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MIGUEL

December 13,2019

音楽の自由と未来への可能性を信じる実力派R&Bシンガー

From FLJ ISSUE 69(11.30.2019)

PHOTO: cherry chill will.
STYLING: Masahiro Ogura
HAIR & MAKE-UP: Mikiko Kimura
SPECIAL THANKS: teamLab Planets Tokyo DMM

10月3日のEX THEATER ROPPONGI公演で初来日公演を果たしたミゲル。LA出身の実力派R&Bシンガーの彼は、これまでにアルバムを4枚リリースしており、全米チャート2位や全米R&Bアルバム1位を獲得している。2012年のシングル「Adorn」は全米R&Bチャート1位を獲得し、グラミー賞の最優秀R&Bソングにも輝くという実績の持ち主でもある。ソングライターとしてもアリシア・キーズやアッシャーの楽曲の作家をやったり、ケンドリック・ラマーやJ・コールが彼の楽曲のリミックスに参加したり、自らもマライア・キャリー、ジャネール・モネイ、ケミカル・ブラザーズ、デュア・リパ、カイゴ、エイサップ・ロッキーの楽曲に客演したりするなど、ジャンルの壁を超えた動きも素晴らしい。初来日中だったミゲルをキャッチして、teamLab Planets Tokyo DMMで撮影を行った。

FLJ 今日の撮影はどうでした?
ミゲル 撮影はsickだったよ! クールにしようと努めてたんだけど、子供の頃に戻ったみたいな気持ちになっちゃって、笑顔が止まらなかった(笑)。想像してた以上に楽しかったよ。フォトグラファーも最高だったしね。

FLJ 今日着ていた服は?
ミゲル 最初の撮影の服(注:表紙とP14で着用)はすべてJ.W.アンダーソンで、もう一つの方(注:P12で着用)はALYXなんだ。

FLJ 好きなファッションは?
ミゲル パンクのアティテュードを持ったものが好きだね。そういうアティテュードなしには新しいものは生まれないから。世界に対しては懐疑的な目線を持って見ないといけないよ。そのおかげで僕は常に意識が目覚めた状態でいられるし、常にチャレンジしたり、疑問を抱いたりすることもできるから。

FLJ 昨夜のライヴを観て思ったんですが、ミゲルは魂を歌にしていますよね。
ミゲル ありがとう。みんなが自分らしくいれるような自由と空間を喜んで持ってくれたのは素晴らしかったね。しかも、昨夜は初の東京でのライヴだったから、僕にとっても特別なものだったんだ。

FLJ 前に日本に初めて来た時は、プライベートだったと聞きましたが。
ミゲル そうなんだ。だから今回がプロのアーティストとしては初の来日だったんだ。真剣な話、日本に家が欲しいね。この前、どこに住むかっていう話をしてたんだけど、現実的に考えて3箇所選んで、その中には日本が入ってるんだ。日本は文化が歴史とつながってるし、日本の文化には名誉とリスペクトをスゴく感じるんだ。と同時に、先進的な部分もスゴくあるよね。世界中どこを見ても、こういうバランスを持ってる国なんてないんだ。

FLJ 日本には伝統の部分とハイテクの部分の二面性がありますからね。ミゲルの音楽も、クラシックなのにモダンだし、ノスタルジックなのにエッジーで、その二面性のバランスが絶妙ですよね。
ミゲル ありがとう。日本が好きなのも、アイデンティティがあるからなんだ。「これが自分たちなんだ」っていうアイデンティティのことさ。自由を思い切り感じられる自己を持つこと、そして自分がどこから来たのかっていう知識。それがあってこそ、自分がどこに行けるのかもわかるんだ。だからこそ、自分が何をやりたいかっていうことに対して、より鋭く切り込むことができる。スゴく個人的な問題ではあるんだけど、僕がやってきた音楽っていうのは、常にそういうことを意識してきたからこそ生まれたものなんだ。自分は何者なのか? これは意味のあることなのか? そういうことを気づかせてくれるんだ。だからそれが音楽にも現れたらいいなと願ってる。それは昨夜ライヴをやっててスゴく感じ取ることができたよ。お客さんからの反応にはスゴく元気づけられたから。

