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FOO FIGHTERS

October 04,2017

バンド史上最もスケールの大きい、最もラウドで最も美しい作品が誕生

From FLJ ISSUE 56(09.30.2017)

PHOTO: Yuri Hasegawa

今年の夏はSUMMER SONIC 2017に出演を果たし、9月15日には3年振り、9枚目となるアルバム『Concrete And Gold』を発表したフー・ファイターズ。今作でプロデューサーに迎えたのは、アデルやシーアの大ヒット曲等で知られる注目のプロデューサーにして稀代のメロディメイカーのグレッグ・カースティン。バンドがチャレンジしたのは、ラウドさと美しさを融合するという新機軸のサウンドの追求だった。また、この新作のリリースを祝して、10月7日に5万人以上を収容するLA郊外の巨大なイベント会場で一大フェス「CAL JAM ’17」の開催も決定している。テイラー・ホーキンス(Ds)とデイヴ・グロール(Vo, G)に話を聞いた。


Front row L to R:
ラミ・ジャフィー(Key)、パット・スメア(G)、クリス・シフレット(G)、ネイト・メンデル(B)
Back row L to R:
テイラー・ホーキンス(Ds)、デイヴ・グロール(Vo, G)



テイラー・ホーキンス(Ds) インタビュー 

FLJ フー・ファイターズって常にチャレンジをしてきたバンドなんだけど、今回のチャレンジは?
テイラー 新しいことをやるチャレンジだね。過去2枚のアルバムと比較しての新しいサウンドのアプローチをやったんだ。その2枚のアルバムのプロデュースはブッチ・ヴィグで。彼が手がけた最初の『ウェイスティング・ライト』 はスゴくストレートで、基本に戻ったようなアルバムだった。アナログ・テープでレコーディングしたし、スゴくシンプルな生演奏のアプローチだった。それでサウンドもけっこう生々しかった。次の『ソニック・ハイウェイズ』も同じようなレコーディングのアプローチだったんだけど、コンセプトはアメリカの8都市の歴史的なスタジオを訪ねてレコーディングをするというものだった。それで今回のアルバムは新しいサウンドの探求をやろうってなった。今回のプロデューサーのグレッグ・カースティンは、これまでロックのアルバムを手がけたことがなかったんだ。でも実際にグレッグと一緒にやってみると、サウンドの広がりがあるんだよ。今までで一番大きなサウンドになった。ヴォーカルのハーモニーも多いし、すべてがシネマティックなサウンドになった。もちろん今回もフー・ファイターズのサウンドではあるんだけどね。

FLJ グレッグとのレコーディングはどうだったの? 今までとはまた違うアプローチだったと思うんだけど。
テイラー 意外とレコーディングはやりやすかったんだよ。グレッグはスゴく大らかだったんだ。でも、サウンド作りはいろいろやっててスゴかったね。特にギターのサウンドはいつもと違って聴こえた。あと、ヴォーカルは何て言うんだろう、レイヤーを重ねて、ハーモニーも多いんだ。サウンドがスペーシーになったし、今までのフー・ファイターズの中で最もサイケデリックなアルバムになったね。声にもたくさんエコーがかかっているし。トリッピーっていう言葉がピッタリかもしれない。ピンク・フロイドに近づいたかな(笑)。

FLJ ドラムのレコーディングはどうだったの?
テイラー 今回はスタジオ入りする前にほとんどの部分を仕上げていったんだ。だからドラム録りも早く終わったし、すべての楽器の録りは1週間で終わった。やりやすかったし、レイドバックした雰囲気でやれた。デイヴはやることが多かったけどね。ドラムもチェックしてたし、ギターもヴォーカルもやってたわけだから。最も時間がかかったのは、ドラムの音決めだね。曲ごとに違うヴァイブスがあったから。「Run」っていう曲はデカいトラディショナルなドラムの音だし、「La Dee Da」はディストーションがかったクランチーなドラムの音。でも音が決まったらそこから先は早かったよ。5テイクから25テイクぐらいだから(笑)。ブッチの方がいろいろうるさかったからね。

