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ゆるふわギャング

July 31,2018

LAで制作した2ndアルバム『Mars Ice House Ⅱ』で見せた大きな進化

From FLJ ISSUE 61(07.30.2018)

PHOTO: Nanako Fukui

Ryugo IshidaとNENE、プロデューサーのAutomaticからなるゆるふわギャングが、昨年4月の1stアルバム『Mars Ice House』から、12月のNENEのソロ・アルバムを経て、2ndアルバム『Mars Ice House Ⅱ』をリリースした。去年11月から2月の間にLAでレコーディングしたという楽曲の数々は、LAに行って開花した部分もあって、二人のラップがさらに自由だったり深いところに行ったりしているのがいい。サウンドの方も、カナダのライアン・ヘムズワースがトラックを提供し、これまでも一緒にやってきたAutomatic、estraによるサウンド作りも新たな次元に突入。彼らの音楽、世界観がよりオリジナルで、面白く深みのあるものになってきた。ここでは二人のインタビューとともに、LAでフィルムで撮影した写真をお届けする。

FLJ LAはいつ行ってたんですか?
NENE 今まで3回行って、2回はレコーディングです。最初は去年11月に2週間ぐらい行って。で、また2週間ぐらい行ってました。

FLJ 最初のLAはどうでした? すぐにここだ!と思いました?
NENE はい。ソッコーで。
Ryugo Ishida ここだと思った。
NENE あ、ここ家じゃん!みたいな(笑)。いるべき場所はここだと思って。
Ryugo Ishida ずっと夢見てたアメリカだったから。アメリカにいるぞっていう実感があった。
NENE 羽根が伸びちゃいましたね(笑)。スタジオに行った時も、「アメリカのスタジオにいる!」みたいな。最初は高ぶりすぎて曲とか書けなくて。

FLJ 興奮したんですね(笑)。
NENE 興奮しちゃって。それが最高なんですけど(笑)。ちょっと落ち着いてからは、パーッて一気に書けました。それで出来たのが「Coolermachine」という曲で、「飛ばされそうHollywood 」って歌ってて。そういうことなんですよ。まあ、リラックス、リラックスと思って(笑)。1曲が出来てからは一気にイメージがバーッと広がったって感じですね。

FLJ LAではどこを拠点にしていたんですか?
NENE スタジオがハリウッドだったから、ハリウッド中心でしたね。ヴェニス・ビーチにも行って。最高でしたね。そこでAutomaticがビートを作ったり。
Ryugo Ishida 海で作ったね(笑)。いろいろアメリカのリアルな部分も見ました。ダウンタウンのスキッド・ロウに行ったり。

FLJ LAに行く前に一番見たかったものは見れました?
NENE とりあえずスタジオに入りたくて。だからスタジオに入った時は興奮しちゃって(笑)。
Ryugo Ishida スタジオは音が違ってた。
NENE めっちゃきれいなスタジオってわけじゃなくて、広いけど家みたいな感じのスタジオだったから。スゴくリラックスしながら作れたし。スタジオを出たらすぐにヤシの木があるんです。ちょっと息抜きで外に出たら、そういう景色があるから、スゴく気持ち良くて。
Ryugo Ishida スケボーでスタジオに通って。
NENE スゴく開放感があって。それで制作に集中できましたね。

FLJ いろいろ行ったんですか?
NENE チキンワッフルが最高ですね(笑)。レコーディングで行ってた時はスタジオにしかいなかったから、スタジオの中で遊んでました。

FLJ 全曲LAで作ったんですか?
NENE ほぼ全曲です。
Ryugo Ishida 日本に帰って来てちょっと録ったのもあったんだけど。それ以外はほぼ全部LAですね。

FLJ 今回はどのように作っていったんですか?
NENE ビートを一から作って。
Ryugo Ishida まずライアン(・ヘムズワース)が、俺たちが初めて行った時にタイミング良くビートを作ってくれて。Automaticがビートを作ってる最中に俺たちはライアンの曲で作って。
NENE 2回目に行った時に、アメーバっていうスゴく大きいレコード屋があって。Automaticさんの提案で、ジャケ買いのみで一人1枚決めてCDを買って、それからサンプリングしてみようってなって。それが超面白くて。全然違うジャンルで、本当にジャケのみで探して。それで買った「Antwood」というアーティストのCDを聴いたらヤバくて。ロスのスタジオでエンジニアしてくれてた女の人が南アフリカ出身の人で、「Antwoodってどういう意味?」って聞いたら、南アフリカの言葉で「正解」っていう意味だって教えてくれて。その時にハッとして。みんなでこれで作ろうってなって。それが「Antwood」という曲になったんです。

FLJ ライアンはゆるふわギャング向けの曲を用意していたんですか?
NENE 何個かビートを送ってくれたよね。ライアンなりに考えて送ってくれたと思うんですけど。
Ryugo Ishida 「Speed」っていう曲は聴いた瞬間に「これいいじゃん」ってなりましたね。
NENE ソッコーできたよね。レコーディングもほぼ一発で終わったし。

