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Steve Aoki

August 17,2017

EDMのトップDJ/プロデューサーがヒップホップ・アーティストとコラボしたアルバムを発表

From FLJ ISSUE 55(07.31.2017)

EDMのトップDJ/プロデューサーであるスティーヴ・アオキが、2016年3月リリースの『ネオン・フューチャー・オデッセイ』以来、約1年半ぶりとなる新作『スティーヴ・アオキ・プレゼンツ・コロニー』を7月21日にリリースした。このアルバムは、何と全編がヒップホップ・アルバム! 客演はというと、リル・ウージー・ヴァート、2チェインズ、リル・ヨッティ、ミーゴズ、アイラヴマコーネン、ボク・ネロ、グッチ・メイン、T・ペイン、リッチ・ザ・キッド、ワーレイ、ジミー・オクトーバー、ソニー・ディジタルといった今をときめく新世代ラッパーのトップ・エリートばかりで超豪華。そしてまさかのMa$e(メイス)! まずは本人のヒップホップとの関わりから聞いてみた。

FLJ ティーンの時はハードコア、パンクが好きだったと思いますが、そもそもヒップホップはどの辺を好んで聴いていましたか?
スティーヴ 今言ってもらった通り、僕は10代の時、ハードコア、パンクにハマってたし、それが僕にとって、音楽イコール、ライフスタイルになった初めての体験だった。でもそれ以前に、実はイージー・Eの『Eazy-Duz-It』とN.W.A.の『ストレイト・アウタ・コンプトン』を聴きまくってたことがあるんだ。当時まだ小学生で、歌詞を全曲書き出したほど好きだった。僕は郊外のニューポート・ビーチに住んでいたキッズだったから、Holy shit! 僕の住んでるところから1時間しか離れていない都会は、こことは真逆な世界なんだ!って思っていたよ。そういうラップを聴いてると、ストーリーが目に浮かぶんだ。真実かどうかは別にしてね。聴いてると、自分が彼らになりきって、彼らと同じ気持ちになってしまうんだ。

FLJ さすがにジェリー・カールには憧れなかったんですね。
スティーヴ うちの親父(ロッキー青木)がジェリー・カールだったからね(笑)。でも、他にもドクター・ドレー、アイス・キューブを始め、ウエストコースト・ヒップホップが好きだった。ノトーリアス・B.I.G.も聴いてたけどね。

FLJ 今回『KOLONY』のプロジェクトを始めた背景、アイデアは?
スティーヴ ヒップホップは今回初めてやったわけじゃないんだ。以前からリミックスを始め、いろいろ音も作ってきている。キッド・カディの「Persuit Of Happiness」のリミックスとかね。ドレイクの「Forever」のリミックスではエミネム、カニエ・ウェスト、リル・ウェインもフィーチャーして、あれはクレイジーだった。あと、ウィル・アイ・アムとはシングル「Born To Get Wild」を一緒にやっているし。それで、『KOLONY』のアイデアは何年もためてきたものなんだ。

FLJ 『KOLONY』のきっかけは何だったんですか?
スティーヴ リル・ウージー・ヴァートと曲を作り始めたのがきっかけだね。『KOLONY』のきっかけとして、ウージーの名前を挙げておかないと。ウージーはアトランタなんだけど、僕のLAのスタジオに来てもらった。この曲は、最初はEDMのビートだったんだ。ウージーに「この
曲、このドロップを聴いてよ。ドープでしょ」って言っても、レコーディング・ブースの中の彼には響かない。ビッグ・ドロップもEDMのお約束も通用しなかったんだ。それでセッションのやり方を変えたよ。ウージーが自分らしくやれるように、僕は彼に全体像を見せた。彼が自由にできるスペースを与えて、そこでクリエイティヴになってもらいたかったんだ。フックとアイデアはウージーが考えた。彼の頭の中から出てきたものはヤバかったよ。あんな経験はなかったな。今回の制作の中でも忘れられないセッションになったね。だって、1人のアーティストと1週間ずっと制作をやってたんだよ。そのセッションから出てきたアイデアが曲として形になったんだ。そこから僕は制作のやり方を変えたよ。

FLJ EDMの制作とヒップホップ・アーティストとの制作は違っていたんですね。
スティーヴ そうなんだ。例えば、客演のヴォーカリストと仕事する時って、完全にプロデュースし終えた曲を持っていくんだ。でもそうなる
と、そのヴォーカリストが何か違うことをやる自由はなくなってしまう。それが今回わかったから、今後はそういうやり方は二度としないことにしたんだ。映画に置き換えてみれば、僕が監督で、アーティストは主演俳優ってことになるわけだから。

