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安斉かれん

September 16,2020

新曲「GAL-TRAP」で作曲・プロデュースに初参加!
タイトルが意味するのは、ギャルが仕掛ける「罠」とヒップホップの「トラップ」

From FLJ ISSUE 73(9.30.2020)

PHOTO: Jesse Kojima

2019年5月にデビューをした、J-POPのニュー・ジェネレーションとも言うべきシンガーの安斉かれん。「POSGAL(ポスギャル)」と呼ばれる次世代の一人で、’90年代を意識した8cmSGで作品をリリースしてきた。デビュー当時から、「M・A・C」の店頭ビジュアルのモデルとして起用されたり、昨年のドラマ『M 愛すべき人がいて』のW主演でアユ役を演じたりして、話題を呼んできた。そんな安斉かれんが、新曲「GAL-TRAP」をリリース。これまでにも楽曲は、TRKKEI TRAX、Maltine Recordsなどの気鋭トラックメイカーによるReproduce手法で、海外でも大きな反響を得てきたが、今回は安斉かれん自らが作曲・プロデュースに初参加。タイトルの「トラップ」というワードには、ギャルが仕掛ける「罠」という意味と、本人が大好きだというヒップホップの「トラップ」の二つの意味が込められているという。

FLJ 最初に音楽を好きになったきっかけから聞きたいのですが、お父さんがロック好きで、その影響もあったのでしょうか?
安斉かれん 元々エレクトーンとかお囃子をやってたんです。お父さんが車の中とかでロックばかり聴いてたので、私もずっと聴いてました。中学に入る前に、がローリング・ストーンズのライヴに連れていってくれたのが、人生初のライヴで、サポート・メンバーの方がサックスを吹いていて、超カッコいいと思って。それで吹奏楽部に入ったんです。本当はジャズができると思って吹奏楽部に入ったら、クラシックだったんですけど(笑)。そこでサックスを始めました。

FLJ ローリング・ストーンズはヴォーカルとギタリストが目立っているのに、その中でサックスに目をつけたのが面白いですね。
安斉かれん 楽器が元々好きだったので。いろいろやってみたいなと思ってたんです。

FLJ 吹奏楽部はクラシックだったわけですが、ジャズをやりたかったんですね。
安斉かれん はい! グレン・ミラーを観に行ったりもしてました。でも、高1になって、音楽全般的にできたらいいなと思い始めて。喉も一つの楽器だしなと思って、歌を始めようと思ったんです。歌というか、音楽をできればいいなっていう思いが漠然とあって。最初はサックスのインストラクターとか、いろいろ考えてたんです。でも、歌というものに挑戦するうちに、めちゃ楽しいと思って、今にこうして活動させてもらってます。

FLJ こういうアーティストになりたいっていうイメージはあったんですか?
安斉かれん それはなくて。歌を始めたぐらいの時に、J-POPを聴くようになったんです。私がやってる、超J-POPの’90年代リバイバルみたいな曲って、逆に私の中ではスゴく新しいなと思ったし、面白かったんです。でも、最初はアーティスト像はなかったです。

FLJ 割とそこはオープンマインドで、いろいろ聴いていくうちに、好きなもの、やりたいことが増えていった感じですか?
安斉かれん そうですね。

FLJ デビュー3部作である「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」、「誰かの来世の夢でもいい」、「人生は戦場だ」は、MVも含めてつながっていますよね。どのようなことを考えたんですか?
安斉かれん あれは、3曲で過去・未来・現在なんです。元々テーマがあったわけじゃなくて、あれは全部高校生の時に書いた曲なんです。’90年代のサウンドなのに、映像はめっちゃCGを使って、スゴく未来感が強い。それが上手く混ざった時にスゴく面白いと思って。スタッフのなさんと話して作った感じです。

FLJ 曲は高校生の時に作ったものなんですね。
安斉かれん 今リリースしているものはほぼそうです。

FLJ 歌詞はいつから書いているんですか?
安斉かれん 歌詞を書き始めたのは高1で、歌を始めたのと同じタイミングです。歌を歌うんだったら自分の歌詞がいいなと思って、書き溜めていった感じです。歌詞というよりも、日記を書いてるみたいな感じで。今もそんな感じでずっと書いています。

FLJ どういう時にどんな風に浮かぶんですか?
安斉かれん 本当にその時々ですね。寝る前だったり、歩いてる時だったり、感じたことだけじゃなくて、見た景色とかも書くし、自分の話だけじゃなくて、映画の主人公になったみたいなつもりになって、そこからの視点で書いてみたりもするし、いろいろありますね。

