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TOSHI-LOW (BRAHMAN)×ILL-BOSSTINO (THA BLUE HERB)

April 05,2017

BRAHMANのニュー・シングル「不倶戴天 -フグタイテン-」で初のコラボレーション曲「ラストダンス」を発表

PHOTO: Jesse Kojima

From ISSUE 53 (03.30.2017)

BRAHMANが4月12日に約1年9ヶ月ぶりとなるニュー・シングル「不倶戴天 -フグタイテン-」をリリースする。このシングルに収録された3曲の新曲の中には、「ラストダンス」というタイトルがつけられた、THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOとのコラボレーション曲がある。かたや2015年に結成20周年「尽未来際」を迎えたBRAHMAN。かたや今年結成20周年を迎え、10月29日には日比谷野外大音楽堂で20周年ライヴを開催するTHA BLUE HERB。これまで両者ともパンク、ヒップホップのシーンにとらわれない独自のスタンスで、独自の言葉と音を使って独自の世界観を表現してきたアーティストであり、震災をきっかけに音楽の意味を問い続けてきたレベル・ミュージックの体現者である。その両者が初のコラボレーションで何を生み出したのか? TOSHI-LOWとILL-BOSSTINOに話を聞いた。


左から、TOSHI-LOW、ILL-BOSSTINO

FLJ そもそも最初に知り合ったいきさつは?
ILL-BOSSTINO そもそもは渋谷AXだね。
TOSHI-LOW FUUDOBRAINのイベント? うち、THA BLUE HERB、DMBQ。2004年かな?
ILL-BOSSTINO あれが初の遭遇だった。そこにいた中ではTOSHI-LOWたちとしゃべった記憶しかないですもんね。

FLJ それ以前にお互いを意識したことは?
TOSHI-LOW 俺は前から知ってたし、音も聴いてたし、東京にスゴいセンセーショナルな感じで登場したから、そのうち東京の誰かに殺されるんじゃないかな?って思ってたし。でもそのヒヤヒヤ感が堪らなかったから、俺はスゴい好きだった。
ILL-BOSSTINO ほぼ同世代だし、あの頃ヒップホップとラウド・ロックの共演はけっこう普通だったんで、俺らも普通に聴いてた。まあでも時間をかけて少しずつ近づいていったかな。

FLJ 時間をかけたにしても、気が合った部分、共通する何かがあったと思うんだけど、そこは?
TOSHI-LOW 真っ直ぐじゃないっていうのはスゴくあって。’90年代終わりになって東京のヒップホップは、パーティでウェイ!って感じが多かったし、もっとわかりやすい韻を踏むとか。だからTHA BLUE HERBが出てきた時、ヒップホップが好きなヤツで「あれはヒップホップじゃない」とか言ってるヤツも多くいて。スゴく頑なに批判してる人もいた。それも堪んなくて。何か本当にスゴいことをやる人って、必ず良いのも悪いのもどっちも出るじゃないですか。あの時、本当に本物が来たって感じでしたね。
ILL-BOSSTINO AXの時の打ち上げで、TOSHI-LOWがけっこう先輩に向かってガンガン詰めてるのを見てて。けっこう酔っ払ってて。こいつスゲエなっていうのが一番最初の印象でしたね。

FLJ 何故先輩に対して詰めてたの?(笑)
TOSHI-LOW ちょうど意味ない敬語をやめようと思った時期で。30代をちょっと超したところで、このまま40歳になったらもうアウトだと思って。まあペコペコして仕事をもらったことはないですけど、何か対等にやりたいと思って。それでステージに上がらない先輩に対して、「おめえバンドあるのに何でやんねえんだよ」みたいな口の聞き方をしだした当初ですよ。
ILL-BOSSTINO 「身体悪いの?」って聞いてた(笑)。俺も当時はそういうところはあったんだけど、真正面から詰めてるのを見た時に、何か面白かったんですね。しかもその日のイベントの先頭バッターがTOSHI-LOWたちで、しょっぱなからガッツリ盛り上げてるのもちゃんと観てて。もうその時の段階ですでに今観ているようなフロアになってて。
TOSHI-LOW いや、あの当初はいろんな人に怒られた。だって今まで敬語を使ってた後輩がいきなり「おい」とか呼びつけるわけですよ。