FLJ 『KOLONY』というアルバム・タイトルはどのようにして思いついたんですか?
スティーヴ ヒップホップ・アーティストって、スタジオにクルーを引き連れてくるんだよ。例えば、客演のポップ・シンガーと一緒に制作する時だと、スタジオの中はたいてい僕とそのシンガーだけしかいない。『ネオン・フューチャー』はそんな感じで作ったよ。だけど今回は、スタジオの中に人がたくさんいる。もうまるで違う環境なんだ。それで思ったんだよ。「このスクワッドはコロニー(意味としては、同好者仲間の生活共同体)みたいだな」と思って。そこにはスゴいエネルギーを感じたんだ。そこにいる人たちから流れてくるエネルギーがスゴくて。だからフィーリングも違えば、ヴァイブスもエネルギーも全く違う。そのエネルギーは集団の人間によって生まれたものだから。それで僕もその集団の人間のコラボレーションと精神が大好きになったんだ。だからそのコロニーがこのアルバムを作ったんだと言えるね。コロニーのスペルを「COLONY」ではなく「KOLONY」にしたのは、この言葉を自分のものにしたかったからなんだ。僕の名前もAOKIで、「K」が入っているしね。

FLJ 『KOLONY』は曲ごとにいろいろなヒップホップ・アーティストを客演に迎えていますが、今の話からすると、1曲1
曲、それぞれのアーティストに合ったやり方でコラボして作っていった感じですか?

スティーヴ そうだね。ミーゴズ、リル・ヨッティとやった「Night Call」は、もう彼らそのものだったよ。ビートは僕の家で作ったんだけど、アイデアはアトランタで考えた。DIM MAKのショーでアトランタに飛んで、ウージーも一緒だったんだ。ショーの後にミーゴズのスタジオに行って、この曲を作り始めたよ。曲のアイデアはミーゴズのクエヴォが出してきた。そこにヨッティがやって来て、「ヨッティ、この曲には参加した方がいいぞ」って言われて、クエヴォの後にヴォーカル・ブースに入ることになったよ。その後にオフセットと話して、彼は他のスタジオで録って乗せてきた。それで最後に入ってきたのがテイクオフだった。あと、グッチ・メインとT・ペインが参加した曲「Lit」なんだけど、T・ペインの話が面白いんだ。僕はラスベガスの自宅にいて、午後3時だった。友達もたくさん集まっていて、トラヴィス・バーカーも家族で来ていた。そこでT・ペインにFaceTimeをしたんだけど、寝ていたみたいで出なくて。何度目かにやっと出て。「何でそんなに眠そうなんだ?」って聞いたら、「昨夜ガッツリ遊んでね」って言うんだ。「ベガスにいるならうちに来なよ。聴かせたい曲があるんだ」。それでT・ペインがうちに来て。「最初にやってもらいたいことがあるんだ。プールに飛び込んでくれ」って言ったよ。それって、僕の家に来た時に必ずやってもらう儀式なんだ。高さは20フィート(60m)くらいかな。屋上からプールに飛び込んでもらうんだ。それをT・ペインはやってくれたよ(笑)。


7月8日、パリのディズニーランドが初めて開催したEDMのイベント、Electrolandでのスティーヴ

FLJ 共演した中で一番ヤバかったのはどの曲ですか?
スティーヴ メイスとやった「4,000,000」だね。メイスはレジェンドだよ。ヒップホップの宝だ。メイスと一緒にやれたのは大きかったよ! メイスを探し出すのに何年もかかったんだ。みんなメイスがどこで何をしてるのか知らなくてね。それである時、ヴァージニアでネプチューンズのチャド・ヒューゴと一緒だったんだ。そしたらチャドの友達がメイスの知り合いだって言うんだ。「メイスとつなげてくれないか?」って頼んだら、それが実現して。メイスと話して、アイデアを出して、ヴァイブスを受け取ったんだ。メイスは自分のスタジオでヴォーカルを乗せて送ってくれたよ。メイスのラップはヤバかったね。20年前と同じに聴こえるんだよ。でもこの曲が完成するのには2年かかってしまった。僕がビートを彼に送ったのは2年前だったんだ。しかも、この曲は10ヴァージョンも作って、最後にできたヴァージョンをやっと『KOLONY』に入れることができたんだ。この曲はファンキーなサックスのリードも入ってるよ。パラーパラーパー♫っていう感じでね。これもメイスのために入れたんだ。アルバムの中でも一番面白いサウンドになったよ。

FLJ 他の曲はみんな現役の人気ラッパーばかりなのに、メイスだけレジェンドっていうのがヤバいです。
スティーヴ あと、プロデューサーのソニー・ディジタルが『KOLONY』では歌っているのがヤバいよ。ソニーとやった「Thank You Very Much」はアルバムの最後を飾る曲なんだ。スゴく内省的な曲だし、ヘヴィ・ドロップの曲じゃないんだ。この曲はアルバムの中でも特にお気に入りだね。僕はソニーをヴォーカリストとしてブレイクさせたいと願っているから、この曲の制作はエキサイティングだったね。彼の声、彼の歌詞はぞくっとさせられるものがあるし、本当ヤバいよ。カニエ・ウエストがラップで出てきた時みたいに、彼をヴォーカリストとして送り出せたらいいなと思うね。