FLJ 音楽を通じてコミュニケーションをしているわけですね。
ミゲル そうなんだ。音楽が僕の一番得意なことだしね。もちろん個人的なことで最悪になることもあるんだけど(笑)。自分がどう感じてるのかを歌にするのは、話すことよりも簡単なんだよ。歌ってる時の方がより大きな自由を感じるからね。

FLJ ミゲルはどんな子供でした? 家族みんなが音楽好きなんですよね。
ミゲル そうなんだ。僕は良い子だったけど、いたずらっ子だった。でも悪い意味ではなくね(笑)。家族とはよく会ってるんだけど、いつ会っても最高だね。

FLJ 本気で音楽をやろうと思ったきっかけは?
ミゲル 音楽はずっとやろうと思ってたんだ。僕がラッキーだったのは、家族がサポートしてくれたことだね。小さい時から家族の前で歌ってダンスをしてたよ。僕ならできるんだって思わせてくれたんだ。スゴく勇気づけられたよ。周りからすぐに「信じること」という贅沢をもらえたからね。だから僕はそのまま前に進めたんだ。ちょっとクレイジーにもなったけど、さらに強く信じることができるようになった。それで今の僕が出来たってわけさ。

FLJ 昨年出した最新アルバム『War & Leisure』では、新たなレベルに向けてチャレンジしましたよね。キャリアを積み重ねていく中で、さらに強く信じることによって、新たなアイデアもどんどん出てきているんだと思います。今までのキャリアの中でターニングポイントとなったのはどこでしょう?
ミゲル 自分が新しく発見したことは間違いなく音楽の中に注ぎ込んでるよ。それは終わりのない旅であり、終わりのない発見なんだ。世界の見え方も自分の見え方も常に変わっていく。自分が見たい世界も変わっていく。そういったことを音楽にも注ぎ込みたいんだ。過去出したアルバムの最近の3枚、『Kaleidoscope Dream』、『Wildheart』、『War & Leisure』にはテーマがあるんだ。『Kaleidoscope Dream』のテーマは、自分の経験は自分が選んでコントロールしてるということに気づくこと。『Wildheart』のテーマは、自分の経験をコントロールしたら、自分を自由に解放して、直感を信じるようになること。しかも外の世界からの影響を気にすることなくね。『War & Leisure』のテーマは、そういうことをわかっていたとしても、自分でやらない限りは上手くいかない。そういうことを思い出させるものなんだ。だから常にシャープでいなくちゃいけない。すべては『Kaleidoscope Dream』から始まったよ。このステートメントは、理解されようとされまいとかまわないし、たとえそれがよりディープ、よりダークな方向に行ったとしても、さらにレイヤーを重ねて表現できるのであれば、僕はハッピーでしかないね。

FLJ ミゲルの曲は聴いていても心地良いんだけれど、同時に意識に入ってくるものがあります。しかもそこには世界で何が起こっているのかということも映し出されている。
ミゲル 特に今のアメリカではおかしなことがたくさん起こってるからね。選挙にしたってそうだし、そこにあるレトリックは共感できるものじゃないんだよね。それどころか、俗悪なものや恐怖といったものを見せつけられてる感じさ。だからこそ、それが僕がアルバムに注ぎ込むエネルギーと大きく関わってくるんだ。僕は良い気分でいたい。しかも、目的のないまま何かをやりたくない。それがアルバムのテーマにも大きく関わってくるんだ。

FLJ 音楽的にも、ミゲルの音楽は典型的なR&Bではなく、様々な音楽ジャンルをミックスしたものになっていますよね。様々な音楽のバックグラウンドがあるからだとは思いますが、基本的な音楽のアプローチとして、どのようなアイデアがあるんでしょうか?
ミゲル 自分が最高の状態の時は、僕は自分が聴きたいと思う音楽を作る。こういう感じの曲が作りたいと思えば、そのまま曲を作るよ。スゴくDIYなアティテュードなんだけどね。だから、そこにベストを尽くすだけだね。それでそこからよりディープなところにつながっていく。僕のファンはそのディープなところを感じ取ってくれてると思うよ。

