歌からラップ、演技までこなすマルチなミュージシャンが待望の1st EPをリリース

PHOTO: Jesse Kojima

From ISSUE 54 (05.31.2017)

BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権をきっかけに、その名を一気に全国区へと広めたEINSHTEINが4月21日に待望の1st EP『19’s MAP』をリリースしたのだが、「EINSHTEIN = ラップ」のイメージを持つ人は多少なりとも驚くはずだ。心地の良いメロディーと飾り気のないストレートな歌声が印象的なこのEPは、元々はバンドに興味を持ち、小学生で作詞を始めた生粋の音楽好きである彼の原点と、今ピュアにやりたい音楽が詰め込まれた作品になっている。バンド好きだった彼がどのようにしてラップと出会い、このEPにどのような想いを込めたのか。リリース直後のEINSHTEINに話を聞いた。

FLJ　音楽はどこから入っていったの？
EINSHTEIN　元々、音楽が好きな家庭で育ったんです。日曜日になると、お母さんが窓を全開にして音楽を爆音で流して踊るみたいな（笑）。2歳上にお兄ちゃんがいるんですけど、僕が小学校3年生くらいの時にはお兄ちゃんはもう音楽にどっぷりハマっていて、RADWIMPSとBUMP OF CHICKENを教えてもらった時に衝撃を受けて、そこから作詞を始めました。

FLJ　どういうところにヤラれたの？
EINSHTEIN　メロディとか歌詞の言い回しとか、もう全部ですね。特にRADWIMPSの「おしゃかしゃま」っていう曲が好きなんですけど、「カラスが増えたから殺します」っていう歌詞があって、「どういう世界観なんだろう?!」って。でも、メロディがスゴく心地良くて、メロディと歌詞の内容のギャップにヤラれて。そういう二面性を持ってるアーティストって良いなって思ったんです。

FLJ　じゃあ、音楽の入りはバンドだったんだ。
EINSHTEIN　そうですね。元々僕はバンドマンになりたかったんで。

FLJ　でも、小学生でいきなり歌詞を書こうとする子ってなかなかいないよね。
EINSHTEIN　僕は当時から小説や漫画も描いてたんで、元々何かを書くってことが好きだったんだと思います。

FLJ　本格的に音楽をやり始めたのは？
EINSHTEIN　高校1年生の時にBAZOOKA!!! 高校生RAP選手権（以下、高校生RAP選手権）に初めて出てからですね。

FLJ　バンドからラップにはどういう経緯で入っていったの？
EINSHTEIN　中学1年生の時にレエゲがめっちゃ好きになったんです。APOLLOさんていうレゲエDEEJAYの方がいて、僕はAPOLLOさんになりたくなるくらい好きで、それでレゲエをやろうと思ったんです。でも、中学2年生の時にお兄ちゃんがラップを始めて、お兄ちゃんが作った音源を聴いた時に「お兄ちゃんもうプロや！」と思って。兄弟がやってたら一番教えてもらいやすいじゃないですか。それで僕もラップを始めたんです。ぶっちゃけ、音楽ができるならジャンルは何でも良かったんです。で、高校生RAP選手権のオーディションに行ってみたら受かったって感じです。

FLJ　高校生RAP選手権の前までのラップのキャリアはそんなに長くなかったんだね。
EINSHTEIN　そうですね。遊びでラップをやってた感じだったので。

FLJ　高校生RAP選手権に出たことによって周りからの見られ方は大きく変わったと思うけど、自分の中でも変化はあった？
EINSHTEIN　そうですね、「俺もしかしてラップでもイケるかも?!」って自分自身思えたし、出れて本当に良かったです。

FLJ　ラップのイメージが強いと思うけど、原点にあるのは歌なんだよね？
EINSHTEIN　原点がそこだったので、メロディも多いですし、「歌モノ」ともよく言われます。でも、ラップする曲もあればメロディを歌う曲もあって、そういうのを織り交ぜて両方使えたらいいなと思ってます。せっかく音楽やってるんだから、一つに絞らなくてもいいんじゃないかなと思って。
小原（事務所スタッフ）　今回の1st EP『19’s MAP』をリリースした後に、「この曲がEINSHTEINのやりたいことならいいけど」みたいな。大人にやらされてるんじゃないかって、SNSにけっこう書かれてたんですよ。

FLJ　ラップのイメージしかない人たちにとっては驚きはあるよね。でも、こういうバックグラウンドがあるんだっていうのを聞けば、今回のEPの曲はスゴく自然な流れなんだろうなって。
小原　今本人がピュアにやりたいことなんですよね。僕もEINSHTEINとは高校生RAP選手権で出会ったから、ラッパーだっていう目で見てたし、そういうカテゴライズをしようとしてたけど、一緒にいるうちにそういうことじゃないんだって気付いて。

