FACEBOOK SHARE

TWITTER SHARE

BRAHMAN

February 08,2018

約5年振りのフルアルバム『梵唄 -bonbai-』をリリース

From FLJ ISSUE 58(01.30.2018)

PHOTO: cherry chill will.

2月7日、BRAHMANが約5年振りのフルアルバムとなる『梵唄 -bonbai-』をリリースする。そしてその2日後の2月9日には、日本武道館でワンマンライヴ『八面玲瓏』を行なう。1995年結成、今年で22年目を迎えるこのバンドは、新作においてもブレないサウンドとスタンスを見せながら、今なお音楽と言葉で自分たちにしかできないチャレンジを自らに課し、歳を重ねた者だからこそ歌える歌を歌うようになってきた。「怒り」と「愛」の同居とでも言えばいいのだろうか。様々に込められた思い。舞台の幕開けのような「真善美」で始まり、メロディック・パンクのストレートな曲調で辛辣なことを歌う「EVERMORE FOREVER MORE」、読めない曲の展開がスリリングな「AFTER-SENSATION」、映画『あゝ、荒野』の主題歌で細美武士(the HIATUS、MONOEYES)がコーラスで参加した「今夜」、KO(SLANG)がヴォーカルを務めた「守破離」、東京スカパラダイスオーケストラのNARGO、北原雅彦、GAMO、谷中敦が参加した新しいアレンジの「怒涛の彼方」、シングルでも発表した怒りの歌「不倶戴天」、ハナレグミがコーラスで参加した「ナミノウタゲ」、中川敬(SOUL FLOWER UNION)、山口洋(HEATWAVE)、うつみようこが参加した「満月の夕」のカバーなど、全12曲、本当に様々な曲が収められているし、バンドがこれまでに積み重ねてきたものが詰まったアルバムになったと思う。アルバムのタイトルにバンド名の由来である「梵」を冠して、『梵唄 -bonbai-』としたのにも何か思いがあるに違いない。ヴォーカルのTOSHI-LOWに話を聞いた。

FLJ バンド活動を20年以上やってきて、新曲とかニュー・アルバムを作るのって、どういうモチベーションでやっているの?
TOSHI-LOW もう同じことをやってもドキドキしないじゃないですか。だから、いかに自分がドキドキするかですね。だからと言って、新しい音楽を貪欲に取り入れますっていう歳でもないし、むしろもう新しい音楽は聴かなくなってる。そうすると、自分が通ったはずなのにちゃんと聴いてなかったものに、今グッとくる瞬間とかがあって。曲を作ってても、俺たちが奇をてらいすぎて、変えよう、変えようと思って一生懸命やるのよりも、真っ直ぐにやることで逆にドキドキしたりして、このまま行っちゃっていいの?って思うんですよ。そういうドキドキをけっこう指標にしてやってますね。そこは音楽的じゃなかったりするんです。リズムが遅い、速い、うねる、とかじゃなくて、グッとくるものを作ろうってなってますから(笑)。

FLJ そこはもう感覚的なところなんだね。まずは自分が燃えないと始まらないんだね。
TOSHI-LOW そうですね。理屈じゃないところに入ってしまう部分ですよ。20年超えたバンドを自分がやってるなんて信じられないし、ガキの時に、例えば、アグノスティック・フロントが結成20年を超えた時一緒にやって、何か言い表せないけれどスゲエ!って思ったし。言葉にできないけれどグッとくる部分ですよ。曲作りにおいても、結局は「グッとくるヤツ」としか言えないんです(笑)。

FLJ 20年以上やってると、そこの部分って、メンバー同士、阿吽の呼吸でわかり合えるんだ?
TOSHI-LOW それがそうならないんですよ。

FLJ そうなんだ?! いつもどうやって曲を作ってるの? 誰かがアイデアを持ってくるところから始まったりするの?
TOSHI-LOW 始まったりもするし、ゼロから作ったりもします。

