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PORTER ROBINSON & MADEON

April 21,2017

コラボレーション楽曲「Shelter」のツアーで来日を果たした二人の新世代クリエイター

PHOTO: Ohno, Masanori Naruse (Live)

From ISSUE 53 (03.30.2017)

2013年リリースのフル・アルバム『ワールズ』が全米チャート初登場トップ20位入りを果たしたアメリカ人アーティストのポーター・ロビンソン。一方、2013年リリースのデビュー・アルバム『アドヴェンチャー』が全米エレクトロニック/ダンス・アルバム・チャートで1位を獲得したフランス人アーティストのマデオン。ネットを通じて知り合ったこの二人が、良き友人かつ良きライバルとして、初のコラボレーション楽曲「Shelter」を昨年8月に発表し、10月にはポーター自ら原案・原作を手がけ、A-1 Picturesが制作をした全編アニメーションのミュージック・ビデオも公開した。「シェルター・ライヴ・ツアー」と銘打ったジョイント・ツアーも行われ、今年2月21日には日本に上陸して東京 Zepp DiverCityでそのライヴを披露した。ライヴ直前の二人をキャッチして話を聞いてみた。

FLJ 日本はどう?
ポーター 食べ物が最高だね。
マデオン ポーターの方が僕よりも多く日本に来ているから、食事に関してはポーターを信頼してるよ。この前も渋谷で立ち食い寿司に連れてってもらって、あれは僕の人生で最高の食の体験だった。
ポーター 魚がし日本一っていうチェーン店なんだけどね。寿司は好きでいろいろ行くんだけど、そこはリピーターになってる。

FLJ 二人は10代の時にネットを通して知り合ったみたいだけど、どのような出会いだったの?
マデオン ポーターとは10年前にネットのミュージック・プロダクション・フォーラムで知り合ったんだけど、当時はまだそれほど若い音楽プロデューサーっていなかったんだ。制作ツールもあまりなかったしね。趣味としても珍しいものだった。特にエレクトロニック・ミュージックというジャンルではね。今ほど人気もなかった。僕はヨーロッパ、ポーターはアメリカに住んでたんだけど、ネット上で繋がって意気投合したんだ。
ポーター 二人とも音楽を制作してたから、お互いに曲を送り合っていたんだ。それで、今や二人とも音楽キャリアを築き上げてる。友達付き合いも長いし、これまでコラボレーションをしてこなかったなんて不思議だねってなって。お互いの音楽は大好きだったのにさ。それでコラボ楽曲「Shelter」が生まれることになったんだ。

FLJ じゃあ「Shelter」が初のコラボになるんだ?
ポーター&マデオン イエス!

FLJ お互いどんなキャラなのか聞きたいんだけど。相手がどんな人間でどんな音楽アーティストなのか語ってもらえる?
ポーター みんなが知らないマデオンのキャラは、秘密が多いところかな。隠れメッセージとかね。自分のアルファベットも持ってるし、そういうのをミュージック・ビデオでもたくさん使ってるんだ。
マデオン ポーターは思慮深いところがキャラかな。それで素晴らしいライヴ・パフォーマーなんだ。プライベートではスゴいユーモアの持ち主だし、良い印象を残すよね。
ポーター 僕とマデオンは個人的にスゴくウマが合うんだ。音楽だけじゃなく、ユーモア・センスもそうだし、カルチャーについても、同じ部屋にいた他の人がまるでわからないことでも二人はずっと話していられるんだ。ネット・カルチャーから哲学、コメディ、人間の社会的相互作用といった話題でね。
マデオン 共通することもあれば、全く違う部分もたくさんあるよ。
ポーター そういうことも含めてお互いをよくわかり合っているんだ。共通点、相違点ともにね。長い間、お互いから影響を受けてきたんだ。

FLJ 「Shelter」でのコラボはどうだったの? スムーズに行ったのかな? それとも制作中にいろんな発見やチャレンジがあったの?
マデオン スゴく対話しながら作っていくようなプロセスだったね。いつもは音楽の話となるとスゴくいろいろ話すんだけど、「Shelter」の制作はスゴく早く、楽々と進んだ感じだった。
ポーター 僕たち二人とも、音楽となるとスゴく分析したがるタイプなんだけど、マデオンが言ったように、「対話しながら」作っていった感じなんだ。ある意味、話し合いながらすべての要素を考えるのって時間がかかるものなんだけど、僕たちの場合、曲の中の問題を解決するのに、二人の異なる分析と二人の異なるアプローチがあるわけだから、二人で「Shelter」をどういうものにしていくのか、そこが非常に明確だったんだ。アプローチ自体、一人の時より2倍たくさんあったからね。


