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YDIZZY

May 31,2017

渋谷生まれ渋谷育ち。既存のヒップホップの枠にとどまらないTOKYOの新世代

PHOTO: Jesse Kojima

From ISSUE 54 (05.31.2017)

1994年渋谷区神山町生まれ、渋谷育ち、「kiLLa」クルーのラッパーYDIZZY。2016年のフリーミックステープ『Syndrome II』、ANARCHYの『BLKFLG』への客演参加、ロンドン在住の木村太一監督のショートフィルム「LOST YOUTH」出演と話題を呼び、今年2月には配信限定の初の有料作品『Syndrome III』をリリース。そこからわずか4ヶ月後、初のフィジカル作品でもある待望の1stアルバム『DIZiNESS』をリリースする。トータルプロデュースを手がけたChaki Zuluと約2年かけて作られたというこのアルバム。爆発力たっぷりの曲から、軽妙な曲、心境を激白する曲、女性をエスコートするスウィートな曲まで、様々なテンションの曲でYDIZZYの喜怒哀楽が表現され、聴きどころ満載の作品となっている。その個性は既存のヒップホップという枠には収まらない。5月にはフランス・ランスで開催されるフェス「ラ・マニフィック・ソサエティ」に出演。アルバム・リリース後には日本ツアーのみならず、アジア、ヨーロッパでのツアーも予定されているという。YDIZZYを渋谷で取材・撮影した。

FLJ 音楽を好きになったのはどこから?
YDIZZY 音楽は気づいた時から好きで。小1、小2ぐらいで自分でCD借りて、自分の気に入った曲2、3曲ピックして、MDに落として、自分だけのアルバムを作って。MDウォークマンを聴いて学校に行ってたす。

FLJ 小さい時から選んで聴いたっていうのは、好き嫌いがハッキリしてたんだね。
YDIZZY ハッキリしたっすね。ちょうど俺、ORANGE RANGE世代で。俺は違うなと思って。でも友達からアルバム借りて、けっこう聴いて、ある程度歌えるすけど(笑)。カッコ良くねえけど、頭に残るす。上手くヤラレたっす(笑)。

FLJ 自分で好きで選んだ音楽は?
YDIZZY ザ・ブルーハーツとか横浜銀蝿。あと海外のロック系ちょっと行って。ヒップホップも聴いてたんで。LL・クール・Jとか。50セントの「In da Club」とか『Get Rich or Die Tryin’』がガッツリ当たってきて。D12とかエミネム周りのヤツらから始まっていろいろ聴いてました。

FLJ いろいろ聴く中でヒップホップが一番ヤバイってなったのは?
YDIZZY 単純にビジュアルと雰囲気。自分、バスケずっとやってたんすけど、ヒップホップとバスケ、めちゃ近かったんで。だから自動的に行ったって感じすかね。

FLJ 日本語ラップは?
YDIZZY 日本語ラップはK DUB SHINEが地元の先輩だったんで。中学とかでライヴしてたんすよ。だからいつの間にか知ってたっすね(笑)。それでキングギドラとかそっち系聴くようになるじゃないですか。

FLJ 自分でラップをやろうと思ったのは?
YDIZZY 20歳の時かな。

FLJ きっかけはあったの?
YDIZZY これ毎回聞かれるんすけど、最初嘘ついてたんすよ(笑)。俺らラップやってなかったんすけど、たまたま雑誌に出てたんすよ。おしゃれ集団みたいなので。それでRYUZOさんが俺らのことは知ってて。「ちょっとやってみない?」って感じで言われた。そういう理由で始めたって言って、最初嘘ついたんすよ。

FLJ 嘘っぽくないけど(笑)。
YDIZZY 本当っぽいじゃないすか(笑)。俺もいいなと思って使ってたんすけど。実際に俺がやりだしたのは、そのRYUZOさんの話があった時点で、同じ頃にArjunaがラップをやりだしたんすよ。でも俺はその時はやってなくて。俺はラッパーになる気はなかったんですよ。Arjunaが始めて、「二番手はおまえだろ」みたいな(笑)。めちゃくちゃ流れてるんすよ。クルーの中で。「絶対おまえしかいない」みたいな。だからやったすかね。ぶっちゃけ。