FLJ 高校生の時に書いた歌詞を後で読むと、書いた時の気持ちがよみがえったりはしますか?
安斉かれん するのかな? あんまりしない(笑)。その時の感情って、その時にしか感じないなと思ってて。だから、歌を歌う時は、その時の感情に変に戻ろうとはしないで、「今、私がこの歌詞を歌うんだったらこう」っていう想いで歌っています。その時の感情には絶対になれないから。

FLJ 5枚目のシングル「僕らは強くなれる。」では、ブラスアレンジが加えられているし、MVでは京都橘高校吹奏楽部と共演していますよね。自分が吹奏楽部にいてサックスをやっていたこともちゃんと形にしていますね。
安斉かれん 自分のやってきたものがこうやって作品として残せるっていうのは、ありがたいですよね。ご参加いただいた京都橘高校吹奏楽部のみなさんは、本当にスゴいブラスバンドの強豪校のみなさんで。そういう人たちと共演できたのはスゴくうれしかったです。

FLJ あの曲は元々はブラスが入っていなかったんですか?
安斉かれん はい。元々は、本当にシンプルなバンド・サウンドという感じの曲で。歌詞の方は、私が部活をやってた時の話だったり、高校生の時にしか感じられない感情とかを書いていたら、自然と応援歌になったんです。なら、ブラス・アレンジを入れたら、よりメッセージも強く伝わると思ったんです。

FLJ 今回の新曲「GAL-TRAP」ですが、良い意味で驚かされる、カッコいい楽曲になりましたね。けっこうやりたいことをやった感じですか?
安斉かれん そうです! 今までずっと作詞はさせていただいてたんですけど、今回は作曲にも参加させていただいて。元々、作曲をやりたいってずっと思ってたんですけど、形には全然できていなくて。自分でピアノをポロポロ弾いて、歌うようなことはやってたんです。今回、初めてそれを形にするってなった時に、スタジオに入って、何もないところからノリ、遊び感覚で、プロデューサーさんと「やってみようよ」みたいな感じになって、私が歌ったり、叩いたりして、その瞬間の雰囲気で一気にコーライティングしました。

FLJ いろいろやったんですね。
安斉かれん いろいろやってみて、曲自体は、一日で作りました。

FLJ 事前にテーマとかこういう曲調にしたいっていうのはあったんですか?
安斉かれん 参考にするとかではないんですけど、夜にチルに聴ける曲みたいなテーマはありました。仮歌は、考え過ぎず、その場のテンションで歌いました。

FLJ 自然に出来たんですね。
安斉かれん うんうん。

FLJ 「GAL-TRAP」はトラップの曲ですが、ヒップホップは好きなんですか?
安斉かれん ヒップホップは聴きますね。でもオールジャンル、めっちゃ聴くので。J-POPって、歌詞ありの曲って感じじゃないですか。ヒップホップにも歌詞はあるんですけど、自分の聴く曲はメロディで好きになることが多いんです。

FLJ 最近のプレイリストはどんな感じですか?
安斉かれん いろんなジャンルをめちゃ聴くんですけど(笑)。これは果たしてヒップホップなのかどうかはわからないんですけど。Pharaohとかめちゃ聴く。(スマホのプレイリストを見ながら)Slowthaiとか。ラップ、ヒップホップが多いですね。

FLJ 今はポップとヒップホップの境界線も曖昧ですからね。ビートはトラップでも、メロディの歌が乗っている曲は多いですから。
安斉かれん 曖昧なのはめちゃ聴きます。他にもBrother Sundance、エイコンとか。

FLJ (プレイリストを見せてもらって)舐達麻もありますね。ドージャ・キャット、トレイ・ソングス、トラヴィス・スコット。ローリング・ストーンズも入っていますね。ビリー・アイリッシュ、カリード……。
安斉かれん めっちゃオールジャンルで聴くんです。罰当もめちゃ好きです!

FLJ マシンガン・ケリーもありますね。
安斉かれん マシンガン・ケリーは超大好き。ホント、ジャンルは混ざってますね。

FLJ 「GAL-TRAP」のようなビートで歌うJ-POPは、今までになかったからいいですね。
安斉かれん 流しておける曲がいいんです。

FLJ 「GAL-TRAP」が出来て、手応えはどうですか? さらにやりたくなった部分もありますか?
安斉かれん スゴく楽しいなと思いました。これからもっといろんなジャンルをやってみたいし、いろいろ音楽に挑戦したいですね。「安斉かれんと言ったら、こういう曲」っていうのがないようにしたい。とりあえずいろんな「安斉かれん」を見せていきたいと思ってるので。次の曲もきっとガラッと違う曲なので、楽しみ(笑)。