FLJ そこはいろいろなんだ?
TOSHI-LOW 始まりは全く違うんで。そこからAメロができて、じゃあBメロをどうする?ってなって、じゃあサビをグッとくるものにしたいからBを抑えようか、みたいな。でも「抑える」ってどういうことよ?って。そういうのをいまだにやってますよ。だから自分の思い通りにならない。でもそれが新鮮で。俺が口で言ってることをドラムで表現しても、「手が3本あっても足りねえよ」って言われるし。「じゃあどうできる?」「こうこうこう」「それ、近い」とか。だからこそ面白いんだと思います。俺が頭の中で作るドラムなんかつまんないと思うんですよ。だって、俺がわかる範囲のことだから。ドラム、ベース、ギターと付き合って、それぞれのパートが違うことを出してくるから、そこにやっぱり面白さがある。一人でパソコンで作る音楽をやりたいわけじゃないし。すれ違いの部分がスゴくふくよかで面白いんですよ。

FLJ 産みの苦しみはある?
TOSHI-LOW みんな正解がわからないんですよね。原型が全くなくなったりすることも多いので。「あれ、遅い曲やろうって言ってなかった?」って、スゴい速い曲になったりして。全く違うものになったり、一番初めにできてたパーツがなくなったりもする。

FLJ 曲ごとに作り方が違うし、毎回作り方が違うっていうことだね。
TOSHI-LOW 毎回違いますね。でもその毎回違うのをみんなで会話しながら作っているから、ルーティンじゃないし、変てこりんだけど、俺たちにしかできない積み木みたいなものができてる。

FLJ BRAHMANって、初期の段階から今につながる音楽スタイルを確立してたと思うんだけど、そこからブレないまま、毎回エキサイトできる面白い曲作りをしているなと思って。
TOSHI-LOW エキサイトして心がキュンとするようなことをやりたいんですよ。

FLJ パンクが根底にあるから、アグレッシヴな怒りのエネルギーがあるわけだけど、一方で、救いというか、愛の部分もある。その双方を兼ね備えているところがBRAHMANの魅力だと思うんだ。
TOSHI-LOW 大野さんも、その「愛」の部分って深くなってきません?

FLJ それはなったね。
TOSHI-LOW そうでしょ。

FLJ 最初TOSHI-LOWと知り合った頃なんて、愛なんて関係なかったから(笑)。
TOSHI-LOW 俺なんて「みんな死ね」と思ってましたから(笑)。でも今は、できれば出会った人みんなが幸せになってほしい。

FLJ ヤバいね。長年の付き合いでこういう話が出るのは(笑)。
TOSHI-LOW でも、今も怒りもあるんですよ。もちろんそんなに簡単なことでは怒らないですけど。ただあの頃、「いやあ、愛だよ」なんて言ったら、食われちゃうというか、弱みになってしまってたと思うんです。本当はピュアな部分があるくせに、わざと汚してるというか。俺は絶対に泣かない、みたいな。めちゃ泣いてるくせに。そういうのがありましたね。でも今はどちらの気持ちに対しても正直になりますよ。

FLJ そういうのって、徐々に来たの? 何か転機があったの?
TOSHI-LOW 何個かあるんじゃないんですか。家族ができたっていうのもあるし、震災があって、全く知らない人たちの生き死にを見たという体験もスゴく大きいですよね。そうするともう、何だったんだろう、俺が今までこだわっていたことは?ってなってしまう。自分の無力さも感じたし。でも自分が少なからず役に立つというか、ありがたがられることもわかった。俺にもできることがあるんだなって。それが同時に来たんです。自分ができることを一生懸命やるっていうのがスゴく大事なんだなって、そんな普通のことがやっと今わかってきたんです。

FLJ 自分にしかできないことで、人の役に立つことを意識するようになったんだ?
TOSHI-LOW それを自分ができないことでやりたいんですよ。俺はみんなができることの駒になるようなタイプじゃないし。何か俺がもっと得意でできることってないのかな?っていうのをいつまでも探していたい。俺は音楽にもまだそういうのはあると思うんです。でもそれを個人単位で考えていなくて。バンドでやりたいんですよ。

FLJ やっぱりバンドマンなんだね。
TOSHI-LOW バンド以外の表現方法を音楽でやりたいと思っていないんで。個としてスゴい良いヴォーカルになりたいとは思ってますけど、良いシンガーになりたいと思ったことは一度もないんで。

