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NITROPOLIS vol.2 PRESENTED BY CROSSFAITH

July 31,2019

Crossfaith主催、音楽&カルチャーの異種格闘イベント

From FLJ ISSUE 67(7.30.2019)

PHOTO: cazrowAoki (Live)

カッコいい音楽は理屈なくカッコいい。そこにはジャンル、国、世代のしばりなんて必要ないはずだ。そして、リアルな音楽にはカルチャーがある。そこの部分を大切にするバンド、Crossfaithがまさにそこの部分を問うイベント「NITROPOLIS」のvol.2を、6月19日に大阪・味園ユニバース、21、22日に恵比寿リキッドルームで開催した。FLJでは最終日、オールナイト・イベントとなった22日のオープン前に行った、主催者Crossfaithとボストン出身のハードコア・バンドvein、アリゾナのヒップホップ・グループInjury Reserveの対談、そして大阪のラッパーJin Doggのインタビューを紹介する。

Crossfaith × vein × Injury Reserve スペシャル対談

左から、Hiro(Crossfaith)、リッチー・ウィズ・ア・T(Injury Reserve)、Koie(Crossfaith)、ステファ・J. グロッグズ(Injury Reserve)、ジェレミー・マーティン(vein)、パーカー・コーリー(Injury Reserve)、アンソニー・ディディオ(vein)

FLJ NITROPOLIS、すでに2日ショーを終えていますが、どうですか?
アンソニー もう信じられないの一言だね。今回俺たちにとっては初めての日本なんだ。Injury Reserveにとっても初めての日本だよね。ショーは完全にクレイジーだし、客もクレイジーだし、Crossfaithは俺たち2つのバンドのことをスゴく面倒を見てくれてる。友情、リスペクト、もてなしという意味では最高だよ。おかげで最高の時間を過ごしてる。
リッチー 俺も全く同意見だね。ライヴでは全く異なるカテゴリーが存在してるんだけど、バンド同士の親交も深めてる。今までこんなにパーソナルで感じるツアーをやったことがないよ。他のバンドに対してもすぐにリスペクトが生まれたしね。まるで遠く離れて会ったことがなかった家族と一緒にいるみたいな感じさ。それほどすぐにつながりを感じたんだよ。veinと一緒にやったのも初めてだし。とにかく普通じゃないんだ。もちろん一緒にライヴをやれば交流はあるんだけど、サウンドチェックを見て「良いセットだね」なんて言うぐらいさ。今回はショーがヤバいっていうこと以上の価値があるね。Crossfaithがこういう風にやってることって、日本の音楽シーンの未来に向けて捧げている感じがするんだよ。そこの一部に俺たちがなれてるのだとしたら、本当に素晴らしいな。だって、ここまでやる必要なんてないんだよ。でもそれくらいパワフルなんだ。
Hiro それこそが俺たちの狙いだし、NITROPOLISというイベントをやる意味でもあるんだ。Injury Reserveはジャンル的に言えばヒップホップなんだけど、ヒップホップのメインストリームに反逆してるよね。俺はそこにパンク精神を感じるし、veinにもそういう反逆精神を感じる。日本の音楽シーンにおいて、ミュージシャンと観客の距離感って離れたままだから、ミュージシャンはただ音楽をやってればいいってなりがちなんだ。でもそれってスゴく退屈なんだよ。
リッチー だからこそこういう場を作ったんだね。CrossfaithのファンはCrossfaithが何をやろうとも信頼してるよね。それってなかなかできないことだから。

FLJ みなさんにとって音楽は単なる音楽ではなく、カルチャーであり生き様であると思うんです。自分たちの音楽のバックグラウンドにあるもの、音楽をやるモチベーションやインスピレーションは何でしょうか?
ジェレミー 俺たちにとって重要なカルチャーはビデオゲームだね。ゲームの環境、そして色さえもがそのゲームのヴァイブスを決める。ビデオゲームのサウンドトラックも大きなインスピレーションになるんだ。それは映画も同じことで、映像が音楽とともに流れていくよね。今何が同時進行してるのかを目で捉えるわけだし、そこで俺たちは視覚的効果を得るわけだ。ゲームのある部分を考えてると同時に、別の部分では音楽がどんどん流れていく。そういうヴァイブスのことさ。音楽を作る時にはそうやって視覚化しながら作ることが多いよ。
アンソニー ビデオゲームも含めて日本の文化は俺たちのバンドに大きな影響を与えてるよ。日本のホラー映画からの影響も大きい。俺たちはそういうものを通して、自分たちの美学を見出していったようなものだから。音楽だけではなく、映像にしても、アートワークにしても、そういうフィルターを通して、自分たちならではのものを追求していったんだ。
Koie スゴくわかるな。veinの音楽には恐ろしさとカオスが存在するし、日本のホラー映画の要素も感じるよ。
アンソニー 俺たちは自分たちの美学を見出し、その美学がサウンドに影響を与えてる。逆もしかりで、美学とサウンドが繰り返し影響を与え合ってるんだ。