FLJ 説明もしないで?
TOSHI-LOW しない。いきなり気に入らないことをぶちまけて。でもあそこから入らなかったらたぶん入れなかった。ちょっとずつ崩すとか無理でしょ。

FLJ TOSHI-LOWって、ケンカを売ってくるんだけど、雰囲気としては「面倒くさい後輩だけど聞いてくださいよ」って感じで来るから、聞かざるを得なくなる絡み方なんだよね。
TOSHI-LOW だって、嫌いな先輩に中指を立ててるわけじゃないし、好きだから「こっち来てよ」「一緒にやろうよ」っていう甘えた部分もあるわけだから。むしろ先輩たちがカッコいいことを俺は知ってるから、「何で? 一緒にやればいいじゃん」っていう風になっちゃう。
ILL-BOSSTINO でもそう言ってくれる人はいいですよね。

FLJ これは両者に共通する部分かなって勝手に俺が思ってるんだけど。THA BLUE HERBは北海道から東京に中指を立てて、自分たちならではのスタイルを打ち出してきたし、TOSHI-LOWたちはそれこそAIR JAM系って呼ばれる中にいながらも、自分たちは自分たちだと言いながらやってきたわけだよね。そういう自分たちの立ち位置というか、アプローチっていうのは、元はどこから来たものなの?
ILL-BOSSTINO 東京に出ていく選択肢しかないような地方に住んでたし、東京のラッパー連中が俺らの地元に来て好き放題威張り散らすのも見てきたんで、中指を立ててやる以外にやり方を知らなかったですね。あと、実際に生活に困窮してたし、窮鼠猫を嚙むじゃないけど、本当にそれしか方法を知らなかったですね。「おめえらみたいにダセエヒップホップをやってるヤツらに本物のヒップホップを教えてやるよ」っていうテンションでしか、やり方を知らなかった。でも今思えば、東京に出て行って、東京でのし上がっていくことの方が難しいと思う。東京に来ちゃって、先輩ができちゃって、頭が上がんない人ができちゃって、世話になっちゃって、どんどん取り込まれていったら、その強さはTOSHI-LOWみたいにやらない限り、滅多に出せない。俺にとってあれは苦境だったけど、今思えばあれはあれで良かったなって思いますね。
TOSHI-LOW あの当時、俺が思ってたヒップホップじゃないヒップホップの人とか、4つ打ちとかダブとか当時深く音楽が好きな人たちの方からグワーッと波が来てたよね。だから、マンハッタン・レコードでは見ないけど、逆にダブを売ってるようなところでスゴく売ってて。それがまたカッコ良くて。だから、本流が変わるためには既存のものじゃなくて、本当に新しいところから始まるんだなって、そういう意味ではスゴい勇気をもらった。みんなが王道をやらなくてもいいんだって思った。

FLJ BRAHMANはどうだったの? それこそちょっと上の先輩がスゴく多かったじゃん。
TOSHI-LOW ちょっと上の先輩が、大体いろんなパンク×いろんな音楽をやっちゃったから、もうやることなくて(笑)。パンクを速くしたり、スカを混ぜたり、レゲエを入れたり、ミクスチャーもいっぱいありすぎて。唯一やられてない民族音楽っていうのだけが残ってて。

FLJ そういう選択肢だったの?
TOSHI-LOW 本当は元々マノ・ネグラとか、人種が混ざったバンドも好きだったから。今となってはそれがスゴく良かったし、すべての音楽はワールド・ミュージックだから。今回の「ラストダンス」なんかも、それこそ日本のお祭りみたいな部分も俺はあると思うから。