FLJ 映像で観たのですが、2017年に父と弟と一緒に、初めてメキシコに旅をしたのも大きなターニングポイントになりませんでしたか? そこで自分に半分流れているメキシコの血のルーツを再発見したわけですし、今年の4月にはスペイン語のEP『Te Lo Dije』をリリースしていますよね。
ミゲル 元々はスペイン語のアルバムを作ろうと思ってたんだ。だけど出来た曲がスゴく自分にとっても気持ちの良いものだったから、これをスタートとして、ずっと続けていきたいと思ったんだよね。またメキシコに行ってメキシコの家族にも会いたいし、歌も歌いたい。だって、メキシコの家族に会ったのはあれが初めてだったんだよ。でもすぐにスゴく強いつながりを感じたから。

FLJ メキシコ出身の祖母がアメリカに来なかったら、ミゲルは生まれてなかったからですね。
ミゲル 文字通り、生まれてなかったよ。祖母はメキシコにあったすべてを捨ててアメリカにやって来たんだ。より良い生活を求めて来てね。飛行機に乗って、お金を持って、着いたら仕事が待ってる……そんな簡単な話じゃなかったよ。彼女はチャンスに賭けたわけだし、上手くいくだろうと信じて希望を捨てなかったんだ。彼女はすでにメキシコでラジオ局のミュージシャンというキャリアもあったんだ。そういうのをすべて投げ捨てて、夢を形にしたんだ。それでカリフォルニアのイングルウッドに来たんだよ。僕の両親はイングルウッド・ハイスクールで出会ったんだ。その出会いがなかったら僕は生まれてこなかったわけだから面白いよね。彼女は昨年亡くなってしまったんだけど、海外でライヴをやってると、祖母のことを思い出すんだ。感謝の気持ちでいっぱいさ。

FLJ メキシコのカルチャーは大好きですか?
ミゲル もちろん。

FLJ メキシカン・フードは?
ミゲル 何を言ってるんだよ(笑)。それを食べて育ったんだ。LAのメキシカンは最高だよ。でもメキシコのメキシコシティにはかなわないな。タコスとかブリトーだけでなく、本物のメキシコ料理があり得ないくらい美味しいんだ。

FLJ ミゲルはスゴくスピリチュアルな人間だと聞きましたが。
ミゲル スピリチュアルなつながりを保とうと努力はしてるよ。どのようなネガティヴなプログラミングであろうとも、対応するのを助けてくれるからね。ネガティヴなプログラミングはどんな人にも存在するんだ。僕はスゴくスピリチュアルに育ててもらったわけだから、そのスピリチュアルなつながりを保つために、瞑想をしたり、マインドフルネスをやったりしてる。人生の中にある孤独にどう対処するのかっていうことさ。僕は超スピリチュアルです!って感じじゃないけどね(笑)。ただ、常に意識は目覚めた状態にしておきたいんだ。

FLJ だって、ツアーTシャツに書かれたメッセージが、「Legalize Ascension」(「アセンション」=「宇宙からのエネルギーが身体に影響すること」を合法化せよ)、「Inner Dialogue」(内なる対話)ですからね(笑)。
ミゲル そうだね(笑)。アーティストって、ライヴをやって、写真撮影をして、ミート&グリードをやるでよね。ファンに会って写真を撮るのはスゴく楽しいことなんだけど、僕はそれ以上の意味のあることをやりたくて。そのツアーでは、ライヴの前にグループで瞑想をやったんだよ。それも『Kaleidoscope Dream』、『Wildheart』、『War & Leisure』をすべてまとめたような感じで、自分のアセンションを高めること、そして自分自身に忠実であること、理解するレベルを高めることが大きなパートを占めてたんだ。

FLJ 僕自身も瞑想とヨガをやっていますよ。
ミゲル ヨガは本当に自分に必要なものだよね。呼吸を通じてすべてとつながろうとするものだから。しかもそこには本当のセルフ・コントロールというチャレンジがある。僕はまだその域には達してないね。本で読んだんだけど、瞑想って段階的に廃止されていったらしいよね。18世紀の終わりか19世紀の初めに西洋文化の影響で大きな変化があって、人々はもう瞑想をやらなくなってしまったっていうんだ。でも今はまた世界的に見直されてる。それがスゴく面白いなと思って。