FLJ でも、ヴォーカリストしてスキルもアップしてるだろうし、表現力も豊かになっているよね。
TOSHI-LOW そこは意識しますね。だから一番やってなかったのは音楽で。ミュージシャンぽいことをやってこなかった。だってそうじゃないですか。俺たちの時代、ああやってストリート兄ちゃんみたいなところから出て来て、裏原宿とかファッションも絡んできて。でも肝心なところが抜けていて。あれ、みんなで音楽は何をやったっけな?って。集まって遊んではいたけど。音楽を音楽として本当に熱中してたのかな、ちゃんと練習もしてなかったんじゃないかなって思って。

FLJ そういう気持ちがあったんだ?! でも2000年ぐらいまでの時期はそうだったのかな。僕もあの当時、遊びすぎて覚えていないもん。よく雑誌を毎月出せたなって思うし(笑)。みんな遊んでたもんね。
TOSHI-LOW その当時も、リハに入れば一生懸命やったろうし、向き合ってたとは思うんですよ。その瞬間瞬間にやらなくてはいけないことがあるから。今よりもイメージ的にストイックにやらないとライヴもやれなかったし。でも、結果、やってることはスゴい遊んでることだった(笑)。

FLJ でも、1999年にTOY’S FACTORYと契約を交わして、メジャーデビューした頃は、セールス結果も出したし、気合いは入ってたんじゃないの?
TOSHI-LOW でも売れるためにやってなかったので。

FLJ 結果として売れたとしても、良いアルバムを作ろうと気合いは入れてたでしょ?
TOSHI-LOW 謎の自信とかあるじゃないですか、20代中盤までって(笑)。何か知らないけど、「俺イケる」みたいな。あれが終わってからですよね、一回身持ちが崩れたのは。

FLJ じゃあ、2000年代は何を考えてたの?
TOSHI-LOW 寂しいけど、「寂しい」って言えるキャラでもなかったので。その頃は。

FLJ 周りのシーンも変わっていく中で考えたことは?
TOSHI-LOW 自分たちが忘れ去られていく感覚はありましたよ。でも一回ポコンと顔が出ると、「名前は知ってます。けど観たことはないです」みたいに言われてしまう。あの辺からフェス・ブームになってるじゃないですか。2000年代中盤、後半はそれが如実に出てて。イベント側は俺たちを高く評価してくれるんだけど、意外に客は通り過ぎてったりして。それが目に見えてわかった。その中でまた新しい自分みたいなものを模索してたんだとは思うんですけど。

FLJ バンドでもそれは模索してた?
TOSHI-LOW 個人のことなので、そこはわからないですね。突き詰めてみんなに話したこともないし。

FLJ でもその時期からはどうやって抜け出したの?
TOSHI-LOW 抜けてない。抜けてなくて、最終でああもうダメだなって思ってたら震災が来てしまったんで。

FLJ じゃあけっこう長かったね。
TOSHI-LOW 10年ぐらいありましたね。そのうちに家族もできちゃうし。この前まで人のことなんて何にも考えてこなかった人間が、将来を考えだして、それで遊んでちゃダメだなって考えても、いきなり変わらないですよね。そうすると、遊んでる自分もいるし、変えなきゃいけないっていう自分もいて、それでどちらもストレスになっていく。そういう二重のものがずっと続いてるような感覚は、その10年ぐらいずっとあったんです。

FLJ でも震災後は自分と聴き手との関係も変わったのかな? MCもやるようになったし、音楽にもMCにも説得力が強く出てきたから。
TOSHI-LOW やっとそこで自分から何でもやるべきだなと思ったんです。そうすると、’90年代もスゴく恵まれてたなって思うようになってきて。あの頃は良かったなんて思わなかったし、あの頃はクソだって言い張ってた2000年代もあったんですけど、やっぱり恵まれてたんですよ。あの時みんな盛り上がってたから、いろんなところにも行けたし。DEVILOCK NIGHTで香港にも行ったな、なんて思い出したし。それこそ大野さんとは六本木にだって遊びに行ったじゃないですか(笑)。今考えると、スゴく豊かだったんだな、幸せだなと思って。