左から、マデオン、ポーター・ロビンソン

FLJ 「Shelter」のストーリー、世界観はどのように考えて組み立てていったの? ポーターはいつも音楽にストーリーとヴィジュアルをイメージさせるアプローチをしているよね。
ポーター 「Shelter」の歌詞はマデオンが中心になって考えたんだ。歌詞のメインのテーマは、家族の中にある愛、世代から世代へと繋ぐことなんだ。
マデオン この曲にはステージが二つあって。最初は曲のインストゥルメンタルから入った。そこで僕らの持っている感性を共有したし、音楽の共通点を確認した。二人の音楽スタイルの完璧なコンビネーションを探していったんだ。そこから歌詞を暫定的に作ったんだ。より曖昧で、より抽象的なものをね。二つ目のステージは、腰を下ろして歌詞を考えることだった。そこでテーマも考えた。そうやって曲は形になっていったんだ。

FLJ 「Shelter」の映像は、日本のアニメーション・スタジオのA-1 Picturesとのコラボなんだけど、アニメ好きのポーターにとっては夢が叶ったような仕事だったでしょ?
ポーター まさに夢が叶った感じだったね。アメリカのNetflixにアニメばかり流すCrunchyrollっていうのがあって、オリジナルのアニメを作りたいっていう話になって、僕に相談が来たんだ。それで僕が書いたストーリーをA-1 Picturesが気に入ってくれて。そこからマデオンと話して、「Shelter」のショートフィルムを作ろうっていう話になったんだ。
マデオン 映像に関しては僕は関わっていないんだ。これは二つの別のプロジェクトなんでね。でも、タイミングも同じだったし、テーマもスゴく近かった。家族と世代を繋ぐというテーマは映像でも表現されているからね。それにどこかのプロデューサーに「Shelter」の映像を頼むよりも、ポーターに作ってもらった方がいいしね。より曲の本質に近いものができるから。

FLJ ポーターは前にも話を聞いたんだけど、日本のアニメとゲーム・ミュージックの大ファンだったわけで、それが今回音楽とアニメのコラボレーションという形になったから素晴らしいよね。
ポーター うれしいね。僕の日本にいるオタクの友達も「Shelter」の音楽、映像をスゴく気に入ってくれたよ。オタクっていうのはハードコアでなかなか認めないでしょ。だけどそういう人たちから評価されたのも僕の中では大きかったな。

FLJ しかも自分の好きな日本のカルチャーを世界に向けて紹介したのも大きいと思うんだ。
ポーター そうなんだ。アメリカでもスゴい人気なんだよ。僕が大好きな日本のカルチャーをたくさんの人たちと共有できたのはうれしかったね。

FLJ マデオンも日本のカルチャーは好きなの?
マデオン もちろん。僕はポーターほどアニメは詳しくないんだけど、漫画はいっぱい読んできた。僕の母国のフランスは日本のカルチャーが大人気だからね。漫画の売り上げは日本に次いで世界第2位なんだ。人口が全然多いアメリカよりも上位なんだ。フランスには漫画の専門チャンネルもあるくらいだから、入っていきやすいんだ。それに僕たち二人とも日本の音楽から大きな影響を受けてるんだ。
ポーター マデオンの初期の曲「Cut The Kid」を聴くと中田ヤスタカを彷彿とさせるんだマデオンは日本からの影響を僕よりも早くから音楽に取り入れてたね。
マデオン 日本からの影響を正確さに表現するつもりはないんだけど、感性みたいなものは表現しているよ。