FLJ あと両者とも、それぞれのジャンルにおいて、リリックの言葉の捉え方が独特だと思うのね。もちろん言葉が刺さるのは当たり前として、さらに違う刺さり方をしてくるというか。日本語ラップでも誰にも似ていないし、バンドの方でもこういう言葉使うをする人はいないから。言葉に対するアプローチはどう考えていたのかなと思って。
ILL-BOSSTINO そこがたぶん俺らを繋げているのかもしれないですね。俺も特に意識するようになったのは震災以降なんですよ。震災前は自分の表現を追求しているだけだったんだけど、震災以降っていうのは、「こいつはどう思ってるんだろう?」って興味が湧いてきて。TOSHI-LOWとかSLANGのKOちゃんとかパンクの人たちの行動も含め、何を歌ってるんだろうか?って興味深くなっていって。そうなってくると、英語で歌ってるバンドの人たちっていうのは、ライヴになった時も英語なわけで、それだと俺は、「はいはい。俺はもういいや」ってなってしまうのね。だってこんな時代じゃん。昔はともかくとして、今自分の国の言葉で言わなくてどうするの?っていう時代になったわけだから。KOちゃんの「何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる」っていうのを一番最初に聴かされた時にスゴいショックだったし。だから、バンドでも日本語でやるっていうのは自分的には絶対条件だったんですよ。そんな時に、TOSHI-LOWの表現、日本語の歌詞とか言葉の選び方とかは良かったんです。そこの中の言葉の選び方の趣味の近さっていうのはあると思いますね。
TOSHI-LOW 俺は震災でガッツリ日本語になったんで。日本語って、メロディを乗せて何となく流れよくっていうのができづらい言語だと思ってるし。深く日本語と付き合わないとできないじゃないですか。「こんなに日本語って難しいんだ?」って思ったし。まあ今まで逃げてたんだなって思う部分もあった。もちろん、英語でやってるバンドが逃げてるとは思わないし、海外で闘うっていうこともあるんだろうけど。俺は本当は郷土愛はない方だし、でも仲間が好きだし、友達が好きだし、そこを害するヤツが嫌いっていうだけで、それを大きく言えば愛国なんだし、けど、民族意識とかもそんなにないんです。だけど自分は日本人だと思ったし、日本語で歌いたいと思ったのは正直なところなんです。

FLJ 二人でコラボをやろうっていう話は前からしてたの?
ILL-BOSSTINO してましたね。昔からずっと。

FLJ このタイミングでやろうってなったのは?
TOSHI-LOW 3年前ですね。もっと前からやろうねみたいな話はあって。でも3年ぐらい前にBOSSが「やろう」っていい感じで言ってくれて。一緒にメシ食って。リリックを書いてきてくれて。でもそのリリックを読んだ時に、スゴいやりたかったのにやれなかったんですよ。BOSSに対してどうしていいのか本当にわからなくて。BOSSを汚したくないし、THA BLUE HERB、ナメられたくないし。そう思うと、どんどん選択肢が狭くなっていって。最終的にBOSSに、アコギの方がいいんじゃないかとか、ピアノの方がいいんじゃないかとか言って。バンドでやるイメージが湧かなかった。今までのミクスチャーの方法論って、チョッパーがあって、そこに「イエー、イエー」みたいなのが乗って。

FLJ ハードなのにファンキーな演奏にラップが乗る感じだね。
TOSHI-LOW そうそう。でもあれは、みんなワアワア言ってる物量で成り立つ’90年代のミクスチャーだから。あれじゃないことをやりたかったんです。それでリリックをもらったくせに返信できなくて。それである日BOSSからメールが来るんです。「あのリリックはおまえらのことじゃないからな」って。何のことだかわからなかった。
ILL-BOSSTINO OLEDICKFOGGYと曲を作ったんですけど、「やらねえならもう待たせんな」っていう歌詞があったんですよ(笑)。これは何度も説明しますけど、TOSHI-LOWのことじゃなくて、初期衝動で書いてるんですよ。でも俺らのスタッフが、「これはTOSHI-LOWさんのことを書いてるんすか」ってなって。俺は全く思ってないし、そう思われても嫌だから、それで自分から言っておこうと思って。でもそれが逆にまたTOSHI-LOWに火をつけたというか(笑)。それはそれで面白い結果にはなりましたね。
TOSHI-LOW 「仮にそう思ってるんだとしても、俺が待たせてるわけだから、いいんだよ」って返信して。