FLJ 今回はけっこう感覚一発でいけた部分はありました?
NENE そうですね。もうみんなFireしてたから。ハァハァハァ……ウワーーーッ!!てなってた(笑)。もうスタジオの中で一人ずつ叫んでるような状況で。たぶん他の人が見てたらヤバかったと思うんですけど。そういう状況で作ったから、けっこうヴァイブスは伝わると思うんです。

FLJ LAって、昼と夜と朝の境界線がわからなくて、溶けてしまいそうな感覚ってないですか? このアルバムを聴いていると、その溶けてしまいそうな感覚になりますね。
NENE うれしい。溶けちゃいそうですよね。本当にもう溶けちゃいそうだったなあ。
Ryugo Ishida ずっと「はぁ……」みたいな感じだった。
NENE ずっとそんな感じでしたね。スタジオにいる時も。自分たちで作った曲を聴いても溶けちゃうみたいな。スゴく気持ち良くて。開放感、フリー、自由って感じで作れたから。

FLJ LAでけっこう開きました?
NENE かなり。
Ryugo Ishida ストレスとか考えることはなかったかもしれないですね。突き進むしかないって感じで。だからバーッと集中できたというか。

FLJ 1stアルバムを形にする時にはいろいろ葛藤もあったと思うんですけど、今回作っている時は、自分たちが信じてやっていることは間違ってないと確信しませんでしたか?
NENE 思いましたね。研ぎ澄まされました。自分に集中できたのが最高で。
Ryugo Ishida 作っている人みんなが真面目だったし。
NENE 自分がやってることに対して真面目。音楽に対してももちろんそうだし。
Ryugo Ishida これでいいんだと思えたのは、一番最初に行った時からあったかもしれないです。
NENE みんな自信満々でやってるし、迷いがないから。「これは俺がやりたいことだし、俺のアートだ」っていう感じでみんなやってる。そのスタンスは間違いないなと思って。そうやるべきだと思ったし。自分たちもそういう風にもっとなれたというか、最初からもあったんだけど、もっといけたんだなと思って。
Ryugo Ishida それが出たよね。

FLJ 二人はLA向きですね(笑)。
NENE 本当に(笑)。
Ryugo Ishida 住みたい(笑)。
NENE 同じ気持ちでやってる人がスゴく多くて。「これで食べてく」っていうのも強い。同じエネルギーを感じられたから。そのエネルギーが集まれば相乗効果じゃないけれど、上に上がるだけだし。自分たちはアメリカで勝負したいっていうのが最初からあったから。

FLJ ライアンのビートも相性が良いと思うし、引き出された部分もありました?
Ryugo Ishida 音、鳴りが違うだけでこうなに乗れちゃうんだ?って思いましたね。もっと前に行けるし、それをスゴく突き詰めていきました。このノリ、この鳴りでしょ、みたいなところで。
NENE 耳的にも、感情的にも、引き出せたというか。ビートにしても、最初の2秒ぐらいで乗れるか乗れないか大体わかるんですけど、ライアンのビートはそういうのが多かったから。最初から、「あ、いける」みたいなのが多くて、スゴくやりやすかった。

FLJ でもライアンに限らず、以前から一緒にやっているAutomatic、estraのビートも含めて、音が全体的にスゴく進化しましたよね。
Ryugo Ishida けっこう4人みんなでぶつけ合いながら、言い合いながら、自分たちのやりたいことをひたすら詰めていきましたね。
NENE みんなでぶつけて爆発して出来たのが多いかな。それぞれの感情を本当に大事にして作った曲ばかり。いつもそうだけど、特に今回はスゴく強くて。だから、音も、歌詞も、フロウも全部、全体的に感情が乗ってると思う。Automaticの音にも感情が乗ってるし、自分たちも乗ってるし、それが混ざって爆発した感じ。

FLJ 今回の曲は、スゴく自然にダイレクトに気持ちとか感覚を出しているなと思ったんですけど、リリックの書き方は変わりました? それとも気持ちの問題が大きい?
NENE 気持ちの問題もありますね。ほとんどバーッて書けてるから。
Ryugo Ishida 出てきたものをスゴく大事にしたかもしれない。なるべくその時のヴァイブスを重視していった。そのままバーッてマイクに向かったのもあったし。でも書かない時もあったよね。
NENE 書かない時もあった。

FLJ じゃあ降りてきた時に書いたんですね。
NENE ほぼ降りた時に全部書けてるから、間違いない(笑)。
FLJ リリックはほぼLAで書いたんですか?
NENE そうです。