FLJ じゃあ流れに乗ったんだ?
YDIZZY はい。あの流れを避けるのは無理だったすね。けっこうみんなマジだったす。しかも、ライヴとかでも、俺音源出してないのに、「俺らのクルーの中で一番ヤバイラッパーいるんだよ」とか言って、ArjunaからMCされて(笑)。一発目のライヴからそんな感じだったんすよ。

FLJ 仕組まれたね(笑)。
YDIZZY 仕組まれて流れに上手く乗った感じすかね。抵抗せず、嫌がらずにやってきたす。

FLJ 流れに乗ったとは言え、すぐにラップできた?
YDIZZY ソッコーできたっす。でも日本語ラップ、ダサすぎて。海外と比べて。実際問題。俺はラップをやる前から、日本語ラップとヒップホップは違うっていうのは思ってて。別にリリックも書いてないし、何もしてないただのガキなんすけど(笑)。ヘッズなんすけど。けど俺がやりたいのはヒップホップだと思ってて。でも、今の自分がどう見えてるのか、やる前の俺が何て言うのか聞きたいすね。「おまえ日本語ラップやってんじゃん!」って言われそう。そう言われないようにやってるっす。

FLJ 最初に書いた曲は覚えてる?
YDIZZY 最初は書くってよりも遊びでやってたんすよ。バスケ終わった後に、みんなでインスト流して遊びで。で、外でやって楽しくて、家戻ってまたみんなでやったりして。一番最初にレックした曲は「Mic Check」なんですけど。

FLJ 最初のレックはどうだったの?
YDIZZY スッゲエ緊張したっす。もう次に出すのは俺みたいになってたんで、録んねえとな、作んねえとな、EPは5~6曲要るよなってなって。じゃあやろうかってなって。意気込み的にはそん時ゼロだったすけど、けっこうイケイケで行ったっす。ヴァイブスだけはニガーだったんで(笑)。

FLJ 最初の音源を録って、そこからどういう方向に行こうかっていう風には考えたの?
YDIZZY 特にはなかったかな。でも声を聴いてめちゃくちゃカッコいいとは思ったな。ラッキー!みたいな。でもラップのスタイル的には何にもないすかね。全然考えてもないから。

FLJ ちなみに、kiLLaクルーっていうのはどのようにして生まれたクルーなの?
YDIZZY 元々はバスケのクルーなんすよ。俺が6歳の時から一緒にいるヤツらもいるんで。バスケをストリートでやるじゃないですか。代々木公園でやってたんで、黒人とか白人とかいろんなヤツがいて。それでストリート系のAND1とか、NBA以外にもあって。そういうのを見てるとやっぱヒップホップが流れてて。みんなヒップホップ好きで、好きな服着るのも好きで。いろんなことやってたんすよ。で、友達からいきなり、「何かの撮影があるから来て」みたいな感じで言われて。行ったらkiLLaってのができてたみたいな感じ。

FLJ 雑誌に出ちゃったらクルーとして認識されてしまうわけだよね。
YDIZZY 俺それ最初超ヤで。何かファッション野郎みたいじゃないすか。そいつらってマジで基本キモイじゃないすか。よくわかんねえなと思いながら、入って、写真撮ってたんすけど。まさかで、普通にkiLLaって名前はちょっとだけ大きくなったすね。

FLJ で、気づいたらみんなヒップホップをやってて。流れを作られて。
YDIZZY そうす。完全にあれはそうす。

FLJ 今回、初のアルバムということで、最初にこういうアルバムを作ろうというのはあった?
YDIZZY それはなかったんすけど。俺がラップを始めて3~4ヶ月ぐらいの時、ちょうど「Ice Cold City」を出した時に、Chakiさん(Chaki Zulu)にピックされて、「おまえと何かやりたいから」って言われて。「あ、そうなんすね」って言って。で、始まったす。Chakiさんに声をかけられて制作を始めたって感じすね。事前にこういうアルバムにしようっていうのもなかったですし。まず自分で自分のアルバムっていうのが想像ができなくて。どちらかって言うと、作ってく段階で固めてったって感じですね。