FLJ 何だったんだろうね。若かったからいろんなことに感謝できなかったんだろうね。
TOSHI-LOW できなかったですね。手柄は自分のものだと思ったし。

FLJ みんなそうだったよ。
TOSHI-LOW 俺はスゲエ、嫌なことはあいつが悪い、みたいな。そういうのはあったな。

FLJ 僕も、ダサいヤツは雑誌に載せないとか、他の雑誌はみんな敵だから仲良くしないとか。そういうのはあったよ。
TOSHI-LOW バンドもそうでしたよ。

FLJ でもあの当時のシーンの中では若手だったじゃない? あれはどういう感覚だったの?
TOSHI-LOW 若手で良かったなと思うのは、俺は勝手にみんなのことを見てる立場だったから。Hi-STANDARDとかCOKEHEAD HIPSTERSとかSUPER STUPIDとかスゲエな、っていうまま終わっちゃったんで。自分たちが人気あるって思わないままAIR JAMが終わってしまったから、それが良かったというか。みんな観に来てるんだなと思ったら、意外と俺たちのことを観に来てる人も多いんだな。そんな感覚に近かかった。で、今はもうないんですけど、あの当時は「AIR JAM系」って言われてたのを自分たちからどうしても外したかったんです。そこの一つの駒じゃないんだよって。そういう抗うことばかりに力を使ってたんです(笑)。

FLJ もう抗わないのね。
TOSHI-LOW もう抗わないですよ。波が来たら乗るし、来なかったらじっと待ってるし。何より自分で泳げばいいわけだから。


TOSHI-LOW(Vo)

FLJ 今回のアルバムっていうのは、そういういろいろなものが積み重なったところでできたものなのかな? それとも何か大きなインスピレーションがあって作ったもの?
TOSHI-LOW 意味わかんなくやってたことってあるじゃないですか。そういうものが全部積み重なって、今来てるような気がして。音楽性にしても、難しいことをやらなければ、その時の音楽として何回も同じことをやれば良かったわけですよ。でも自分たちが、やっては捨て、やっては拾いみたいな感じでいろんなことをやり始めたのは、やっぱり自分たちでワクワクしていたいし、ドキドキするような音楽をやっていたいからで。そういう中で背伸びしたり、できもしないのにやってみたりして、今まで20年やってきたのが、今やっとできるようになったなっていうアルバムだなと思うんです。それがうれしいし、楽しいんですよ。

FLJ でも本当に良いアルバムだと思うな。BRAHMANにしかできないことをやってるし、そこを突き詰めてきたからこそできたアルバムなんだと思う。さっきも言ったように、怒りと愛が同居しているし。それこそ去年の4月に出したシングル「不倶戴天」は怒りの曲だったけど、その後10月に出したシングル「今夜」はいきなりバラードだったから、やっぱり双方の要素を見せているわけだよね。
TOSHI-LOW 結局どちらもありますから。大人になって片方が消えたのかなって思ってたんですけど、そうじゃなくて、どちらも見えるようになったんだなと思って。時には矛盾と呼んでしまうことを、今は「いや、そういう面もあるし、こういう面もあるし、どちらも嘘ではない」って言える。ただ、バランスが崩れてどちらかになりすぎると、例えば、愛だって言いすぎたら嘘くさくなるし、怒りだったら自分の身持ち崩すぐらい自分の体を焼いてしまうことになりかねないと思うんですよ。

FLJ でも、怒りの歌の「不倶戴天」にしても、最後に歌詞で「すなわち 赦すってことだ」って出てくるでしょ。あれは衝撃だったな。
TOSHI-LOW あの段階では全く赦してなかったんですけど(笑)。やっと年が明けてから赦せるようになりました。俺、いつも遅いんですよ。自分では気づいてはいるんですけど、実感するのは遅くて。

FLJ じゃあ、あれはポロっと出た感じ?
TOSHI-LOW そうなんです。こんなに怒ってたのに、何で最後に俺は赦してしまったんだろう?って。でも「赦すってことだ」っていうその一言でしか歌詞を締められなかったんです。あ、赦しちゃったと思って、憮然としない自分もいて。でも1年ぐらいかけてやっと、赦さなきゃダメだ、赦して良かったなと思って。だから、「不倶戴天」が出た時のインタビューではそのことをちゃんと話せていないんですよ。

FLJ 割と直感的に曲を作って、後からじわじわ来るのかな?
TOSHI-LOW 割と歌詞はそうで。もちろん全部歌詞を読んでわかるってことも大事だけど、自分でも謎でこれを使いたいっていう歌詞が必ず出てくるんですよ。でも、それを残したいし、使いたいんですよ。

FLJ 詩人だね。まず言葉が出てくるんだね。
TOSHI-LOW 元々言葉には強いんですよ。興味もあったし。でも、音楽は5段階で2以上取ったことがないですからね。

