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C.O.S.A.

August 24,2017

知立出身のラッパー/ビートメイカー、待望のソロ2作目をリリース

From FLJ ISSUE 55(07.31.2017)

PHOTO: Jesse Kojima

愛知県知立出身のラッパー/ビートメイカーのC.O.S.A.。2015年の自主制作1stアルバム『Chiryu-Yonkers』から2年、昨年のKID FRESINOとのWネーム・アルバム『Somewhere』、Campanellaとの『COSAPANELLA』の再発を経て、2作目のソロ作品となる、6曲入りの『Girl Queen』をリリースした。ストリートの言葉で熱い胸の内を文学的なストーリーテリングで紡ぎ出す、唯一無二のヒップホップを聴かせるC.O.S.A.。ヒップホップとの出会いから新作についてまで、いろいろ語ってもらった。

FLJ そもそも音楽、ヒップホップとの出会いはどこから?
C.O.S.A. 小学3年生ぐらいだと思うんですけど、たまたま買ったのがLL・クール・JのCDで。洋楽コーナーの1位だったんですよ。その後はDRAGON ASHじゃないでしょうかね。そこから、6コ上の姉ちゃんがキャディラックのローライダーに乗ってたんで、そういうカルチャーからって感じです。

FLJ 12歳からリリックを書き始めたんだよね。
C.O.S.A. 小6からです。ラップを聴き始めて、聴き始めると同時ぐらいに自分でもやりたいなと思いましたね。

FLJ 16歳でライヴ活動も始めてるんだよね。
C.O.S.A. 初めてクラブに行ったのは中3ですね。高1で自分もライヴやり始めて。名古屋です。

FLJ 当時の名古屋だとM.O.S.A.D.?
C.O.S.A. はい。自分はそこが好きで、どっぷりその辺に浸かってたんで。その人たちを観にいつも名古屋に行ってました。

FLJ それこそ今、FIGHT IT OUTと共演してるけど、当時の名古屋は、イベントでもMURDER THEY FALLがあったし、POUNDとか、ヒップホップとハードコアの共演は多かったよね。
C.O.S.A. スゴかったですね。MURDER THEY FALLは行ってましたよ。

FLJ ヒップホップを好きになった時、その周辺のカルチャーも好きになった? リリックにもジェイ・アダムスとか出てくるから、スケートボードも好きなのかなと思って。
C.O.S.A. 好きですね。クルマとファッション。スケボーを好きになったのは20歳過ぎてぐらいからなんですけど。まあいろんな音楽を聴い
て、最終的にヒップホップに戻ってきたんです。

FLJ ヒップホップはどの辺りが好きだった?
C.O.S.A. 中学校の頃はウエストコーストが好きでしたね。2パックとか。ギャングのカルチャーもスゴい好きだったんで。そこからNYも聴くようになって。どこの土地でも関係なくカッコいい人は聴くようになりましたね。

FLJ ラップもビートメイキングもやってるんだけど、どちらが先?
C.O.S.A. 全然ラップの方が先です。ビートは高3の時に作り始めました。

FLJ ラップを始めていくうちに、自分らしさをどのように追求していったの?
C.O.S.A. 一回、自分はラップをやめたんです。やってなかった時期が2年ぐらいあって、2013年からまたやり始めたんです。自分がやらずに人のライヴを観てると、「何でそんな無駄なことを言うんだろうな」とかスゴく思う時があって。それがけっこう大きかったんです。自分が思ってることを言ってるラッパーがいなかったから。それを言おうかなと思って。

FLJ 一回ラップをやめようと思った理由は?
C.O.S.A. 遊びたかったからですね(笑)。ビートは作ってたんですけど、ラップはしてなくて。遊びのマインドになっちゃうと、やっぱりラップってあまり書けなくなってくる。2年間ぐらいはずっと遊んでばかりいましたね。

FLJ 遊びは女とか、夜の街に繰り出すとか?
C.O.S.A. そういうのが多かったです。毎週毎週、いろんなところに行きましたね。クラブに行ってもほとんどナンパばっかりだったんで。でもそれを2年間ぐらいやって、自分の中で結局何も残らなかったんで。それでまたやっぱり音楽やりたいなと思って。

FLJ それでまたラップをやろうってなって、アプローチはどう考えたの?
C.O.S.A. 自分に嘘をつかないこと。思っていないことを言わない。逆に、思ってることをいろんな理由でやめておこうっていうのはなくそう、とか。思ってることは全部言う。さっき言ったように、自分が思ってることを代弁してるようなラッパーが本当いなかったんで。それを言いたいのが一番でしたね。

FLJ テーマやストーリーは設定する方?
C.O.S.A. そうそう。

FLJ ストリートの言葉を使ってるんだけど、文学的なストーリーテリングだなと思って。
C.O.S.A. いや、ありがたいです。確かに、起承転結はスゴく考えてますね。文としても成り立つように。そこを崩すのも面白いとは思うんですけど。オチはつける、伏線を回収していくっていうのは思ってます。