FLJ 2年ぐらいかけて作ったの?
YDIZZY そうす。作り出したら早いんすけど、作らない期間が半年ぐらいあって。それでちょっと遅れちゃって。

FLJ 作り方としてはビート先行で?
YDIZZY いや、その場っすね。俺がスタジオ入って、Chakiさんからその場でトラック流されて、そのままレックする場合と、あと、俺がスタジオ行って、「ちょっとトラックこういう風にしてください」って言って、イメージだけ伝えて音にしてもらって、レックする形、すかね。

FLJ 一緒に作ったんだ?
YDIZZY 一緒すね。作ったのはほとんどスタジオっす。Chakiさんからもアイデアもらって。

FLJ トラックとラップの相性も最高だし、曲ごとにいろんなテンションがあったのが良かった。
YDIZZY アルバムいいすよね。ハッキリ言って。

FLJ 自分でも手応えあり?
YDIZZY うん。でも結局今はもう手応えないすけど。3ヶ月前とかめっちゃあったんすよ。ハンパない! 今までこんなアルバムないじゃん、みたいな。カッコ良すぎ、どうしよう?! ヤッバイ、聴いて、聴いて。全員に「聴いて、聴いて」。「お母さんも聴いて」みたいな。今はもうあんまだな。3ヶ月前がピークだったな。3ヶ月前に8割、9割できてたんすよ。その時点でわかるじゃないですか、ある程度。アルバムがどうなるのか。めっちゃ上がってたっすけど。今はもっとヤバイの作りたいっすね。

FLJ ちょうどアルバム収録曲の「YES」のMVが出たばかりだよね。あの曲では「あ、はい」って何度も出てくるんだけど、口癖?
YDIZZY あ、はい。

FLJ あ、そういう使い方なのね(笑)。でもこのアルバムではより自分というもの、いろんな自分自身を出したのかな?
YDIZZY 出したすね。自分を出すことが一番カッコいいから。素直でカッコいいことが一番カッコいいから。今の自分を出したのは、Chakiさんに仕組まれたと思うんすよ。基本的に、アルバムの10曲以上、Chakiさんにトラック聴かせてもらって、俺が作る感じで。2曲ぐらいは俺から提案したんすよ。「こういうビートでお願いします」みたいな。Chakiさんがこういう風にしたいとか、こういう風な俺を出したいとかっていうのは、たぶん最初から何かあって。だから最終的に喜怒哀楽じゃないけど、いろんな曲がアルバムにあるのかなと思うすね。何かそういう風にやられてたっぽいすね。

FLJ 引き出されたんだね。
YDIZZY はい。Chakiさん、変態なんで(笑)。レコーディング中にいろいろ技術を言ってくるんですよ。最初はハモりとかやって、そこから「これやって」「あれやって」って、細かい技術みたいな。そんなの最初できないじゃないすか。けっこうむずいこと言ってくるんで。俺がハアとか言ってると、「DIZZYは知ってるんだから思い出して!」って言われるんで、「ハイ!」とか言って。それでできちゃった。まんまと乗せられたす。

FLJ アルバム終盤の「TOKYO」とか「Deep Love」といった曲では、ディスコとかソウルといったブラック・ミュージック感のあるトラックだったから、そういうアプローチもするんだ?と思ったんだけど。
YDIZZY 「TOKYO」は、「TOKYOは朝まで二人で」っていうリリックだけ出てきて。マイクの前でそれ歌ったんすよ。Chakiさんが「いいね」って言って。「トラック作るわ」。で、トラック作って、入れたら、ああいう感じになったす。ディスコ系のトラックで、俺も好きっす。

FLJ 自分からアイデアを出した2曲はどれ?
YDIZZY 「OMW」と「SuperrStarr」。この2曲は、アルバムの6割ぐらい出来てから、ちょっと最近ぽい感じの曲がないとダメだねってなって。俺がこういうのとこういうのってアイデア出して。で、やったっす。だから俺が隠し味を足したって感じすかね。ほとんどの料理はいつの間にかChakiさんに作られてましたね(笑)。