FLJ 「Shelter」をリリースした後に、ツアーに出てるよね。そこでお互いの曲をリミックスしたりしてるんだけど、音楽的にはどういうものを表現しようと思ったの?
マデオン 「Shelter」を作る時に、二人が好きなもの、共通するものについて話し合ったんだけど、その時に自分たちのこれまでに作ってきた音楽を振り返ってみたんだ。そこからスゴくアイデアが湧いてきてね。どうやって結びつけようかとか、オリジナルからどうやって新しいものを生み出そうかとか。そういう面を考えてくのがスゴくエキサイティングで。当初はすぐにライヴをやろうなんて発想はなかったんだけど、曲作りをしてういくうちに、アイデアがより鮮明になって、ライヴのイメージも鮮明になっていったんだ。それですべての曲の新しいヴァージョンを考えることになった。ライヴの中には、すでに存在する曲を2曲マッシュアップするようなアプローチもあるし、マデオンの曲のポーターのリミックスもあるし、ポーターの曲のマデオンのリミックスもある。だから、ライヴでオリジナルの曲をそのままプレイしているものは一つもないよ。すべて新しいヴァージョンでプレイしてるんだ。

FLJ ライヴのヴィジュアルもカッコいいよね。
ポーター 基本的に僕とマデオンでどういうヴィジュアルが好みなのかその共通点を突き詰めていった感じだね。
マデオン 一人でプレイしている時と違って、二人でやってるから、もっとインタラクティヴだよ。バンドみたいな感じだね。二人ともプレイ中にお互いを見るし、二人で一緒になって楽しむ。同時にいろんなものをショーケースしている感じだよ。パフォーマンスしている僕たち、僕たちがステージ上でやってること、楽器の演奏、二人のインタラクティヴなやり取り。それを同時に見せてるんだ。
ポーター ステージ上で歌うし、ドラムを叩くし、キーボードを弾く。お客さんにはそこも観てほしいし、同時に映像も観てほしいね。

FLJ これまでのライヴでベストは?
ポーター サンフランシスコとLAのライヴはかなりスペシャルなものになったね。
マデオン 僕は二つあるんだけど、まずアトランタは最初のライヴだったから思い出深い。スゴく頑張ったし、どうなるのかもわからなかった。だけどライヴ自体はスゴく良くて、興奮したと同時に解放もされた。もう一つは地元のパリでやったライヴだね。家族も来たし、感動的だった。
ポーター アメリカでもヨーロッパでも最高のライヴができたね。日本もスゴく楽しみにしている。アジアで「Shelter」ツアーをやるのは日本だけだからね。日本が重要なのは、僕は日本のカルチャーに影響を受けたわけだし、「Shelter」の映像は僕が日本に来て制作したものだし、日本のファンが大好きだっていうのも大きい。アメリカのツアーに来てくれた日本のファンも多かったんだよ。
マデオン 日本でのライヴは最初からやりたかったことだからね。

FLJ 4月にはコーチェラ・フェスティバルにも出演するよね。どうするの?
ポーター ベストを尽くします!(笑)
マデオン コーチェラでのライヴは「Shelter」ツアーのファイナルでもあるんだ。コーチェラへの出演は3度目で、最初はDJ、2度目はライヴ、それで3度目は二人でのライヴなんだ。楽しみだよ。アーティストとしての成長も見せてきたことになるからね。

FLJ 今後二人で新たなコラボをやる予定はある?
ポーター ないね。「Shelter」とそのツアーはこの瞬間だけのものにしておきたいんだ。「Shelter」は未来に向けてのものではなく、過去のある時点のものなんだ。これは二人の長い間の友情のお祝いみたいなものだから。だからこのアイデアをずっと引きずってやりたくはないんだ。
マデオン 僕たち二人は基本ソロ・アーティストだから、「Shelter」は短期間のプロジェクトとして楽しみたかったんだ。
ポーター だから観てくれる人たちにもスペシャルなものであってほしいんだ。
マデオン 「Shelter」は二人がお互いにスゴくインスピレーションを与え合った時のものとして取っておきたい。スゴく良いエネルギーをお互いからもらったからね。

FLJ 最後に日本の読者に “日本語で” メッセージをお願いします(笑)。
マデオン こんにちわ。マデオンです。ありがとうございました(笑)。
ポーター ちゃんとメッセージを言いたいので、英語で話していいかな?(笑) 日本のみなさん、サポートしてくれて本当に感謝してます。日本は僕にとってスゴく重要な場所なので、ありがたいです。




『シェルター:コンプリート・エディション』
(ソニーミュージック)
日本独自企画/完全生産限定盤
2月15日リリース。3,000円
CD+Blu-ray+グッズ(フラッグ)
豪華ブックレット(歌詞対訳/ミュージック・ビデオ解説付)

「シェルター」
配信限定シングル。iTunesにて単曲配信中

PORTER ROBINSON
http://porterrobinson.com

MADEON
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