FLJ 今回の『Girl Queen』はソロで初の流通作品ということで、意識したことは?
C.O.S.A. 何もないです。いつも通り。

FLJ 女性をテーマにして組み立てていった感じ?
C.O.S.A. そうですね。そのテーマはありましたね。どの曲にもどこかしらそのラインが入ってるし、女の人のことを歌ってる。自分は昔から女友達がスゴく多くて、どっちかって言うとギャルの子が多かった。女の子もみんなスゴく遊んでたし、シングルマザーになっちゃった子、子供ができたんだけど認知受けてない子とかもいる。そういうヤツに向けてってわけじゃないですけど、そういうヤツのことを思いながら書いたのはありますね。でも、『Chiryu-Yonkers』の時と変わってないです。俺は地元とかでもあまり友達が多くないんで、スゴい限られてるんで。いつもその人たちのことを思って歌ってます。

FLJ 「I Can See Your Palm」を聴いてたら、子供ができたのかな?と思ったんだけど、それはフィクション?
C.O.S.A. 子供ができたということに関してはフィクションです。ただ「I Can See Your Palm」の歌詞の内容は全部現実のことを書いてま
す。だからあの曲は自分と彼女が結婚して、子供ができたら、っていう時のことを歌ってるんです。ただその内容に関しては全部事実です。

FLJ それこそ2パックにしても、ノンフィクションとフィクションを交えてリアルなことを歌ってるわけだし、これはそういうアプローチ?
C.O.S.A. そうですね。例えばビッグ・Lとかも、1stの和訳を読んでると、「俺は5人殺してきた」みたいなラインがあるんですけど、それを俺らも事実としては受け取ってないというか。でも、そういう街だっていうことをビッグ・Lは言いたいんだろうし。ビギー(ノトーリアス・B.I.G.)も諸説ありますけど、ビギーのお母さんが「あれは全部フィクションよ」って言うぐらいだし。実際はそういう人物ではなかったのかなと思ったりもしますけど。

FLJ 「La Haine Pt.2」は元々はFIGHT IT OUTの『MOST HATED』の収録曲だよね。
C.O.S.A. はい。元々FIGHT(FIGHT IT OUT)にskitで提供してたビートで。あっちはYANGさんから「音をスゴく汚くしてくれ」って言われて、そういうミックスにしてあるんですよ。こっちはヒップホップで鳴るようなミックスにしてあるんです。FIGHTにあげた後に、自分で歌詞を書いて、YANGさんに「ちょっとパート2を書いたんですけど、自分のヤツに入れていいですか?」って言って、「いいよ」ってもらって、こっちに入れたんです。

FLJ FIGHT IT OUTとつながったいきさつは?
C.O.S.A. DOWN NORTH CAM主催のREFUGEE MARKETに、俺とFIGHTが別々で呼んでもらって。あと、名古屋のハードコアの後輩にCherryっていうのがいて、つなげてくれたんです。名古屋はヒップホップとハードコアが近かったというよりも、ほとんど同じところにみんないたんで。だから自分からすると、ハードコアに抵抗は全くなくて。名古屋ではそれが普通だったから。

FLJ 7月3日にWALLで行われた、FIGHT IT OUTと共演のライヴはどうだった?
C.O.S.A. みんな気合が入ってましたね。YANGさんも言ってくれてたんですけど、自分目当てに来てたお客さんもけっこう多くて。そういう人たちが逆にFIGHTとかPAY BACK BOYSを観て、ハードコアって面白いんだなって思ってくれたらうれしいですけどね。なかなか交じるのっ
て、今あまりない機会だと思うので。

FLJ ラッパーとして単独作品を出したり、コラボをやったり、あとはビートメイカーとして活動する中で、自分のスタンスの違いは意識してやっている?
C.O.S.A. ありますね。全然違います。ソロの時はメッセージだけです。フィーチャリングの時は、割とその人に合わせるというか。ソロではクラブの話はあまりしないようにしてますね。自分がラップをやってなかった時期、みんなクラブの出来事しか歌っなかったから。私生活とか、仕事してたりとか、クラブにいない時の話をしているラッパーでカッコいい人がいなくて。まあ、いたんですけど、ストリート的なニュアンスではなかったから。自分の中でクラブって遊ぶところだったから。あそこで幅を利かせたいっていう気持ちは今もあんまりなくて。だから、私生活での思いを歌いたいっていうのはありましたね。

FLJ ビートメイカーとしては?
C.O.S.A. ビートメイカーとしては特にないです。

FLJ でもスゴくいろんな曲を作ってるよね。ジャズやソウルから、ドリーミーなのもトラップもあるから、相当いろいろなものを聴いてるのかなと思って。
C.O.S.A. いろいろ聴いてはいますね。その都度その都度作りたい時に作っているので。ただ昔の曲に関して言うと、サンプルに引っ張られることの方が多いですね。