FLJ リリックを作る時、韻とフロウで意識している部分はある?
YDIZZY どちらかというと頭の中で出てきた音に対して言葉を足してくだけなので。それが自動的に意味になってくので。でも例えばディスコっぽい曲だったら、敢えてラップを多めにして、韻を固くしてやったり、歌なんでフックとか入れて、バランス取るためにそういうことを考えたりとかはするすけど。フロウは、アルバムで言ったら「Deep Love」くらいかな。「Deep Love」は30分くらいでバーッて2ヴァース書いたんすよ。で、レックして録ったら、「全然ダメ。もう一回書いてよ」って言われて。もう一回全部やり直して。あれは何の音程もないラップからいきなり歌になるみたいな、チャンス・ザ・ラッパーみたいなラップの作り方なんすよ。それ、俺できなかったんで。フロウとか考えて、間も空けて。一個一個の言葉の意味というか、重みとまでは言わないすけど、聴かせるじゃないですか。バンバン詰め込んでるラップよりも。だからそこはちょっと考えたすけど。あと俺がやるのは、一人二役。それは自分で考えてやったす。外国やんのに、日本やんねえな、しかも上手くやってるヤツいねえなと思って。何ならエミネムとかもう3人とか4人やるじゃないですか。それチャレンジしたっすね。で、たぶんちょっとできてるっす。

FLJ 声の出し方もいろいろあるから、チャレンジしてるんじゃない?
YDIZZY 引き出されたっすね(笑)。勝手に。完全に。

FLJ あと、ライヴの勢いがスゴいよね。もう勢いがハンパなくて。
YDIZZY ライヴ一番楽しいす。ライヴは大好きっすね。ダントツす。

FLJ 最近自分でも良かったライヴは?
YDIZZY 台湾すかね。もうダントツヤバかった。台湾、マジで東京より人気あるんすよ。1年半ぐらい前に一回YENTOWNで行ったんすよ。そしたら全員俺のファンになったっす。東京もライヴ楽しいんすけど。

FLJ でも、例えばVISIONとかで観た時に思ったんだけど、他の出演者を食おうと思ってやってるよね。
YDIZZY やってるす。ていうか、どう考えても一番カッコいいんで。俺からしてみれば、俺インディーで、正味俺のこと知ってる人少ないじゃないですか。まだ全然。だから知らない人の心をつかむチャンスと言えばライヴしかないんで。ハッキリ言って。VISIONなんて一番いい機会じゃないですか。単純にいっぱいいるんだから。で、知らないだけだから。知ってくれたら変わるかな、みたいな。だから他の出演者がいるいない関わらず気合いは入るすよ。俺は人が多いってだけで。でもやっぱ俺ら全員言ってんのは、外タレが来た時の前にライヴやることがあるんすけど、その時は外タレより絶対カッコ良くしようよって。食っちゃおうってことすけど。結局渋谷なんで、地元じゃないすか。実際、外人より盛り上げなきゃダメじゃないすか。

FLJ さっきアルバムが出来て少し経って、もう新しい曲をやりたいって言ってたわけだけど、今やりたいことは?
YDIZZY 『Syndrome IV』ももうすぐ制作が終わりで。セカンド・アルバムのイメージもある程度できて。やりたいことは、ハンパない曲作りたいっす。ヤバイ曲作りたいっす。それしかないっすね。

FLJ ゆくゆくはどういうアーティストになっていきたい? アジアもヨーロッパもツアーするわけだから、日本だけじゃなく海外で活動することも考えてる?
YDIZZY 日本で言えば、EXILEより有名なラッパー。とりあえず日本を征服して、2020年までにアジアを征服して、ロスかNYに拠点を移し、日本で俺のライヴがあることがレア、だから、日本人なのに外タレ的な存在、すかね、ゆくゆくは。そこまでは見えてるっすね。そんぐらいはなるのかなって。



『DIZiNESS』
6月7日リリース
(bpm tokyo)

Twitter: @kiLLa_YDIZZY
Instagram: @killa_ydizzy
Soundcloud: ydizzy_dizzy

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