FLJ お互いに気を遣い合ってたんだ。
ILL-BOSSTINO そうなんですよ。TOSHI-LOWたちが背負ってることとか、東北LIVEHOUSE大作戦とか、BRAHMANも含めて、やってることの濃密さを俺は十二分に理解してるので。だから本当に空いた時間でいいからっていうつもりで俺はずっといたんですよ。でもそうなった瞬間、TOSHI-LOWがけっこうメラメラとなって。「やっぱやろうぜ」ってなって、すぐに音を送ってきてくれて。

FLJ BOSSに音を送った時はどういう曲を作ろうと思ったの?
TOSHI-LOW リリックをもらった何年か前では思いつかなかった部分があって。何年か経って俺たち、内田勘太郎に呼ばれたりとか、CHABOに無理やり歌わされたりとか、ブルースをやる機会があって。何か違う受け皿ができてたんです。それまでは、自分にないものでBOSSをこうしたいって勝手に思って、できもしない大きな音楽っていう受け皿を思ってた。そこからいきなり、「今やるんだったら、もうここにあるものしかないんだから、じゃあどうやってバンドで、BOSSのリリックで乗せるんだよ?」って本気で思いつめたんですね。そしたらパパパパッて出来て。作りかけのパーツもいっぱいあって。次の日にみんなに「BOSSにこうやってもらったらどう思う?」って聞いたら、みんな、「いいね!」とかじゃなくて、無言でわかるって応えたんです。そこで一回、これをラフで送ろうってなって。

FLJ そこから曲が出来ていったんだね。
ILL-BOSSTINO もう送られてきたのを聴いた時点で、「イエー! これ最高じゃん」ってなって。あとはやり取りを3~4回往復して、じゃあスタジオに入ろうってなって、一日録って終わりです。そこまではスゴく速かった。
TOSHI-LOW BOSSは携帯持ってないし、「ここをこう変えて」って細かい説明を書いて。でも言葉だから、ちょっとわからない部分があって。それで送ると、BOSSもリリックに集中してるから、何日か返ってこなくて。で、みんなで進めてて、「よし、これでいいんじゃないか」ってなったら、返信が来て、「ここはこう変えてくれ」。「わあ、間違えた!」って感じで。一緒にいて言ってくれれば5秒でできちゃうことを、「たぶんBOSS、こういう感じだからこうじゃないか?」っていうのをちゃんと想像力を湧かせながらやってたから、それがまた楽しかったんです。
ILL-BOSSTINO 想像せざるを得なかったね。全員が同じヴィジョンを見ながら作ってたと思いますね。でも出来上がってみたら、そのヴィジョンをとうに超えたようなものが出来ちゃったので。本当、スゴい曲ですよ。

FLJ 今までに聴いたことのないような曲が生まれたからね。ヴァースで韻を踏みながら語りかけてくるところは演奏も語りかけてくるし、フックで日本のお祭り感を出して、後半は両者が絡み合いながら曲がどんどんビルドアップしていく感じが、マジでヤバいなと思って。
ILL-BOSSTINO 作るまでに何年もかかったんで。お互いのキャリアも実力もあるし、そりゃ普通のものでは終わらないっていうのは頭ではあったんですけど。1曲の中に3曲くらいの要素が入ってますから。ラウドな部分だけでも1曲作れてしまうわけだし。それをまとめたっていうのもスゴいし、これまでの時間をすべて注ぎ込んだなという感じですね。