FLJ そんな影響を受けたveinが、今こうして日本にいるわけですけど、気持ちは?
アンソニー&ジェレミー ハンパないよ!!
ジェレミー 10歳の時から日本に来るのが夢だったから。しかも、音楽が俺を日本まで連れてきてくれたんだよ。それで友達までできたんだ。この経験はプライスレスだね。
アンソニー みんなと一緒にいることも最高なんだ。もっとツアーが続けばいいなって思うくらいさ。
リッチー 普通は自分のバンドの客を相手にライヴをやることが多いわけだけど、今回は違うよね。veinが初日にやってるライヴを観て、彼らにはこのイベントに出る資格があるなって思ったよ。それで俺自身も目が覚めたんだ。俺たちは今の音楽シーンとスゴく面白いつながりを持ってる。そこで俺たちはケンカ腰でいることが多かったりするんだ。ちゃんと観たり聴いたりしてもらえていないような気がするからね。だから、ファック・ユーって感じで臨むし、そこにはきちんとしたリスペクトやショーマンシップがなかったりする。もちろんケンカ腰でいることで救いになってる部分もあるよ。だから、自分たちにとっての音楽とは何かっていうことになると、スポーツだとか競争みたいに思ってる部分は大きいし、その競争を楽しんでるようなところもあるね。俺たちはヒップホップをそういうものだと見てるところもあるし。
パーカー ヒップホップがスポーツみたいなところって、誰が1位になって、どれだけ売ってっていう、数字の競争もあるから。
リッチー 俺たちが言うスポーツは数字の競争じゃないな。競争を楽しむところだな。
パーカー 他のヤツを見て、「ファック!」って言う感じさ。
リッチー JPEGMAFIAが去年出したアルバムがヤバかった時とかそうだな。他のヤバいヤツを見て、「ファック!」って言うのはそういう感じさ。もうまるで宇宙人みたいで、ボブ・マーリーが降りてくるような瞬間だから。自分が大好きなジャンルでJPEGMAFIAがやったようなことを見ると、スゴく刺激を受けるし、そういうことが俺たちを前進させることになる。ライヴでも、本当に素晴らしいものを観た観客が、バンドにすべてを捧げてもいいような気持ちになってるのを見ると、「ファック!」ってなるよ。「あなたがここにいなかったら、自分は今ここにいない」。そう思わせられるのが、このイベントに出る資格があるってことを意味するんだよ。
Koie 何か照れるな(笑)。
Hiro veinもInjury Reserveも、自分たちの音楽ジャンルの中で他のアーティストとは異なるスゴいオリジナルな表現をしてるよね。斬新かつクリエイティヴなものを作るために、どのようなアプローチをしてる?
パーカー 根本にあるのはやっぱり競争意識かな。自らハードルを上げてるよ。それで自分たちのやってることが定着し始めたら、さらに違うことをやるように自分たちに課してる。俺たちはこの前ニュー・アルバムを出したばかりなんだけど、今はもう次のことを考えてるし、メンバー同士でいろいろとぶつけ合ってるよ。新しいテリトリーを見つけようとしてるのかな。これってADD(注意欠陥障害)だね。常にあちこち飛び回ってる感じだから。
リッチー 本当その通りだね。俺たち完全にコミットすることってないんだよ。常にお互い働きかけ合ってる感じなんだ。だから、こう始まって、こうやって、こうまとめる、みたいなアプローチのパターンってないんだ。ヒップホップのほとんどはグループの中にプロデューサーがいないから、ビートメイカーがビートを提供して、そこにラッパーがラップを乗せるだけっていうのが多い。その点では俺たちは普通のヒップホップとは全く違うね。ビートもヴォーカルもプロダクションもどれを優先するとかないから、サイクルみたいになって、すべてが合わさった時に曲が出来るんだ。すべての要素に対して感情的なリアクションをしながら作ってるよ。だからその分計算して作る部分は少なくなってきたね。作曲、アレンジといったプロセスに時間をかけると、クリエイティヴィティの妨げになるから。
Koie テーブルの上にいろんなものが乗っかってるから、プロセスを経ないことで、ただもうそれを手に入れようっていうことだよね。
リッチー だからどうなるのか全くわからないんだ。
Hiro 今のストリート・ファッションを皮肉った曲「Jawbreaker (Feat. Rico Nasty & Pro Teens)」のアイデアはどこから生まれたの?
リッチー Lil Baby x Gunnaの「Drip Too Hard」っていう曲があるんだけど、それは基本的にファッションについての歌なんだ。それで俺たちもファッションについての歌を作ろうってなった時に、政治的なものにしよう、面白おかしいものにしようとかって、普段の会話で話すような感じで話し合って。俺たちらしくちょっとふざけようってなったんだ。この曲にも競争意識は入ってて、それは「俺たちの方がおまえよりもおしゃれに着こなしてる」っていうことなんだ。それで今ファッション業界で何が起きてるのかも浮き彫りになるわけだ。これが俺たちのやり方なんだよ。