FLJ パンクだったら楽器が弾けなくてもできるって思ったんでしょ。
TOSHI-LOW 本当、今でもその感覚なので。

FLJ 今回のアルバムで表現している怒りについては? 1曲目の「真善美」から一度きりの人生を生き切ることを歌ってるし、そういう生き切れない人、時代や社会に巻き込まれているだけの人に対するメッセージもあるのかな?
TOSHI-LOW 自分の周りにいる人でそういう人はどんどんいなくなっていきますから。でも、踏み外せばすぐに自分もそこにいなくなるんだろうなっていう警戒感はあります。たぶん音楽を始めたのも、グレたのも、すべての理由は、自分の中の「俺って何?」っていう漠然とした謎の部分で。俺は何のためにこの世に生まれてきて、何のために死んでいくのか? それを誰も説明してくれない。何これ?!と思って。それが自分をイライラさせた時は、もっと悪いことをしてスカッとしたんだと思うし。でも、それをもっと音楽的に自分でやることによって整っていくというか、バンドと音楽は得意というわけじゃないけれど、本当に俺に合ってると思うんですよ。こんなに肉体的にも、精神的にも、自分の五感で伝えることができるもので、面白いものを自分で持ってるんだなと思って。それを何で諦めようとしてたんだろうと思って。たぶんみんなも自分の中に素晴らしいものを持っていて、そこに気づくことによって世界がいきなり変わることもあると思う。俺はたぶんそれで変わったんですよ。

FLJ 音楽を諦めようと思ったことがあったの?
TOSHI-LOW 何度もありましたよ。

FLJ それはどうやって乗り越えたの?
TOSHI-LOW 次のことが始まったからですね。恥をかいたらもうちょっと上手になりたい、次こそは、って思うから。でもそれもなくなったのが2011年の頭ぐらいで。もういいかな、もうこれ以上成長もしないだろうなと思って。だけど、もっとスゴい現場の中に身を置いた時に、スゴく冷たい言い方をすれば、人の死を見て、自分が生きてることをわかってしまうんですよ。「俺は生きてるんだ」って、瓦礫の真ん中で思ってしまったんですよ。これは申し訳ないと謝ってもしょうがないけれど、毛布に包まれた遺体がまだ引っ張り出されている横で、「俺は生きてるんだ」と感じてしまった。だから、生きてるって何だろう? 生きてることをもっと自分が実感して意味があることに使いたいなって思った。だから、今自分がやってることは、自分で選んでやってることなんです。でも、何のために生きてるんだろう?っていうことは、ずっと自分に対して問いてたはずなんですよ。それが、単に生活して、心臓が動いてるっていう意味での生きてることにしか感覚を使わなくなってしまって。それでたぶん自分が元からやりたいことからズレていったのかな。だからそれがストレスになっていって、音楽のことを諦めたいと思ったんでしょうね。

FLJ 音楽的なことも聞きたいんだけど、今回、KOHKIのギターのエッジとメロディックなフレーズが炸裂してるし、ドラムとベースもここぞというところで面白い展開を打ち出してきているなと思って。
TOSHI-LOW そうなんですよ。KOHKIはブルースの先人たちとやった経験で、BRAHMANでは使ってこなかった新しいギターの領域を使い始めてるんです。ただ、それも他のパートに受け皿がなくて、ギターだけがブルージーだったら乗らないと思うんですよ。それに対して、ベースもドラムも呼応してる。ブルースマンとしてじゃないけれど、そのブルースを乗っけられる、違うパートの受け皿としての強さが出たんだと思うんです。

FLJ そのバンド・アンサンブルの面白さは今回感じたな。
TOSHI-LOW KOHKIに関しては、特にこのアルバムでは進歩してますね。エンジニアの人との相性も良くて。ギターがしっかりとした太い音で出ている。

