – Hollywood Edits –
14. 未来の音
15. YOLOOP


『僕らはきっと偽りだらけの世界で強くなる。』
01. 世界中の全て敵に感じて孤独さえ愛してた (Prod. by KO3)
02. 未来の音 – Dance Remix –
03. come again feat. CAELAN  - m-flo の楽曲Cover
04. 僕らは強くなれる。- Album Ver. –
05. てくてくカレンダー
06. 不眠症☆廃天国 – Lofi Edits –
07. キミとボクの歌
08. 人生は戦場だ (Prod. by TAKU INOUE)
09. 一周目の冬
10. 現実カメラ feat. 初音ミク
11. 誰かの来世の夢でもいい (Prod. by Carpainter)

安斉かれん
http://kalenanzai.com
Instagram: @kalenanzai @k19990815
Twitter: @kalen_anzai
TikTok: @kalen_anzai
YouTube: youtube.com/@user-ie6zt1zn2o

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