FLJ veinはバンドとしてどのようなアプローチをしていますか?
アンソニー 今話してたことにはスゴく共感を覚えるね。ヴィジョンがあって、すべてを見渡した上で、自分が何をやりたいかというゴールがあるわけだよね。俺たちの場合、その取っかかりはさっきジェレミーが言ったように、イメージとつながったサウンドの持つ全体のヴァイブスで、そこから感情の青写真を描いていくわけだ。だけど名曲が生まれるのは、どちらかと言うと無知から生まれることが多くて、それって美しい事故みたいなものなんだ。期待してない時にこそ最高のものが出来るんだよ。一つ何か変なものが生まれると、すべてのドアが開いてしまうんだ。俺たちは1年前の今日、1stアルバムをリリースして、今また新しいアルバム用に新曲を書いてて、1曲作ったんだけど、もしこの曲が他の曲と合わないのであれば、この曲こそが次のアルバムを生む種のようなものになるんじゃないかと思ってるんだ。今、俺は頭の中でアイデアを聞いて、どういうサウンドにしたいのか考えてる。それがどのように形になるのかはわかってないんだけど。でもそういうことをやりすぎたり、わかりすぎたりしてると、上手くいかないことが多いんだよ。それをいじくって、ちょっと待ってみれば、そのうち何かが起こるわけだから。
リッチー 壁に向かって投げつけてみればいいんだ。新しい曲を作る時にスゴく重要なのは、「俺たちにはまだ言うべきことがあるのか?」っていうことなんだ。365日音楽を作ってる人も多いんだけれど、俺たちの曲は経験に刺激されて作るものが多いから、いつも作ってるわけじゃないんだ。だから今回のツアーみたいに、いろいろな経験ができたり、歩いたり、しゃべったり、おばあちゃんの言ってたことを話してたりすると、そういう中から耳にした言葉がつながって、自分の中で新たな意味を持つようになったりするんだ。それで自分自身に問うわけだ。「俺たちにはまだ言うべきことがあるのか?」って。これってスゴく素晴らしいフィーリングなんだよ。一つの単語でも、一つの文章でもいいんだ。そこから始まるのが面白いんだ。
アンソニー 俺も同じだね。決まったパターンなんてないし、フレーズ、単語、アイデアはランダムだし、あるものは他のものよりもつながってたりする。だけど結局はトントン拍子で形になっていくものなんだ。朝起きて、さあ曲を書こうと思って机に向かっても上手くはいかないよ。期待してない時にこそ出てくるものなんだ。夜中の3時にアイデアが浮かんだりするしね。だから流れに沿って生きて、経験とか刺激があって、突然ひらめきがあって、そこで降りてくるものを信じろってことなんだ。
リッチー 他の人の曲を聴いて、いろいろ話してる時だって、ひらめきが生まれることだってあるよ。
アンソニー さっき健全な競争意識の話が出たけれど、そういうものに囲まれてることも大事だと思うんだ。例えば、自分よりもビッグなバンドと共演した時に、俺たちよりもデカい会場でプレイして、俺たちよりももっとお金を稼いで、俺たちよりもファンがたくさんいたとしても、そのバンドの演奏を観て何も感じないことだってある。俺が好きなのは、他のバンドを観てるうちに、つい自分のバンドでやりたいことを考えてしまってるような状況なんだ。
ジェレミー 昨夜のveinのライヴで、曲の間のヴォーカルのサンプリングを聴いた時、俺は自分のバンドのことを考えたよ。
アンソニー だから、ツアーで間違いないバンドや間違いない人たちと一緒じゃなかったり、間違いない環境にいなかったりしたら、嫌な気分にしかならないよ。嫌な気分は音楽にとっては良いことがないから。このツアーは今までで一番インスピレーションをもらえたツアーになったね。毎晩みんなのライヴを観て、みんなでハングアウトしてるのを見て、自分でもこういうツアーをやりたいって本気で思ったから。家に帰ったらきっと何かアイデアが生まれると思うんだ。
Koie 俺もどのバンドからもスゴいインスピレーションをもらったよ。難しい音楽の組み合わせに思えるかもしれないけれど、いざ一緒に共演したら、すべて辻褄が合うというか。俺としてはスゴく面白かったんだよね。俺もveinを観ながら自分のバンドのことを考えたよ。こういうビートをやりたい、こういうリズムをやってみたいって思ったからね。
アンソニー 間違いないね。俺もCrossfaithを観てる時に、「俺たちもこういうことをやってみたい」って思ったから。一つのセットの中でいろいろクレイジーなことが起こってるし、エナジーだってスゴくクレイジーだ。プロダクションも狂ってるし、ヴォーカルも狂ってるし、ストロボライトもヤバかった。こういう環境に身を置かなきゃいけないって思わされたね。変なまがいものに囲まれてたら、自分のクリエイティヴィティは殺されてしまうから。
Hiro 最後に、来年のNITROPOLISにオススメのバンドがあったら教えてほしいんだけど。
ジェレミー 間違いなくJPEGMAFIAだね。
リッチー まだShow Me The Bodyを呼んでないのは意外だね。
アンソニー 俺たちと同じエリア出身のバンド、Fuming Mouthはオススメだね。

