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FIGHT IT OUT

April 21,2017

ブレないで活動を続け、スピードにこだわる横浜のハードコア・バンド

PHOTO: Jesse Kojima

From ISSUE 53 (03.30.2017)

FIGHT IT OUTと言えば、フロアにメンバーが攻め込み、それにファンが熱く応えるという強烈なライヴ・パフォーマンスで、会場の空気を一変させるしまうハードコア・バンドだ。あらゆるハードコアのライヴに出演し、ハードコアの本質を追求し、贅肉を削ぎ落としたサウンドを鳴らしてきた彼ら。2月18日にリリースされた3rdアルバムでは、ハードコア・パンク、グラインド、パワーバイオレンスを超えて、ウルトラ・ファストとスローパートを容赦なく繰り出すサウンドを極限まで突き詰めたものとなった。横浜・野毛で撮影を行い、ヴォーカルのYANGとギターのJUNYAに話を聞いた。


左から、UEDA(Dr)、OKB(G)、JUNYA(G)、YANG(Vo)、KOHEI(B)

FLJ 今回、3rdアルバムということで目指したもの、持っていたアイデアは?
YANG 2ndアルバムの後、7インチを出して。その延長でもっとわかりやすい感じに。もっとスピード速めで、落とすところは落として。

FLJ 2011年7月に2ndアルバムの『Talk Shit And Hope』をリリースした時は、試行錯誤の末、自分たちのスタイルを確立した時期になったって話をしていたんだけど、それがそのままずっと続いている感じではある?
JUNYA 別に意識してないね。
YANG 特に変えようとは思ってないので。変わっていないですね。ただ、よくどういうバンドなのかを説明されると、何かやたらと「暴力的なイメージ」って書かれるんですけど(笑)。
JUNYA そういうレビューが多いですね。
YANG 別にそれは俺らの問題じゃなくて、客の問題だから(笑)。

FLJ 確かに、客席に出て行くんだけど、客に危害を加えているわけじゃないからね。
YANG そういうのはないですね。

FLJ 曲はどうやって作っているの?
JUNYA みんなで作っている感じですね。
YANG 一応、曲のイメージだけ口で俺が説明して、JUNYAかOKBが…。
JUNYA 弾いて、じゃあドラムこういう感じにしましょうって形で入れて。
YANG モデルにしているバンドは特にないですね。自分の中のブームはその都度あるんですけど。ここ2年ぐらいずっと聴いてたのがDisrupt。あのバンドのスピード感が好きで。そこはちょっと意識したんですけど。あれよりもっと速くしようって。

FLJ 最初に「わかりやすい感じに」って言ってたけど、そういう風にサウンド面で意識したところは?
JUNYA すべてが極端になっただけですね。スピードが速くなって、落とすところは本当に落とすっていうのを極端にやったくらいで。上っ面は少し変わったように聴こえるかもしれないですけど、バンドとしての芯は何も変わってないですね。
YANG で、1曲1分半以内。

FLJ でも1分半以内を感じさせないボリューム感が1曲にあるな。
JUNYA だから、アルバムを聴いた後の満腹感は、普通のアルバムを聴いたのと同じくらいあると思います。

FLJ アルバムを通して14分だとは思えなかった。それで、アルバム・タイトルが『MOST HATED』なんだけど、嫌われてる感を出したかったの?(笑)
YANG (笑)それもあるんですけど。
TOME(レーベル「BOWL HEAD inc.」主宰者) 嫌われてますよ。

FLJ あれ、愛されてるバンドじゃないの?(笑)
YANG 「あの人、俺らのこと嫌いだな」ってわかる節はありますね(笑)。絶対に呼んでくれない人とかいるんで。
JUNYA これ、やめましょうよ(笑)。
YANG あとは、「FIGHT IT OUTでしょ。外にいようよ」みたいな(笑)。

FLJ そういう客の反応ね。FIGHT IT OUTのライヴが始まる時に、客の位置がバッと変わるから。
JUNYA 配列が変わりますね。BAYSIDE CRASHの時なんか完全に休憩の時間でしたね。
TOME BAYSIDE CRASHで発煙筒を焚いてるヤツ初めて見たよ。

FLJ 発煙筒?!
TOME 横浜のFIGHT IT OUTのクルーが発煙筒を焚いてモッシュして。
JUNYA あと、爆竹もありましたね。YANGがフロアから始まる前に爆竹を投げて。俺フロアにいたから、足元でパンパン鳴って。
YANG もうそういうことはしないようにしています(笑)。あんまりやりすぎると色物になってしまうので。話は『MOST HATED』でしたよね?(笑) HOODSの代名詞みたいなので、CALIFORNIA MOST HATEDっていうのがカッコいいなと思って。けっこうFIGHT IT OUTのルーツというか、アイデンティティというか、それを形成するのにだいぶ重要な役を果たしているのがH-BOMBくんです。俺の中ではけっこうあの人の感覚をお手本にしてるというか。カリフォルニアにいてハードコアのOBHC(注:オークランドのハードコア・クルー)に所属して。そういうところでも、この人の持ってる感覚はけっこうカッコいいなって俺はずっと思ってたんで。
JUNYA 好き嫌いがハッキリしてるし、曖昧なことは絶対に言わない。それはやっていく上で大事なことだから。
YANG けっこう俺の中で曲を作る時に、「H-BOMBが好きそうだな」っていうのもちょっと意識してますよ。
JUNYA 感動してたもんね。
YANG このアルバムが出来上がってすぐサンプルを聴かせたら、「これはヤバイ!」って言って。