FLJ 今回、EDMとヒップホップを融合させようとして意識したことはありますか?
スティーヴ 自分がEDMの人間であることは間違いない。否定なんてできないよ。だけど、僕は境界線を超えるのが好きだし、いろいろ異なるジャンルのすべてと仕事をするのが大好きなんだ。スタジオにいる時の僕は、自分のことをEDMのプロデューサーだとは思わない。自分のことはただ単にプロデューサーだと思うだけだ。僕がやりたいのは、アーティストと一緒に、できる限り最高の音楽を作りたいということだけ。最も重要なことは、音楽ジャンルなんて関係ないってことなんだ。エネルギーこそが最も重要な要素で、そこからトレンド、カルチャー、ジャンル、スタイルが生まれる。例えばライヴでウージーとトラヴィス・スコットが派手に登場すると、観客は興奮して、もうその盛り上がりは、ハードコアのショーとかEDPのドロップ満載のショーと変わらなくなるよね。みんなが惹かれるのはそういうエネルギーなんだ。みんながそのエネルギーの一部になりたがるし、実際みんながその一部になれるんだ。

FLJ 『KOLONY』は今回のアルバムだけではなく、これからも続いていくものなんでしょうか?
スティーヴ 僕は今後もヒップホップ・アーティストたちとも仕事をしていきたいし、『KOLONY』のコンセプト作りを手伝ってくれるアーティストたちとも仕事をしていきたい。『KOLONY』は今も続いている感じだね。もう僕の乗り物っていう感じなんだ。『KOLONY』はブランドにしていきたいと思っている。それで単なるアルバム以上のものにしていきたい。

FLJ 音楽活動以外の方はどうですか?
スティーヴ いろんなプロジェクトが進行中だよ。アパレル・ブランドのDIM MAKに関しては、3日前にNYでブロック・パーティをやったん
だ。Build Seriesの協力の下、イースト4th&ブロードウェイの通りを封鎖して行ったんだ。SIM MAKの2018年春夏のコレクション「Paradise Found」のランウェイ・ショーもやったし、同時にアルバム『KOLONY』のライヴも行ったんだ。DIM MAKの今回のシーズン・テーマは、今僕たちが住んでいるカオスと混乱に満ちた世界の中で希望と楽園を見つけることなんだ。自由の地、勇者の故郷。今のアメリカに失われてしまったものさ。

FLJ 今年の9月に開催されるULTRA Japan 2017には初出演で来日しますが、日本への思いを聞かせてください。
スティーヴ 日本には本当にたくさんの友人がいるからなあ。珍しく最近しばらく日本に行けてないよね。世界中で日本が一番スゴいと思う。僕自身日本人の血が通ってるし、日本はすべてがヤバいんだ。食べ物、カルチャー、ファッション、人……。ライヴももちろん最高だし。日本のすべてが好きだね。ただ街の中を歩いてるだけでも最高なんだ。日本人は自分たちのカルチャーを作ってきたし、お互いをよく理解し合っている。それにみんなとことんやるよね。何かを好きになるととことん好きになる。今もCDがよく売れてる数少ない国だし、ライヴの時もスゴい熱狂で応えてくれる。だからULTRA Japan 2017はスゴく楽しみにしているよ。『KOLONY』の新しい音楽も披露できるからね。




『スティーヴ・アオキ・プレゼンツ・コロニー』
デジタル配信:7月21日発売
国内盤CD:8月23日発売予定

1 Steve Aoki “Kolony Anthem (feat. ILOVEMAKONNEN & Bok Nero)”
2 Steve Aoki & Yellow Claw “Lit (feat. Gucci Mane and T-Pain)”
3 Steve Aoki & DVBBS “Without U (feat. 2 Chainz)”
4 Steve Aoki “How Else (feat. ILOVEMAKONNEN and Rich The Kid)”
5 Steve Aoki “Been Ballin (feat. Lil Uzi Vert)”
6 Steve Aoki “Night Call (feat. Migos and Lil Yachty)”
7 Steve Aoki & Bad Royale “4,000,000 (feat. Ma$e & Big Gigantic)”
8 Steve Aoki “If I Told You That I Love You (feat. Wale)”
9 Steve Aoki & Bad Royale “No Time (feat. Jimmy October)”
10 Steve Aoki & Ricky Remedy “Thank You Very Much (feat. Sonny Digital)”

iTunes予約注文URL
https://itunes.apple.com/jp/album/id1247060971?app=itunes&ls=1 
※iTunes Storeは、Apple Inc.の商標です。


来日情報
ULTRA JAPAN 2017 
日程: 2017年9月16日(土)、17日(日)、18日(月・祝)
会場: TOKYO ODAIBA ULTRA PARK(お台場ULTRA JAPAN特設会場 / 江東区青海)
詳細: http://ultrajapan.jp/ 



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