FLJ　『19’s MAP』に入ってる曲の作詞と作曲は自分でしたの？
EINSHTEIN　そうです。トラックは作ってもらってるんですけど、歌詞とメロディは全部自分で作りました。

FLJ　曲を聴かせてもらったけど、要所要所で気持ちの良い韻を踏んでるし、ポイントになるメロディのフロウも、やっぱりそこはラップできる人の強みなのかなと思って。
EINSHTEIN　癖付いてるっていうのもあると思いますし、そうした方が聞こえ方が絶対に良いと思うんで、いろんなものを混ぜ込んでいきたいっていう意識をしながら作ってました。あと、歌詞に関しては等身大の自分を書いてますし、変に自分を大きく見せることはしないっていうのは意識していますね。

FLJ　今回のEPを通して伝えたかったメッセージは？
EINSHTEIN　一言で表すと「頑張ろうぜ！」っていうエール的なことですね。僕は今19歳なんですけど、今年の1月に大阪から上京してきて初めて一人暮らしをして、慣れない生活の中でお金がなかったり、めっちゃ不安だらけだけど、自分でどうにかしなきゃっていう中で作った作品だったので。どんな情況でも音楽は絶対にやめたくないから、苦しみながらも夢を追いかけてる同年代の人たちや、頑張ってる方々に送ったエール的な。同時に自分へのエールでもあるんですけど。

FLJ　リリースして周りからの反応は変わった？
EINSHTEIN　iTunesのヒップホップチャートでは1位になれて、総合チャートでも4位まで行けて、日本人の中ではトップになれたり、リード曲の「1210 -I Need You-」が今有線でガンガン流れてるみたいで、TwitterとかSNSでもリスナーさんの感想をいっぱい見ますし、地元の大阪の友達から「今コンビニで流れてる！」っていう連絡をもらったりするので、自分でも想像してた以上の反響ですね。

FLJ　映画に主演もしてたよね？
EINSHTEIN　『唾と蜜』って映画で、今年公開予定ですね！

FLJ　ティーザーを観て、演技がスゴく上手いと思ったんだけど、演技の経験はあったの？
EINSHTEIN　MVとかでの軽い演技はしたことありましたけど、本格的な演技は今回の映画が初めてですね（笑）。
小原　初めてでいきなりベッド・シーンっていう。
EINSHTEIN　親には見せれないですね（笑）。

FLJ　元々この映画の関係者と繋がってたの？
小原　全く繋がりはなくて、うちの会社にウェブサイトのINFOアドレスにメールをくれたんです。でも、映画の企画とかって、怪しい話とか微妙なものも多いじゃないですか。しかも主演を張らせてもらうってかなりの重責だし、中途半端に趣味で作ったみたいな感じの映画だとEINSHTEIN本人にとっても意味ないなと。で、監督に実際会ってみたらそんな怪しい感じじゃなかったので、まず安心して。で、「やるなら自分らも良い作品にするためには全力で協力させてもらいますよ！」って、ラッパーとかアーティストに出演してもらったり、実際ストリート・シーンにいる人たちをエキストラで参加してもらったり。そういう面でもスゴくリアルで面白い映画になっていると思います。

FLJ　今回、最近働き始めたSUPRA TOKYO フラッグシップストア原宿で取材をさせてもらっているけど、ここで働き始めたきっかけは何だったの？
EINSHTEIN　僕、人見知りで、人としゃべるのもそんなに得意な方ではないし、音楽以外で人前に立つことは避けてきた感じだったんです。でも、せっかく上京してきたんだから、そういうのも含めてプライベートからカッコ良くらないとって思って。それで、紹介をしてもらって何度かお話をさせてもらって、本当にカッコいいなと思って。音楽だけじゃなくて、内面的な部分も身なりとかも、もっと自分を磨きたいなと思ってお願いをしました。

FLJ　今後の目標は？
EINSHTEIN　今回EPをリリースしたので、年内にはアルバムを作りたいと思っています！　あとは、自分の武器であるメロディの部分をもっと磨いていきたいですし、とにかく何でもできるっていうようにしていきたいと思っています。将来的には、作詞作曲だけじゃなくてトラックを作ったりプロデュースもしてみたいですし、他のアーティストに歌詞の提供をしたり。音楽にまつわることはすべて経験してみたいっていうのが目標ですね。僕は単純に音楽でスターになりたいんです。今はまだ、その階段の1段目に足を掛け始めたくらいで、まだ1段目を登ってもないくらいなんで、まずは今年1段目を登って、スターへの道を駆け上がれるように頑張りたいと思っています！

『19’s MAP』
4月21日リリース
（FROG MUSIC）

Twitter
@777_rap

Instagram
@einshtein777