FLJ 歌詞は今回どんなことを歌っているの?
YANG 歌詞は2ndから変わらず。日頃。大体、嫌なヤツに会ったり、そういう時に俺、携帯出して、携帯のメモに打つんですよ。
JUNYA 危ないっすよね(笑)。
YANG 嫌な思いをしたり、嫌なヤツに会ったり、そういう時にワーッと出るんですよ。基本、怒りがテーマなんです。別に対象が人じゃなくても。そういうのを書き溜めていって。歌詞はすぐに出来ました。1年分の不満を書き溜めたらアルバムが出来るくらい。

FLJ ベースにあるのは怒りなんだ?
YANG そうですね。もう2ndの頃からテーマにしてやろうという相手もずっと変わらずいたんで。それは引き続き。対象は1曲1曲いるんです。

FLJ 歳を重ねていくうちに怒りは減っていったりはしないの?
YANG 今のところ減らないですね。
JUNYA 一生怒って終わるよ(笑)。

FLJ ハードコア向き(笑)。
JUNYA 僕は詞を書いてないので、怒りを音……というか、YANGに曲作りで怒られて、それを自分の中で怒りに変換して、音にしています。
YANG 確かに俺、スタジオでスゴいプレッシャーかける。
JUNYA 「もう全然ダメ」とか、ケツ叩かれるとやるわけじゃないんですけど、怒られてヘコんで怒りになって、それが音になる。
YANG ギターの二人にはスゴくプレッシャーをかけるんですよ。スタジオはけっこう無言になります。
JUNYA 今回めっちゃ難産でしたよね。作って壊して、作って壊してっていうのをずっと繰り返して。
YANG 2015年も曲作りをしてたんですけど、その1年に1曲も出来なくて。2016年に入ってようやく。感覚が伝わったっていうか。
JUNYA やりたいものがYANGの中であって、それをみんなで意思の疎通をするまでの時間差というのはどうしてもあるんです。そこがパッてハマったら早いんですけど、そこまでに全然時間がかかってしまいましたね。

FLJ でもそれだけ妥協をしないということだよね。イメージとして確固としたものはあった?
YANG 俺の中ではあったんですけど、それが最初の1年伝わってなくて。
JUNYA 全然ダメでしたね。出すのをやめる、みたいな話も出て。

FLJ それこそいろいろなイベント、ライヴに出演してるんだけど、一瞬にして必ず自分たちの空気に変えてしまうのがFIGHT IT OUTのスゴいところだと思うんだけど、自分たちの中で思い出深いライヴはある?
YANG でも、ダダスベる時はスベるんですよ。
JUNYA だいぶ修行してますよ。
YANG 覆したぞ、っていうのは、2012年のBAYSIDE CRASHですね。俺らの客なんて大していないと思ってたから。俺らも「ファックしてやろう」ぐらいの気持ちでやったら、それが逆に良かった。俺もほぼステージにはいなかったし。
JUNYA いい意味で、毎回同じステージングでっていうのは考えてますよね。こういうイベントだからこういうステージングをするっていうのは一つの手だとは思うんですけど、初めて観たバンドが次に観た時に違ったりするじゃないですか。だからそういう意味では、毎回同じステージングをしますね。
YANG 同じことしかできないから。その都度やり方を変えてたら嘘になる。一つのやり方で受け入れられなかったら、もうしょうがない。

FLJ でもあれだけ強烈なライヴを初めて観た人で、人生が変わった人とかいるんじゃないの?
YANG 地方でスゴい若い子に、「FIGHT IT OUTをハードコアで初めて観た」って言われて。そこからハードコアにハマっちゃってっていう子はたまにいますね。

FLJ でも自分の人生が変わったように、人の人生も変えられるからね。
YANG Fineを見てからですよ。でも俺ら世代は、ペニーワイズ、バッド・レリジョンが入口の人間は多いです。
JUNYA 僕の入口はNOFXですね。昔から速いのが好きでしたね。
YANG 人生が変わったっていうのは、一番はマッドボールですよ。

FLJ よくMCでも「ハードコア・パンクは……」って言ってるんだけど、自分の中でのハードコア・パンクというものは?
YANG ファッションじゃないところですね。よく文化、文化って言うんですけど、文化というよりも人間というか。

FLJ もっと一人ひとりにとってのものかもしれないね。
YANG 「ジャンルなんか関係ねえだろ」ってよく言うんですけど、ジャンルは俺は関係あるんですよ。ハードコア・パンクなものは他にないんで。ハードコア・パンクはハードコア・パンクでしか味わえないんで。