FLJ 「Sunday Rain」でヴォーカルをやっているのはテイラーだよね。曲のアイデアはどのようにして出てきたの?
テイラー 最初にデイヴがこのアルバムの曲を作った時、デモを持ってきて、「このアルバムで1曲リードヴォーカルをやってほしい」って言われたんだ。「いいね! やらせてくれよ」って答えたよ。ちなみに、この曲でドラムを叩いてるの、俺じゃないんだよ。ポール・マッカートニーが叩いてるんだ。

FLJ エッ?!
テイラー 信じられないかもしれないけれど、そうなんだよ。よく聴けば俺のドラムじゃないってわかるはずさ。デイヴでもないしね。最初は俺が歌ってデイヴが叩くものだと思っていたんだ。「Cold Day In The Sun」でもそうだったしね。だけどデイヴは、「いや、ポール・マッカートニーが叩くんだ」って言うから、「OK。最高だね。『バンド・オン・ザ・ラン』でのポールのドラムは大好きだから」って答えたよ。ポールのドラムは間違いないね。ポールはスタジオに入って、2テイクで終わらせたよ。ポールはどんな曲かすら知らなかった。デイヴがアコースティック・ギターでポールにこんな感じだって教えただけ。俺はドラム・スティックを持って指揮したよ。ポールは自分のスペシャル・ドラム・セットに座って、俺たちに合わせてプレイしただけ。スゴかったよ。スゴいユニークなドラミングだったしね。レイドバックしてて、ウィングスの音みたいだった。

FLJ 今年になってキーボードのラミ・ジャフィーがバンドの正式メンバーになったよね。
テイラー ラミはこの10年間一緒にやってきて、それで正式メンバーになったんだ。今はギャラが増えたと思うよ(笑)。サウンドもカラフルになったしね。

FLJ ラミはどんなキャラの人?
テイラー みんな俺のことをレイドバックしたカリフォルニアの男だと思ってるんだけど、彼は俺以上だよ。疑いなくスーパー・レイドバックしたヤツだ。ラミはいかれた男だよ。でもスウィートな男でもあるんだ。音楽となると、アイデアをいっぱい持ってくるんだ。彼抜きのフー・ファイターズは考えられないね。演奏面だけじゃなくてね。フー・ファイターズはファミリーから成っているバンドなんだ。デイヴにしても、マネージャーはニルヴァーナ時代からずっと一緒にやってるんだよ。

FLJ 10月にはフー・ファイターズ主催のフェス、CAL JAM ’17が開催されるよね。
テイラー その通り。CAL JAMはいろいろな要素があるよ。キャンプもできるし、カバー・バンドのステージもあるし、カッコいいバンドがたくさん出る。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、ケイジ・ジ・エレファント、リアム・ギャラガー、ザ・キルズ、ロイヤル・ブラッド、いろいろ出るよ。

FLJ フー・ファイターズというバンドにいて最高のことは?
テイラー もう20年やってるからね。難しい質問だな。やっぱりライヴが最高なんだ。いろいろ最高の要素はあるよ。大好きな音楽をやってそれが仕事になってる部分も含めてね。でも一日の終わりに最高だなって思えるのは、ステージに出て、ライヴも最高で、それをバンドみんなで形にできること。それこそが最高なんだよ。


©SUMMER SONIC All Rights Reserved.
2年振りの来日、SUMMER SONIC初出演となったフー・ファイターズ。8月20日の東京・マリンステージにヘッドライナーで登場しら彼らは、オープニングから「All My Life」「Learn To Fly」で飛ばし、「Pretender」「My Hero」と畳みかける。ニュー・アルバムからは「Run」も披露。後半、デイヴがドラム、テイラーがヴォーカルでクイーン&デヴィッド・ボウイのカバー「Under Pressure」を披露。まさかのリック・アストレーが飛び入りして、一緒に彼の大ヒット曲「Never Gonna Give You Up」をカバー。そこから「Best Of You」の大合唱、「Everlong」で大団円となった。