FLJ フックのTOSHI-LOWのヴォーカルがあって、それからさらに大サビでメロディが出てくると、いくら叫んだ後でも、救われるというか、ポジティヴな気持ちに持ってかれるよね。そこがまたBRAHMANの良さだと思うんだけど。
TOSHI-LOW 憂いみたいなもの、人間っぽいところというのはスゴく思いますね。でも沸点としての高さが低かったら、本当に負けだなと思って。
ILL-BOSSTINO その通りだよ。けっこう何だかんだ言って、意地を張り合ってたと思うんだよね。もちろんお互いに気を遣い合ってたし、調和を求めていたし、俺はBRAHMANという大きな世界に対して入っていくっていう感覚が強かった。でもその沸点に行く布石はいくらでも作れるけど、沸点に関しては「そこは頼むよ」って、TOSHI-LOWに投げてた感じも強くて。実際にそこに向かうエネルギーもまさに「全身全霊」で注ぎ込んでくれた。そこが出来上がってたので、俺としてはスゴくやりやすかったですね。
TOSHI-LOW 最後にヴァースがバ~ン!って来るじゃないですか。でも最終的に全部来すぎて、どうするんだ?ってなって。ラップもあって、俺の歌もあって、ドラムはドコドコ鳴ってるし、ギターは歪んでるし。でもそれが最後はケイオスとなって結びついていくんです。
ILL-BOSSTINO 「ええじゃないか」みたいな世界を作りたいっていう気持ちが出てたんですよ。自暴自棄で、踊って、全部ぶち壊して。ここの瞬間で最後みんなで逝っちゃおうっていうのは、少なくとも5人はなってたんで。

FLJ リリックの内容としては、もちろん震災後が根底にあるとは思うんだけど、ヒップホップもパンクも、レベル・ミュージックである以上、歌わなくてはいけないっていう思いも感じられたんだけど
ILL-BOSSTINO やっぱり震災以降、TOSHI-LOWとかパンクの人たちがやっていることと、ヒップホップの人間がやってることの違いは明白なんですよ。俺はパンクの人たちからものスゴいインスピレーションを受けてるし、俺も彼らがやってる支援に対して何か役に立ちたいと思ってたし。BRAHMANのところに俺が行くっていう感覚の中で、何を歌うのかってところで、俺もこの6年間ずっと見てきて、「俺もそう思うよ。でも今はこういう言い方でやろうと思うよ」っていうのを、いろんなムーブメントの中にちょっと投げかけてみたかったんですね。いろいろな問題について、賛成、反対に大きく分断されてしまった後の時代なので、その間で闘わされているような役割は歌いたくはなかった。震災以降6年経った日本へ今のメッセージを打ち出したかった。

FLJ 「あの電力会社のお偉方 誰か殺してやろうと思わなかった?」ってリリックが出てきた時に、「うわあ、言ってるな」って衝撃があったし、さらに「怒りを抱えたまま生きていくのは疲れるんだ それが1番苦しい人生なんだよ」って、また深いところをついてくるなと思って。かなりスゴいことを歌ってるよね。
ILL-BOSSTINO そうなんですよ。あそこの何行かは、勇気を出して踏み込みました。BRAHMANもそれをよく受け入れてくれたなとも思うし。
TOSHI-LOW あの数行のためにあそこまで俺達はすべての流れを持っていきましたね。
ILL-BOSSTINO あそこが大サビですね。6年経って、やっとそこまで見えるようになったし、そこまで言葉で辿り着けるようになった。
TOSHI-LOW でも本当はこの曲を鳴らさなくて良い世の中になることを願ってます。そうなったら明るい歌詞に変えてライヴでやるから。

FLJ 「ラストダンス」は是非ライヴでも観てみたいね。これも俺が勝手に思ってることなんだけど、両者ともライヴで出来合いのリリックを歌ってる感じがしないのね。MCも含めて、リリック、メッセージをその場で書いている感覚がするんだけど。
TOSHI-LOW 出来てるリリックでも生きてるリリックはどこでも響くんですよね。曲もそうじゃないですか。流行りに乗ったものはその時を過ぎてしまえば恥ずかしい。でも、命削って書いてるって言ったら、BOSSの詞は俺はそう思って見てるし、だからそういうのは出来合いうんぬんでもなくて、もう真理だから。だから通用するんですよね。それは結局強さでもあるし、人間の持ってる心の部分を初めから歌ってるからだと思う。