Jin Dogg インタビュー

FLJ 今回NITROPOLISに出演することになったきっかけは?
Jin Dogg Crossfaithのマネージャーから連絡があって。「出たい」って即答で返事しましたね。

FLJ NITROPOLISの趣旨は、異なる音楽カルチャーのミックスであり、ジャンルの境界線を壊すことですが。
Jin Dogg 僕もそれにはめっちゃ大賛成ですね。ジャンルどうこうよりかは、カッコ良ければカッコいいっていうのは、僕も目指してるところだし。そういう人たちが集まって、めちゃ楽しいパーティにしたいなっていうのはスゴくいいなと思いますね。

FLJ Injury ReserveのメンバーもJin Doggのライヴを前の方で観ていたそうですね。
Jin Dogg veinのメンバーもめちゃ観てくれて。

FLJ 今回、Injury Reserveもveinも、他のバンドのライヴにスゴい刺激を受けて、こういうツアーは今までなかったと言っていました。
Jin Dogg 僕も全く一緒ですね。刺激は強かったです。今回、僕のライヴでハードコアのモッシュになって。ウィンドミルとか、客が客の上に乗っかるパイルオンとかもあって、マイクも取り合いになって。めっちゃヤバイなあ!!ってなって。僕、気迫に負けてもうて、めっちゃ悔しかったですよ。客が本気で。僕の歌も全部覚えてるんですよ。僕がマイク出したら、全部シャウトしてました。ホンマにヤバかったです。

FLJ Jin Doggは元々ヒップホップですけど、客がスゴいモッシュするライヴをやってきましたよね。
Jin Dogg それ、余裕で超えてましたね。でももっと来てほしかったです。まだ知らない人の方が多かったから。でもウィンドミルが起きた瞬間、めっちゃテンション上がりました(笑)。エーーッ?!ってなりました。僕としてはサークルピットをやってほしかったんですけど、やらなくて。「サークルピットやれ」って言って歌が流れた瞬間、みんなウィンドミル(笑)。ちょっと待ってって。2回くらい止めて、「こうやって回って」って言っても、みんなウィンドミルしかしない(笑)。暴力的になってて。「どつき合いしろ」って言ったら、うわーってなってました。ウィンドミル混ざりのウォール・オブ・デス。理想的な形になったので、むっちゃこのツアーは楽しいです。もっとこういうバンドのイベントに出たいなと思いますね。ツアーも一緒に回りたいです。だって、みんなで一緒にみんなのライヴを観て、共に時間を過ごしてるわけじゃないですか。そういうのが楽しいなと思って。この前、GEZANというバンドともライヴの時にセッションしたんですよ。そこでヌンチャクのKUNIさんのパートを生で歌ったんです(注:Jin Doggの楽曲「the Break」では、ヌンチャクの曲「都部ふぶく」のKUNIのヴォーカル・パートをカバーしている)。めっちゃ楽しかったです。KUNIさんとも知り合って、本人から「公式で使っていいからね」って言われたんですよ。

FLJ 今後の予定は?
Jin Dogg 9月ぐらいにニュー・アルバムの準備をしてるので、ツアーもこんな感じでやりたいです。veinとも仲良くなったので、アメリカにも行きたいですね。こういうバンドとの絡みを増やしたいなって、今回思いましたね。僕ってたぶんヒップホップっていうにはどうなんだ?っていうジャンルになってきてると思うので(笑)。自分の中でもミクスチャー的な感じがするんですよ。ハードコアとヒップホップを混ぜたようなものをやりたいし、そういう感じできわめたいなと思います。でもニュー・アルバムにはハードな曲だけじゃなくて、メロウな曲も入ってますよ。2枚組にしようと思ってます。

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