FLJ 今のUSのラッパーにしても、ロックも好きで、トラップのビートにエモのメロディを乗せたら新しい音楽になったっていう感じもありますからね。
安斉かれん 何でもありっていいですよね。私もヒップホップをやるんだっていうよりも、良い音楽をやりたい。

FLJ それで自然に混ざっているわけですね。「GAL-TRAP」はその始まりなんですね。
安斉かれん そうです。ヤバいですね(笑)。

FLJ 「GAL-TRAP」のタイトルにもある「ギャル」についても聞きたいのですが、小学生の時からギャル雑誌を読んでいたんですよね。
安斉かれん でも、最近のギャルっていうのはめっちゃ曖昧だなと思っていて。前みたいに、金髪だからギャルとかじゃない。何て言うんですかね。今のギャルっていうのは、自分の好きなものを固めてる人っていうイメージがあります。これがこうだからギャルっていうんじゃなくて、マジ、マインドだなと思ってて。だから、この曲も好きなものを詰め込んだ感じだし(笑)。ギャルとは?っていうのは難しいんですけど。

FLJ 自由にやりたいことをやるのがギャルではないでしょうか?
安斉かれん 本当にそうだと思います。

FLJ 小学生の時からギャルにハマったのには、きっかけがあったんですか?
安斉かれん ギャルになりたいとかじゃなくて、雑誌で見た髪色がかわいかったからとかですね。自分の周りに好きなものを置いておいたら、ギャルって呼ばれるようになっちゃったって感じ。それだけ(笑)。

FLJ 今のギャルはどんな感じなんですか?
安斉かれん 「私、ギャルだから」と思えばギャルだと思うし。内面の弱い部分を隠すじゃないですけど、武装するために好きなものを固めるじゃないですか。それで自分の機嫌を取っておくみたいなのが、ギャルの始まりかなと思います。好きなものをちゃんと言える人。今は黒髪の子でも、ギャルだったらギャルだし。マジ、令和ですよ。令和は形はないです。

FLJ フリースタイルですか?
安斉かれん それこそフリースタイルです。

FLJ さっきも話した、音楽にしても、ヒップホップとポップの境界線がなくなってきたし、これはフリースタイルの始まりなんですね。
安斉かれん そうですね!(笑)

FLJ 「GAL-TRAP」は、MVの方も今までとは違う感じになりましたね。大きなテディベアも出てきて。
安斉かれん この曲って全体的に曖昧な曲なんです。歌詞も、メロディも。言っちゃえば、お昼に仕事をしてたり、友達と遊んでたりする時間がある。それと、家に帰って一人の夜の時間がある。全然違いますよね。その夜の時に、別に超悩んでるわけでもないし、つらいわけでもないんだけど、ふわふわ考えてる時間ってあるじゃないですか。これってその時の曲なんです。その時のふわふわしてる気持ちって、名前がない。名前がないから、言葉にはできないんです。その感じを、トラックの上で、沈黙が怖い時に吹く口笛だったり、意味なく爪を鳴らしてみたり、ため息とかで表現してみました。本当、曖昧なんです。全体が(笑)。MVのシーンは大きく二つあるんですけど、どちらかというと夜、クマちゃんに守られながら、自分を甘やかしているモードがあって。一方で、仕事モードとか、ちゃんとしなきゃって武装してるモードもある。クマちゃんに話しかけたりするシーンも出てくるんですけど、クマちゃんは自分の分身で、対峙してるんです。それで、最後の方ではちょっとショッキングなシーンも出てくるんですけど。自分は成長したいのに、甘えモードが引き戻すというか、「いいよ、行かなくて」みたいにしてくるんです。そこでは大人と子供の間みたいなものをスゴく表現していて。人生って、ずっとその繰り返しなんだと思ってるんです。

FLJ 確かに、人生のテーマとしても、このままでいいのかっていうのと、進化していかなきゃいけないっていうのの、常に二つの選択肢がありますよね。しかもそれがずっと続いていくわけで。
安斉かれん そうですよね。人生って、引っ張ったり、戻ったりの繰り返しじゃないですか。無限ループになってる。そういうのをスゴく表現してます。

FLJ 「GAL-TRAP」は歌のフロウもトラップでしたね。「言葉よりも先、涙が出るのは/擦れる個々に暮れる想い/ズレる心、捨て去る色」と歌っているところはスゴくカッコ良かったです。
安斉かれん そう。めっちゃむずい!(笑) 韻を考えるの、スゴい難しかったですね。