FLJ 二人とも’90年代から活動を続けてきて、もう20年選手じゃない? 20年ずっと第一線でやってるアーティストってそう多くはないし、もちろん新しいアーティストも面白いんだけど、ずっとやってきたアーティストにしか出せないものってスゴいレベルのものだと思うんだ。積み重ねて、紆余曲折も経て、自分の表現方法として見えてきたことはある?
ILL-BOSSTINO 若いラッパーもいいヤツはたくさんいるんですよ。今は基本的に世の中どうしようもないんで、「どう思ってるのおまえら?」っていう意味では、正直、ラッパーの時代なんですよね。俺たちがやってた’90年代はけっこうバブルの最後で、でもまだ景気は良くて、レコードはバカみたいに売れてた。その時は誰でもラップできて、誰でも売れた時代なんですよ。でも今はもうそうじゃないから。頭を使っていろんなやり方でやりつつ、自分の楽しめる範囲の中でやるっていう意味では、昔よりもハードになってる。だけど、今の方が夢中だし、もっと良くなると思ってるんです。「ラストダンス」は自分のキャリアの中で一番新しい曲ですけど、俺はあれが一番いい曲だと思ってるんですよ。それがどんどん更新されていくわけなんで。自分はまだそこに幸運にもいれてるので。割とずっと青春というか、ずっと楽しいですよ。
TOSHI-LOW 俺はわかんないすね(笑)。震災で一回リセットしちゃったから。

FLJ フェーズが違うんだ?
TOSHI-LOW フェーズは一緒なんですけどね。俺は’90年代をずっと否定しながらこうやってクレイジー・クライマーみたいに登ってきたから(笑)。最近になって、懐古主義ではなくて、’90年代もそれはそれで良かったなって、やっと振り返れるようになった。でも、ああいう風に自分たちがやれたみたいに、今の子たちもやってほしいなっていうのもあって。ていうのは、ストリートのファッションでも、大きなものじゃなくて、小さなものから杭を開けた瞬間ってあったじゃないですか。でもあの気持ち良さったらなくて。小さいヤツが大きいヤツをこかす。やっぱりそれは俺は快感だったんで。

FLJ あのガツガツ攻めた感じはもうないからね。
TOSHI-LOW ただ、俺らはもはやそれを自分たちの食いっぷちとしてそういう風にしたいっていうのはないんですよ。でも新しいヤツらにはそれをやってほしいな。っていうことは、俺らが考えてるようなことじゃダメなんですよ。その横から、「あんなのパンクじゃねえよ」「あんなのヒップホップじゃねえよ」って出てくるようなことが始まらないと。
ILL-BOSSTINO いや、絶対そう。「これ何なの?」っていうヤツの方が面白いよね。自分もそう思われてたんだろうなって思うし。
TOSHI-LOW でもまだ時代には期待してますよ。ヒップホップやパンクもそうだし、カウンター・カルチャーやレベル・ミュージックとしてのものに。その中で「ラストダンス」に関しては、自信を持って種蒔きをしているから。俺たちは今を生きてる人間だけど、胸を張って、未来にも過去にも言えますよ。だって、今後ラッパーとバンドがコラボする時って、当たり前だけど、もっと面白いものを作らないといけないでしょ。
ILL-BOSSTINO 俺もそう思う。俺らにしても、ザ・タイマーズにしろ何にしろ、それを超えたくてというか、そこに俺らの世代の返答というつもりで、ガチで作ってるわけだから。

FLJ でもTOSHI-LOWも’90年代を認められるようになって、スゴく大きくなったんじゃない?
TOSHI-LOW 「今日死んでもいいよ」とか言ってたくせに、長生きしたことが恥ずかしくなった瞬間がスゴくあったんだけど、生きてみないとわかんないことがやっぱりいっぱいあって。「長生きしろよ」とは言わないですけど、でも、生きてみないとわかんないことを一歩一歩踏みしめていく、そういう修行みたいなことってやっぱりあるんだなあって思う。

FLJ 長く生きてると人生って面白いと思うことは出てくるよね。そういう意味では、YOU THE ROCK☆と一緒に曲をやるとは思わなかったな。まさに昔噛み付いていた相手でしょ。
ILL-BOSSTINO まさにその通りです。長くやってると良いことあるよね、っていうのは本当にその通りで。すべてに中指を立ててパッと死ぬのもあるのかもしれないけど。だって、震災であれだけ人が亡くなったのを見たからね。そういうのを見てしまうと、俺らは生き残ってるんだなって思うから。