デイヴ・グロール(Vo, G) インタビュー

FLJ ハイ、デイヴ! 忙しいんじゃない?
デイヴ 全然。まだツアー前だから、自宅にいてバーベキューをやりながらインタビューに応えられるから(笑)。ちょうど今、8~9時間かけて豚の肩肉を料理していたところなんだ。15分置きにタバコを吸いながら温度調節してるってわけさ。

FLJ デイヴならではのソースはあるの?
デイヴ 肉によるね。今日は豚肉だから、ノースキャロライナ・スタイルで、ビネガー、アップル・サイダー、赤唐辛子、塩、黒胡椒、あと砂糖を少々。スゴくシンプルなんだ。だけど、スウィート・バーベキュー・ソースを作る時は、ジャック・ダニエル、ハチミツ、醤油。最高なアメリカン・バーベキューの場合は超シンプルだよ。塩と胡椒でスモークするだけ。

FLJ ちょうど「ローリング・ストーン」の記事を読んだばかりなんだけど、「何ヶ月もずっとバーベキューで忙しかった」って書いてあったよ。
デイヴ その通りなんだ(笑)。実際、前のアルバムのツアーが終わった後、メンバー全員、肉体的にも精神的にも疲れ果てて、休みが必要だった。俺も家に帰ってきて、料理を始めたんだよ。何年間もツアーにずっと出てて、友達がバンドのメンバーしかいなくて、家に帰ってやることがないっていうのは辛いからね。それで料理を始めたんだけど、これがまた癒す力になるんだ。その時点でまだ骨折した脚が完治していなかったから、まだ歩けず、椅子に座って、料理しながら火を一日中眺めてたんだ。それで気持ちもずいぶん落ち着いたよ。だからニュー・アルバムは全曲バーベキューの歌なんだ(笑)。

FLJ ウソでしょ(笑)。でもこのアルバム、ヘヴィだけど美しいし、トリッピーなサウンドもあって、素晴らしい出来だよね。プロデュースにはポップスを多く手がけているグレッグ・カースティンを迎えてるし、今回はどういうアイデアや方向性があったのかなと思って。
デイヴ グレッグと出会ったのは4年ぐらい前のハワイのレストランだったんだ。その時は彼がプロデューサーだとは知らず、俺の大好きなバンド、ザ・バード・アンド・ザ・ビーのメンバーだってことしか知らなかった。彼の音楽はフー・ファイターズの音楽とは全く違うものなんだけど、メロディとハーモニー、作曲と構成のレベルが高いし、複雑で、普通の平均的なロック、ポップスの作曲の仕方とは違うんだ。ジャズの要素もあるし、ゴスペル並みのハーモニーもある。それで彼をレストランで見かけた時に、「ヤバイ! ザ・バード・アンド・ザ・ビーのメンバーだ」って彼のところに駆け寄って、「お邪魔はしたくないんですが、大ファンなんです!」って言って、友達になったんだ。2~3年の間はハングアウトして音楽の話をたくさんしたよ。彼も元はパンク・ロック・キッズで、ロックンロール、ジャズ、レゲエが大好きで、音楽の幅が広いんだ。それで彼がずっとやりたいと思ってるのは、巨大なリフ、ヘヴィなリフに美しく豊かなハーモニーのレイヤーを乗せたものだって言うんだ。でも彼はシーア、アデル、ピンク、ビヨンセといったアーティストのプロデュースをやってたから、俺のバンドと仕事したいとは思わなかったんだ。みんなワールドワイドで活躍するスマッシュ・ヒット・スーパースター・アーティストだからね。それでマネージャーに相談したら、「グッド・ラック!」って言われたよ。「やるべきだよ。みんな彼と仕事をしたいんだ。世界一のプロデューサーだからね」って。それでグレッグに電話したら、やりたいって言ってくれて。それで彼がやりたがっていた二つの要素の融合……美しく豊かなハーモニー、それとヘヴィなロックの演奏。その二つがごく自然に融合していったんだ。