FLJ 「意外と言えん「ぴえん。」」って、けっこうヤバいですよ。
安斉かれん (笑)ベースを考えてから、それにちょっとずつ付け足していく感じで作りました。

FLJ こういう曲の作り方は初めてなんですよね。
安斉かれん 初めてですね。でもめちゃ楽しいです。楽しいしかない(笑)。歌ってみて、そのフレッシュな想いをカタチにしたというだけで、本当、遊び心を大事にしようって感じで作った曲なんです。

FLJ あれだけのプレイリストを聴いている人なら、いろいろできると思いますよ(笑)。
安斉かれん 本当ですか? いろいろやってみたいです。

FLJ フロウと韻が難しかったという話をしていましたが、そこもチェックしているんですね。
安斉かれん いろいろ見るようにしてます。だって難しいんだもん。韻を踏むのなんて、やったことがなかったので。ちょっと勉強します。遊びながら作れたらいいですね。

FLJ 大きな目標はあるんですか?
安斉かれん 特に決めないようにしています。夢とか目標が苦手で。けっこう今を頑張りたいタイプなので。音楽をやっていたいだけ。

FLJ 音楽をやるに当たって、楽しい部分だけではなく、新たにチャレンジをしていくのも好きですか?
安斉かれん 私、ハマるとめっちゃハマるんです。食べ物もそうで。マイブームがめっちゃある。それしか見なくなっちゃうんです。でも、飽きるのも早いんですよ(笑)。だけど、音楽だけは唯一、人生の中で続いてるものなんです。

FLJ 音楽だけずっと好きでいられるのは何故なんでしょうね。
安斉かれん 音楽って形がないなと思ってて。だから飽きないんだろうなって思ってます。正解もないし。これという概念も別にないし。無限大じゃないですか。マニュアルがないから。バイトだってそうだもん。マニュアルがあるバイトはできない(笑)。

FLJ やっぱりフリースタイルなんですね(笑)。
安斉かれん フリースタイルで自由にやりたいです(笑)。

FLJ 音楽って、人によっていろいろとあり方が違いますよね。純粋に楽しむためのものであったり、音楽に救われたっていう人もいるし、音楽が自分を表現する最高の手段だっていう人もいる。
安斉かれん 本当にいろいろあります。私にとっては、もちろん楽しいものですけど。それに、私は歌詞でしか言わないんです。人に相談するとかいう前に、歌詞を書きたいってなっちゃうから。確かに、表現する場所でもあります。でも、実は、マジに音楽しかやってなさすぎて、他が何もできないっていうのもある(笑)。

FLJ でも、音楽をやっている人はそんな人ばっかりだと思いますけど(笑)。
安斉かれん 勉強もしてこなかったし、音楽と体育と美術の成績しか良くなかったので。

FLJ けっこういっぱいありますよ(笑)。
安斉かれん でも、教科書とかは苦手(笑)。

FLJ 夢は苦手ということでしたけど、自分の音楽をこうしていきたいっていうのはあるんですか?
安斉かれん これも特にないかも。「安斉かれん」という概念を作りたくない。でもわからないです。それは今だけなのかもしれないし、これから出てくるかもしれない。でも今はとりあえずいろんなジャンルをやりたいし、楽器もやりたいし、まだいろいろ見ていたい。まだ「私」っていう軸を作りたくないです。

FLJ 「GAL-TRAP」はどういう風に聴いてもらいたいですか。
安斉かれん 夜に一人で聴いて、「まあ、それなー」くらいに思ってくれればいいかな(笑)。本当に曖昧な曲なので。今までの歌詞だと、「こうだから、私はこう思う」みたいな、直接的な歌詞も多かったんですけど、今回はそうじゃないから。聴く人によって全然変わると思うし、だから、全然「それなー」ぐらいで、聴き流してくれればいいんです。

FLJ 確かに、今は「頑張れ」っていう歌が多いですから。
安斉かれん 私も歌詞を聴くのが疲れるタイミングがあるんです。そういう時期って、メロディ重視で、極論、歌詞がないような曲が良くて。クラシックを聴いたりとかもしちゃうし。今は人生の中でそういう気分(笑)。もちろん「頑張れ」っていう歌が必要な時も来ますけどね。今の気分はこっち。

FLJ 座右の銘はあります?
安斉かれん 「何とかなる」です(笑)。


「GAL-TRAP」
(avex trax)
9月16日 サブスクリプションサービス限定配信
ジャケットには、曲に込められた想いを表現するために、ほぼ素肌で撮影したという「すっぴん風メイク」の安斉かれんが写し出されている


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