FLJ YOU THE ROCK☆と「44 YEARS OLD」(2015年リリース、the BOSS名義のソロ・アルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』の収録曲)で共演することになったのは?
ILL-BOSSTINO 俺があいつを削って、あいつをどかして、自分の居場所を作ったんで。でも今さら「ゴメン」は言えないし、吐いた唾ももう飲めないし、今度は俺があいつを招いてやる番なのかなって思ったんですよね。仁義として。でもYOUはYOUで、いろんな苦境を頑張って続けてきたんで。そこまできたら、今度はYOUをどかして作った自分の場所にYOUを招いて一緒にやるのが、ヒップホップの一つの未来かなって思ったんですよね。
TOSHI-LOW 逆ビーフ、最高! これ日本語で言うと「慈悲」ですよ。

FLJ 2017年、それぞれの活動は?

ILL-BOSSTINO THA BLUE HERBは今年20周年なんですよ。10月29日に日比谷野音でやることに向けて今動いてますね。
TOSHI-LOW 全力で観に行きます。俺はBOSSとやることによって、結びつくところの創作意欲とか、いろんなことに関してまだまだ燃えるものはあるんだなってスゴくわかったので。自分の中でも楽器を持つ回数も、歌う回数も増えてきてるし、リハも面倒くせえなじゃなくて、行きたいって思うし、昨日なんかも子供が熱出して行けないってなっただけで悔しいと思ったし。何かまだあるんじゃないのかなって思ってる。野音は楽しみですね。六本木COREみたいな伝説になるんじゃないかな。





New Single
『不倶戴天 – フグタイテン -』
(トイズファクトリー)
4月12日リリース

[CD] 不倶戴天 – フグタイテン –
01. 不倶戴天
02. ラストダンス featuring ILL-BOSSTINO (THA BLUE HERB)
03. 怒涛の彼方

[DVD] BRAHMAN 2016 BEST MOMENTS(全10会場全10曲)
01. 賽の河原/百万石音楽祭 ~ミリオンロックフェスティバル~
02. BASIS/RUSH BALL 2016
03. SEE OFF/KESEN ROCK FESTIVAL 2016
04. BEYOND THE MOUNTAIN/MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!!16
05. ARRIVAL TIME/AIR JAM 2016
06. ANSWER FOR…/茨城県常総市災害復興支援イベント「Dappe Rock’s」
07. 警醒/MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2016
08. PLACEBO/ARABAKI ROCK FEST .16
09. 鼎の問/風とロック芋煮会 2016 KAZETOROCK IMONY WORLD
10. THE ONLY WAY/RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO

初回生産限定盤(CD+DVD):TFCC-89614 ¥1,667+税
通常盤(CD):TFCC-89615 ¥1,111+税




7inch vinyl
ラストダンスfeaturing ILL-BOSSTINO (THA BLUE HERB)/守破離 featuring KO (SLANG)
4月12日リリース
初回生産限定盤(7inch):TFKC-38028 ¥1,000+税

BRAHMAN TOUR 2017「戴天」
4/12(水)神奈川・横浜 BAY HALL
4/15(土)愛媛・松山 W Studio Red
4/16(日)香川・高松 festhalle
4/21(金)福井・響のホール
4/22(土)富山・CLUB MAIRO
4/24(月)長野・松本 Sound Hall aC
4/27(木)愛知・名古屋 DIAMOND HALL 18:30
5/20(土)福岡・DRUM LOGOS
5/21(日)山口・周南 RISING HALL
5/25(木)滋賀・U STONE
5/27(土)大阪・Namba HATCH
6/06(火)宮城・仙台 Rensa
6/07(水)岩手・盛岡 CLUB CHANGE WAVE
6/15(木)東京・新木場 STUDIO COAST

BRAHMAN
http://brahman-tc.com

TBHR [THA BLUE HERB RECORDINGS]
http://www.tbhr.co.jp

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