FLJ アルバム収録の「怒涛の彼方」にしても、シングルの時とは違って、今回はホーンを入れたアレンジになっているのが面白いし、スゴくカッコ良かった。ホーンはTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAなんだよね?
TOSHI-LOW あの曲は、シングルのレコーディングの時からホーンの音が頭の中で鳴ってたんです。空耳かなと思ったんですけど、聴くたびに頭の中で鳴ってる。それで、アルバムにも入れるってなった時に、「もう一回録るのなら入れたい音があるんだよね」って言って。じゃあラッパを吹ける人って誰かな? 一本のラッパじゃないし、これは最高峰に言った方がいいかなと思って。その最高峰に口ラッパで伝えたんです。北原(雅彦)さんに「パパパじゃなくてパパパーっす」みたいな(笑)。管楽器をやったこともないのに、何で出てきたのかわからない。でもそういうのを形にできるのって幸せですよね。スゴく面白かったです。

FLJ アルバムのラストの曲に「満月の夕」(注:阪神・淡路大震災に向き合う被災地の人々の姿を歌った曲)を入れた背景は?
TOSHI-LOW あの曲はカバーなんですけど、作った本人たち(SOUL FLOWER UNIONの中川敬とHEATWAVEの山口洋)にコーラスやギターを入れてもらったんです。自分でも震災が転機になったように、誰かの転機になるようなことがこの日本でいずれ起きるわけじゃないですか。その時にたぶん歌い継がれる曲だから、自分たちヴァージョンをちゃんと残しておこうと思ったんです。

FLJ アルバム・タイトルが『梵唄 -bonbai-』なんだけど、バンド名の由来でもある「梵」を入れた意味は? 
TOSHI-LOW 4、5枚目のアルバムでいきなりバンド名をつけるみたいなのって、往々にしてあるじゃないですか。それを見てバカだと思ったんですよ。何で今さらそんなことを言うんだ?って。でも今の俺はその気持ちなんです(笑)。やっとこのことか、ってわかった。これでやっと自分たちになっていくんだなって。自分たちのバンド名でもいいかなと思ったぐらいなんです。『BRAHMAN』でも良かったぐらいなんです。

FLJ そのぐらいの気持ちもあって、相反する怒りと愛も入ってるし、いろんな音も入ってる、バランスのいいアルバムになったね。
TOSHI-LOW すべてを包括したいですよね。相反するものも、怒りも愛も、優しさも厳しさも全部あるので。「それだけだ」って言っても生きていけないこともわかってるし。俺らが優しい方にも、怒りの方にも、エッジだけ立ててしまうと嘘くさくなってしまうんで。やっぱり自分たちらしくやるパンクでいたいんです。コピーじゃなくてオリジナルでいたい。そういう気持ちを、ずっと思ってるものを、今回ちょっとでもできたらいいなと思ったし、できてる気はします。

FLJ 2月9日には武道館でライヴをやるよね。武道館でやろうと思ったのは?
TOSHI-LOW 武道館の改修時期が遅れて、使える期間が延びたんですよ。それで「日にち取れちゃったけど、やる?」って言われて。だけど、ライヴハウスで一番きれいに出来上がってる音楽を、もちろんデカいところでたまに観れるのはいいんだけど、武道館でやる必要性はあまり感じなかったんです。ただ、昨今のいろんな人がやってる武道館を見た時に、武道館っていうハコがまずスゴいなと思って。そういう中でもし鳴らさせてもらえる機会があるのなら、自分たちなりの、自分たちがその日一日しかできない何かを武道館でやってみたいなって思うところはあったので。

FLJ やるからにはやるわけだね。
TOSHI-LOW やるからにはやるんですけど、まだ何の準備もしていないです(笑)。

FLJ ステージを八角形のセンター・ステージでやるんでしょ。
TOSHI-LOW そういう漠然とした骨組みはあるんですけど。果たしてそれが上手くいくかどうか。でもやるんだったらチャレンジしたいなっていうのはあって。いわゆる決まり切った武道館の使い方ってあるんですよ。だから、「エーッ、こんなやり方あるの?!」っていうのをやってみたい。そういう意味で、表も裏もないステージのレイアウトなんですけど。果たしてそれがどう作用するのかはわからない。

FLJ TOSHI-LOWはBRAHMANを20年以上やってるわけだけど、自分にとってはもう人生みたいなものなのかな?
TOSHI-LOW もはやメンバーといるのが人生で誰よりも長いですからね。親といる時期よりも長いし、結婚生活よりも長いわけですよ。家族でもあれば、兄弟でもあれば、家でもあれば、人生でもある。ただ、すべてのものは終わるじゃないですか。始まったという幸せがあって、最後には終わる。終わるまでに、俺たちあと何回ライヴをやって、どんな曲ができて、どんな歌い方ができて、どれだけ魂を震えさせることができるのか。無限にあるわけじゃないと思ってるし、また勝負だなと思ってますね。