FLJ 今回のリリックは、ダイレクトに出したものだけじゃなく、自分が覚醒した部分も出してますよね。自分のことがもっと見えたり、改めて違う視点で見たりとか。エイリアンになったり、もう一人の自分が出てくる夜があったり。いろんな風に見たり感じたりしたからなのかなと思って。
NENE それはスゴいあったかも。
Ryugo Ishida いろんな感情がありましたね。ネガティヴな自分とポジティヴな自分が出てきて。
NENE 行ったり来たりしましたね。
Ryugo Ishida ネガティヴなことを歌っちゃいけないとか思ったんだけど、それを歌に書けばポジティヴになるんじゃないかっていう。そういうのがあって、「Blue Cheese」という曲にはもう一人の自分がいるんです。自分を保てるために。
NENE 自分に勝つことですね。あと、今回のジャケットはサーモグラフィなんですけど、それは内面がスゴく熱いんだけどクールだから。ロスにいる時はそういう感じだったんですよ。スゴいムカムカすることもあったし、いろいろ考えることもあったけど、ロスにいるっていう環境の中でクールな自分がいて。上手く全部ぶつけられたと思います。
Ryugo Ishida これでいいんだと思えたんです。自分の目標だったアメリカにいて、これが本来の自分であるべきなんだって。それがけっこう大きいかな。
NENE 何も比べるものもないし。元々何かと比べたりもしないけど。自分でしかないから。だから常に自分を超えていく。そういう努力を作っている最中はみんなしてたと思うし。「Automaticさん、もっといける、もっといける」と思いながら一個ずつ作ってたし、自分たちもそういう気持ちだった。それでかなり超えられたんじゃないかな。

FLJ LAで知り合った人で印象深い人はいます?
NENE 「Speed」のジャケットのおじさん。眉間に「FUCK YOU」って書いてあるんですけど(笑)。1回目のLAで、たまたまコンビニに行ったらいて。「ヤバいから写真撮らせてくれ」って言って。写真撮って。「ありがとう」って言って、その日はお別れして。2回目にLAに行った時に、今度はハリウッドにいて。あっちから声をかけてきて。「また会ったね」って。こういう出会いがあるんだなと思って。あと、「Palm Tree」のMVに出てくるおじいちゃんも良かったですね。「撮影があるから着替えてくる」って言って、着替えてきたら、「MURDER」って書いてあるTシャツを着てきて。「それに着替えるんだ?!」と思って(笑)。

FLJ LAではライヴもやったんですよね?
NENE ダウンタウンで一度ライヴをやったんですけど、むちゃくちゃ楽しくて。FREAK CITYっていう好きな服のブランドがあって。そこに遊びに行ったら、そこのジャスティンから、「パーティがあるからライヴしなよ」って言われて。全然やりたいって言って、やらせてもらった感じなんです。日本語で歌ってるんだけどスゴく盛り上がってくれて。全然いけるじゃん!と思って。
Ryugo Ishida そこにいたヤツとその場でスタジオにも入ったよね。
NENE 曲も作ったりしましたね。

FLJ 前から車に乗っている時に曲のアイデアが浮かんだり、車のことがリリックにも出てきたりしますけど、LAで乗った車はどうでしたか?
Ryugo Ishida NENEがジープがいいって言ってて、俺はクラシックカーに乗りたかったんですよ。ジープもクラシックカーも楽しかったですね。
NENE 気持ちいいよね。道も広いし。
Ryugo Ishida 砂漠も最高でしたね。
NENE ジープも、吹き抜けで窓も全部取れてるヤツで。だから超気持ち良くて。でも新しい車が欲しくなったんだよね。
Ryugo Ishida 日本に帰ってから、新しい車、超欲しいってなって(笑)。

FLJ LAで撮影した「Palm Tree」のMVが発表されましたけど、2本目のMVは?
NENE 2本目のMVもロスで撮影して。「Psychedeligood」っていう曲になります。

FLJ 「Psychedeligood」ってスゴくいい言葉ですね。
NENE 私が考えました。何かつながっちゃったんですよ。

FLJ リリックにも出てくるディズニーランドには行ったんですか?
NENE まだ行けてないんですけど、行きたいよね。でもそういう気分でした。ロスのユニバーサル・スタジオには行って、めちゃ楽しかったですね。

FLJ LAって夕暮れとか夜明けとかに宇宙を感じませんか?
NENE 満月がヤバくて。ストロベリー・ムーンかな、月がデカい時がありましたよね。その時ちょうどロスのスタジオに入ってて。ちょっと休憩するために外に出たら、むっちゃデカい月が出てて。そこにはヤシの木もあって。めっちゃきれいだなと思って。その時に出来た曲が「ICY (Peppermint Acid)」なんです。ドロドロしてるんですけど、月にぶっ飛ばされそうになって。それも最高だったなあ。

FLJ 前にも世界に出ていきたいと言ってましたけど、その思いは変わりませんか?
NENE 変わってないですね。
Ryugo Ishida むしろ近づいてきた感じがします。
NENE 世界でやりたいですね。


『Mars Ice House Ⅱ』
(Mary Joy Recordings)
7月4日リリース

https://yurufuwagang.com
Instagram: @yurufuwagang
Twitter: @yrfwg_ltd

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