FLJ 過去のブラック・ミュージックを遡ることもあるだろうし、最新のUSのヒップホップを意識することもあると思うんだけど、その辺は?
C.O.S.A. 自分はやっぱり新譜が好きですね。最新のUSの動きに関してももちろん、音質とかミックスの仕方とかも、アメリカのヒップホップはスゴく移り変わりが早いから、半年もすると古くなってしまう。それを追ってるのが楽しいですね。

FLJ 『Girl Queen』にしてもスゴく丁寧に作られてるよね。ビートメイカーでありながら自分のトラックは1曲なんだけど、いろんなプロデューサーのトラック選び、テーマの設定も含めて、どのような作り方をしたのかな?
C.O.S.A. そんなに切羽詰まった感じは自分ではなかったですね。書きたいテーマが先にあって、そのテーマに合うビートをひたすら待ってい
て。

FLJ テーマありきでビートを選んだんだ。
C.O.S.A. そうですね。だからスゴくいろんなビートメイカーの方にビートをいただいて。大量に聴いた中から選んだのが今回の6曲ですね。でもその結果スゴくいいものができたと自分では思ってるんで。

FLJ けっこう特殊なトラックなのにラップのフロウを安定させて聴かせる感じもヤバいなと思って。
C.O.S.A. 「Ridin’」のビートを作ったV Donとかは、現行のNYのヒップホップを追ってる人は反応してくれていますね。ものスゴく過小評価されてるプロデューサーだと思うんで。今がNYのラッパーが元気な時代だったら、きっとレジェンドになれてるプロデューサーだと思うんですよ。エイサップ・ロッキーとかもやってるけど、売れていないストリートのラッパーにばかり提供してるから。まあ俺らはそれが好きだし、俺らが買える値段なので、俺らにとってはいいことなんですけど(笑)。

FLJ 今回、『Girl Queen』を出したことによってまた次にやりたくなったことは?
C.O.S.A. 俺、浮き沈みがあまりないんですよね(笑)。作ってる時も、別にスゴく悩んだりとか、逆にブチ上がったりとかもあまりなかった
し。ずっと淡々とやり続けてるっていう感じなんで。それの延長線上にまた次のものができるという感じだと思うんです。

FLJ 今後アーティストとしてどういう存在になっていきたい?
C.O.S.A. 音楽のスタンスとしては、こういう感じが続くとは思うんですけど。売れなくていいと思ってるタイプじゃないんで。ストリートのヒップホップをやりながら、枚数を結果としてきちんと出していきたいとは思ってますね。自分が中学生、高校生の頃って、今のヒップホップに比べてスゴく売れてたじゃないですか。ストリートの人たちはストリートのをやって売れてた。またそういうヒップホップが売れていくといいなと思ってますね。今回の最初の4曲とかも地獄みたいな曲が多くて。でもそれを10代の子とかが聴いてくれてるっていうのは、自分が中学校の時に経験してたことと同じことだと思うんです。ストリートのヒップホップをやる自分が結果を出していかないとと思いますね。ライヴに来るのも若い子が多いので、それを意識して書いてるのかもしれないですね。俺も今年で30歳になるし、男って年取っていくとどんどん頑固になるし、認めるということがスゴく難しくなってくると思うんですよね。粗探しをして、「あいつは違えよ」って言う人が多くなってしまう。例えばトラップとか、自分が理解できないものをイコール、ダサいってなってっちゃう。それって違ってて、自分が感覚的についていけてないだけなんですよ。ヒップホップはそれだとダメだと自分は思ってて。ガキが聴いてもわかるようにしてるし。でも逆に、俺と同い年のヤツらが聴いても納得できる部分っていうのを、スキルとして残しておけば、俺と同い年のヤツらが聴いても小っ恥ずかしくない。でも小っ恥ずかしい部分がなくなっちゃうとヒップホップってダメだと思うんですけどね。そこをカバーする書き方とかスキルは絶対必要だと思うんです。

FLJ 今後の予定は?
C.O.S.A. ライヴは把握できないほどいっぱいあります(笑)。まあライヴは全然余裕なんで。俺ら名古屋で本当5人とか10人とか、そんな人数の前でずっとライヴをやってきた叩き上げなんで(笑)。やっぱりそこは東京と地方で違うと思うんで。俺らはイントロでワーッてなることなんて、一切経験してこなかったですから。だから、ラップしてって、途中から上がってく。「あいつのラップ、ヤバい」っなって、曲が終わって客が上がる。それが名古屋のライヴのやり方だったから、どこに行ってもできる。ケツで盛り上がると、かませたんだなって思いますね。

FLJ 最後に、ヒップホップの良さって何だろう?
C.O.S.A. 単純にカッコいいと思うんですよね。見てくれとかも。あと、生活している中で、その状況にピッタリのラップのラインがどこかにあるんですよ。それがけっこう上がるというか。今まさにあいつがラップで言ってた状況に自分もある、みたいな。俺、M.O.S.A.D.だったり、ANARCHYとかSEEDAのラップがスゴく好きだったんで、彼らのヴァースの中の一部分がピッタシハマる時が生活してるとあるんです。それが良さですね。




『Girl Queen』
(SUMMIT)
7月5日リリース

www.summit2011.net

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