『梵唄 -bonbai-』
2/7リリース
(トイズファクトリー)
【CD】全12曲
1. 真善美
2. 雷同
3. EVERMORE FOREVER MORE
4. AFTER-SENSATION
5. 其限
6. 今夜
7. 守破離
8. 怒涛の彼方
9. 不倶戴天
10. ナミノウタゲ
11. 天馬空を行く
12. 満月の夕

【初回限定盤 DVD】全32曲「尽未来際~開闢~」at 新宿 ANTIKNOCK
1. FOR ONE’ S LIFE
2. BASIS
3. SHADOW PLAY
4. DEEP
5. BOX
6. BEYOND THE MOUNTAIN
7. DOUBLE-BLIND DOCUMENTS
8. CIRCLE BACK
9. SHOW
10. 其限
11. 遠国
12. THE VOID
13. LOSE ALL
14. A WHITE DEEP MORNING
15. 逆光
16. FIBS IN THE HANDS
17. THE ONLY WAY
18. SPECULATION
19. EPIGRAM
20. CAUSATION
21. 鼎の問
22. 初期衝動
23. 賽の河原
24. 今際の際
25. 露命
26. 空谷の跫音
27. 終夜
28.ARRIVAL TIME
29. 汀に咲く
30. 警醒
31. 霹靂 32.

【12inch】全12曲
SIDE A: 1. 真善美 2. 雷同 3.EVERMORE FOREVER MORE 4. AFTER-SENSATION 5. 其限 6. 今夜
SIDE B: 1. 守破離 2. 怒涛の彼方 3. 不倶戴天 4. ナミノウタゲ 5. 天馬空を行く 6. 満月の夕

初回限定盤【DVD 付】:TFCC-86632 ¥3,685+税
通常盤:TFCC-86633 ¥2,593+税
12inch:TFJC-38031 ¥2,778+税
配信:iTunes, レコチョク他全サイト同時配信

BRAHMAN Tour 2018 梵匿 -bonnoku-

山口 3月3日(土)周南 RISING HALL
広島 3月4日(日)CLUB QUATTRO
京都 3月7日(水)MUSE
新潟 3月9日(金)LOTS
北海道 3月17日(土)Zepp Sapporo
大阪 3月21日(水祝)Namba HATCH
石川 3月23日(金)金沢 EIGHT HALL
富山 3月24日(土)MAIRO
奈良 3月26日(月)NEVER LAND
和歌山 3月29日(木)SHELTER
岡山 3月31日(土)CRAZYMAMA KINGDOM
鳥取 4月1日(日)米子 AZTiC laughs
高知 4月4日(水)X-pt
香川 4月6日(金)高松 festhalle
愛媛 4月8日(日)松山 W studio RED
兵庫 4月10日(火)神戸 Chicken George
滋賀 4月11日(水)U-STONE
鹿児島 4月17日(火)Caparvo Hall
熊本 4月19日(木)DRUM Be-9
福岡 4月21日(土)DRUM LOGOS
岐阜 4月23日(月)CLUB ROOTS
長野 4月25日(水)JUNK BOX
茨城 5月8日(火)水戸 LIGHT HOUSE
群馬 5月10日(木)高崎 Club FLEEZ
山形 5月24日(木)ミュージック昭和セッション
青森 5月26日(土)Quarter
秋田 5月27日(日)Club SWINDLE
岩手 5月29日(火)盛岡 CLUB CHANGE WAVE
福島 5月31日(木)郡山 HIP SHOT JAPAN
宮城 6月2日(土)仙台 GIGS
栃木 6月5日(火)HEAVEN’ S ROCK Utsunomiya VJ-2
埼玉 6月7日(木)HEAVEN’ S ROCK Shintoshin VJ-3
愛知 6月9日(土)Zepp Nagoya
静岡 6月10日(日)清水 SOUND SHOWER ark
東京 6月13日(水)Zepp Tokyo
東京 6月14日(木)Zepp Tokyo

前売り ¥2,900(税込み)/ドリンク代別途必要(山形公演を除く)

一般発売日2月10日(土)

http://brahman-tc.com

FLJ PICKS