FLJ 次の動きは?
ミゲル 次のチャプターは、自分がビジョンとして描いてる以上のものになりそうなんだ。どんどん進化してるし、大きくなってるし、それが自分の次の10年間につながっていく。自分が信じるもの、自分を象徴するもののすべてに関わってくるものなんだ。簡単に言ってしまえば、僕たちはみんな武器のような危険な存在であるのに、パラダイムというのは、僕たちのポテンシャルや可能性といったものから気をそらすために、僕たちを脅してるってことなんだ。だから、僕は若者に自分たちが特別な存在であることを思い出してほしいと思ってる。若者には好奇心を持ってほしいし、疑問を持ってほしいんだ。常に危険な存在でいてほしいからね。この世界にある気に入らないものを変えていく武器のような存在になってほしいんだ。僕自身、スゴく小さな世界でしか経験したことがないんだけど、このことを少しでも理解できる人には、新しいものをクリエイトして、世界を変えていく力があると思ってる。僕たちはもっとパワフルな存在になれるんだよ。僕はそれを象徴する存在になりたいし、若者にはそのことを思い出してほしいと思ってる。

FLJ だからこそ音楽のパワーを信じているわけですよね。
ミゲル もちろんだよ。

FLJ ベニー・ブランコ、カルヴィン・ハリスと共演した「I Found You / Nilda’s Story」にも、移民の親子に救いの手を差し伸べるような強いメッセージがありましたね。
ミゲル そうなんだよ。あのニルダ親子はホンジュラス出身なのかな。僕の祖母と同じだよ。ポジティヴな変化を求めてたんだ。現実問題として、どんな人でもその人なりの葛藤を抱えてる。次のレベルに行くためにはそこを乗り越えていかなくちゃいけない。だからこそ僕は、「あなたにはできる」っていうことを声を大にして言いたいんだ。しかも、もっと気楽に考えていいし、もっと楽しくやってほしいんだ。そうやってみんなを勇気づけるのはスゴく重要なことだから。

FLJ 特にドナルド・トランプ政権の今、狭い視野や考え方になっていく人がどんどん増えていますし。
ミゲル ドナルド・トランプに限らず、世界中どこでもだよ。僕たちはスゴく重要な時代に生きてる。人類が本当に変わっていけるのか、それとも同じ過ちを何度も繰り返していくのか、大きな岐路に立たされてると思うんだ。でも僕には音楽というプラットフォームがあるわけだから、ポジティヴな変化に向けて声を出していきたい。

FLJ かつてはジョン・レノン、ボブ・マーリー、マーヴィン・ゲイといったアーティストがいましたが、今のアーティストはそういうポジティヴなメッセージを歌わないですよね。
ミゲル そうだね。でもさっきも言ったように、僕のこれからの活動は音楽を超えたものになっていくと思うんだ。自分の音楽の自由、人間性を保つことによって、自分が音楽の中で言いたいことを何でも言えるようにしていきたい。と同時に、他の方法でもクリエイティヴな発信をしていきたいんだ。だからメッセージをもっと広げていきたいし、そこはスゴく楽しみにしてる。あるいは他の媒体を利用してメッセージを広げていくことも考えてる。メンタルヘルス、スピリチュアルな目覚め、エモーショナルな成熟。この3つはお互いにつながってるし、お互いでコミュニケーションを取ってる。若者がお互いを勇気づけて目覚めていくのを手助けしたいし、自分たちには限界がないっていうことをわかってほしい。僕はそれを信じてるわけだから。

FLJ 最後に日本の読者にメッセージを。
ミゲル 日本に来るのに想像以上に時間がかかってしまったよ。でもやっと来日できて、本当に感謝してる。日本はとにかく文化も食も人も雰囲気もすべて好きだね。何度だって戻ってきたいし、今回やっと始まったわけだから。

「Funeral」
11月1日発表の最新リリースは同名タイトルのEPからのシングル

撮影協力
teamLab Planets Tokyo DMM

東京都江東区豊洲6-1-16
https://planets.teamlab.art/tokyo/jp


https://www.officialmiguel.com
https://www.sonymusic.co.jp/artist/miguel/
Instagram: @miguel

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