FLJ レコーディングもヤバかった?
デイヴ エンジニアにはレディオヘッド、ポール・マッカートニー、ベックを手がけたダレル・ソープを迎えたんだけど、とにかくアイデアが誰も今までにやったことのないようなものだったんだ。俺たちがデカいキャンバシに絵を描こうとすると、ダレルは巨大な壁を持ち出してきて、そのすべてに絵を描けっていうような感じだったんだ。もう夢が叶ったような感じで、本当にいいアルバムが出来たよ。

FLJ オーハイ(注:カリフォルニの小さな町。パワースポットとしても知られる)のAirbnbで歌詞を書いたらしいけれど、今回の歌詞はどんな感じ?
デイヴ 今、俺には子供が3人いる。毎朝、陽が昇る前に子供たちのランチを作り、子供たちを起こして、支度をして、バス停まで車で送り届けるっていう毎日なんだ。その後に作詞ってなると、もう難しいんだよ。それで、1週間家を空けて、人里離れたところに行って、ワインとマイクとギターを持ち込んで、頭の中にあったアイデアを歌にしたんだ。ちょうど人生の中でもスゴくエモーショナルになってた時期でね。過去6ヶ月、世界とアメリカでいろいろなことが起こって、知り合いとの会話もスゴくヘヴィなものになっていった。どう人間性というものを捉えたらよいのか?って。絶望と衝突もあるけれど、希望もあるし、美しさもあるわけで、今回はそういうことを歌詞にしていったんだ。

FLJ 「La Dee Da」の歌詞が面白いなと思って。バンドのDeath in JuneやサイキックTVの名前が歌詞の中に出てくるから。好きだったの?
デイヴ 12~13歳の時、パンク・ロック、ハードコアにハマって、さらにインダストリアルとか聴き始めたんだ。サイキックTVとかCurrent 93、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンを聴いたよ。俺は地元では変わり者のガキだったよ。ヴァージニア州の田舎の保守的な土地だったからね。そこで自分の世界を作って、できる限り奇妙なところに行きたかった。おかげでいろんな音の発見ができたよ。この曲は特定のアーティストのことを歌ってるんじゃなく、15歳の俺が自分の部屋で疎外感を味わっていることを歌っている。その当時、’80年代はアメリカがスゴく保守的な時代だった。音楽、宗教、性が他とは違っていると脅迫を受けるような時代だった。若かった俺には抵抗する手段が音楽だったんだ。それで去年、その頃の気持ちがよみがえってきてね。15歳の俺と同じプレッシャーと脅迫観念を今また持っているんだ。それは今の時代がまた保守的になってきてるからなんだ。俺は反逆的な人間だし、自由というものは誰もが声を大にして主張できるものだと思っているよ。

FLJ 11月にCAL JAM ’17を主催するよね?
デイヴ 自分たちのレコードのリリース・パーティをやりたくてね。でもそれをクラブとか誰かのオフィスではやりたくなかった。パーティだからデッカくうるさくやりたかったし、バンドの友達をたくさん呼びたかった。それで、5万人集めて、22組のバンドを呼ぼうってなって。今のアメリカのフェスはどんどんポップになっているから、とにかくロックンロールばかりのフェスをキュレートしたかったんだ。超楽しみにしているよ。アイデアもいろいろあって、フー・ファイターズ・ミュージアム、フード、トリビュート・バンドなどいろいろあるよ。世界一のバースデイ・パーティだと思ってもらえばいい。

FLJ デイヴのバーベキューもあるの?(笑)
デイヴ もし俺が5万人のために料理をやってたら、ライヴができなくなるよ(笑)。




『Concrete And Gold』
(ソニーミュージック)
9月15日リリース

www.sonymusic.co.jp/foofighters
www.foofighters.com

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