FLJ あと、アルバムの途中と最後にヒップホップのビートが入ってるんだけど、あれはどういうアイデアで入れたもの?
YANG 知立のC.O.S.A.っていう、ラップとビートメイクをやってるヤツがいて。仲の良いDOWN NORTH CAMPのイベントに行った時に出てて。ライヴを観たらヤバいなと思って。そしたら名古屋のイベンターが紹介してくれて。そこから1ヶ月もしないくらいで一緒にやる機会が連続であって。俺らが名古屋に行ったり、こっちでDOWN NORTH CAMPのイベントに俺らが呼ばれたり。その短いスパンの中で急に仲良くなって。で、西海岸のパワーバイオレンスのバンドに、Gファンクっぽいビートが入っていたりするんで、それをちょっと真似したというか。C.O.S.A.も西のヒップホップが好きなヤツで。俺がアイス・キューブの「Ghetto Bird」っぽいトラックを作ってくれって言ったら、スゴくいいのを作ってくれて。他ジャンルであまり影響されないんですけど、久々に影響受けたかな。

FLJ FIGHT IT OUTって、やっぱり等身大の人間の出してくるエネルギーのスゴさにヤラれるのね。自分たちでバンドが大切にしているものっていうのは何?
YANG まあ等身大であることですね。
JUNYA ブレないでずっと続けることじゃないですかね。
YANG 続けられれば続けるっていうだけで。やり方を変えないってことですね。あと、他のバンドでも上っ面の付き合いはしない。本当に仲良くなれたヤツらと動く。

FLJ 今後のライヴは?
YANG 4月から月3~4ぐらいで9月ぐらいまで入れてます。今回はちょっと新しい場所に行きたいとも思うんです。今までにやったことのないバンドともやりたい。初めてやるようなバンドばっかのイベントがけっこう何個かあるんで。VIVISICKの浮間舟渡でもやります。
TOME 今回の3rdの勢いが一番ハンパないんですよ。このFLJが出る頃には初回プレスはなくなっちゃいそうですね。
YANG 若干理解されてきた感はあります。たぶんこの界隈で俺らだけ音のスタイルがあからさまに違うんですよ。逆においしいというか。ここまでスピードにこだわってるバンド、俺らぐらいなんで。
JUNYA 昔からですよね。僕は途中から入ったんですけど、僕が入る前から速いバンドってイメージがずっとあって。
YANG 今この界隈はどう展開させるか、どう落としに持ってくか、そこを凝るバンドが多いんですけど。
JUNYA バカみたいにスピードばっかり追求してる(笑)。
YANG たぶん今のアメリカのトレンドを俺らあんま追わないんで。俺ら、向こうのリバイバルは考えていないんで。リバイバルのバンドは寿命も短いんで。
JUNYA 周期が大体4~5年ですから。
YANG で、そのメンバーがまた別のバンドを組んだりとか。
JUNYA うちは掛け持ちゼロですから。

FLJ 海外での活動は考えてる?
YANG 西海岸が一番行きたいですね。今OKBが、来日したパワーバイオレンスのDespise Youのベースのヤツと連絡取ってるんです。そそれが実ればいいんですけど。フェスとかじゃなくてハウスショーというか、向こうのパワーバイオレンスの雰囲気の中でやってみたいですね。
JUNYA 海外はスウェーデン1本だけですから。

FLJ 今後FIGHT IT OUTでやっていこうということは?
YANG H-BOMBと俺でFAIRY SOCIAL PRESSっていうプロジェクトをやってて。ブッキングとzineとレコードを出すんです。今zineを作ってて、夏前には出せそうで。で、そのイベントを年2回やってて。7月に初台WALLでやるんですけど、それにC.O.S.A.とPAYBACK BOYSが決まってて。あと、レコードのリリースは、FIGHTとSAIGAN TERRORのスプリットを夏頃出します。
JUNYA SAIGAN TERRORとうちの客層は全く違うんで、楽しみです。
YANG でもスタンスは似てるんで。お互い、どこでもやるバンドなんで。

FLJ どちらも会場の空気を変えるバンドだし(笑)。
一同 爆笑
YANG SAIGAN TERRORはけっこう強敵ですよ。カッコいいし、あの面白さ、けっこう持ってくんで(笑)。




『MOST HATED』
(BOWL HEAD inc.)
2月18日リリースの3rdアルバム。

LIVE SCHEDULE
2017.4.1 sat 鈴鹿ANSWER
 KICK BACK presents “ALL FOR ONE”
 ACT: FACECARZ, SLAPDOWN ISSUGI, YUKSTA-ILL, JEVA, 破壊王英亜
2017.4.8 sat 元住吉POWERS2
 ACT: CAL, THE FANGS, BAUMKUCHEN, SUPER STRUCTURE
2017.5.13 sat 新代田
2017.6.4 sun 新宿
2017.7.8 sat 初台
2017.7.16 sun 新宿
2017.7.22 sat 沖縄
2017.8.5 sat 名古屋
2017.8.26 sat 新代田
2017.9.2 sat 高円寺二万電圧

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