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BAD HOP

October 04,2017

2017年のヒップホップ・シーンに決定的とも言える一枚をドロップ!

From FLJ ISSUE 56(09.30.2017)

PHOTO: UG Yuji Kaneko

今またさらなる盛り上がりを見せる日本の若手のヒップホップ・シーン。その中で遂に決定的とも言える一枚がドロップされた。川崎出身の8MC&1DJ によるヒップホップ・クルー、BAD HOPのセカンド・アルバム『Mobb Life』。初の全国流通の名に恥じない作品を意識して制作されたというこのアルバム、楽曲のクオリティ・コントロールは徹底してYZERRが行ったという。そこにあるのは、クオリティの高い楽曲、刺さる言葉、明確なヴィジョン、最先端のスタイルの意識、ヒップホップの美学、ライフスタイルの音楽、メンバー一人ひとりのスキルアップ、クルーのパワー、etc…。そのすべてはヒップホップのためにあるはずだ。SUMMER BOMB 2017出演前の彼らをキャッチして話を聞いた。


Front row L to R:
G-K.I.D, Tiji Jojo, Bark
Back row L to R:
Yellow Pato, Benjazzy, T-Pablow, YZERR, Vingo



FLJ アルバム、スゴいの作ったね! 自分たちでもその手応えはあるの?
YZERR 今回は自分らでもいいの作ったなって初めて言える作品が作れたかもしれないです。

FLJ そこは狙ったの?
YZERR 今回が一番聴いてもらえるタイミングだと思ったので。今ここで一枚しっかりしたものを全国流通でちゃんと作りたいなと思って。それがこうやって形になったので、良かったなと思ってます。

FLJ リリックも強くて、全部ハッキリ言ってるよね。
YZERR それ、けっこうよく言われますね。嫌いなものは嫌い、ダサイものはダサイとか、自分たちのヴィジョンみたいなものを明確に言えてるかもしれないです。

FLJ そこは今のバトル・ブームも含めてヒップホップが盛り上がってる中で言ってることだよね?
YZERR そうですね。そういう溜まってるものがスタジオの中で良い風に出たなと思って。
T-Pablow 溜まってるものが出たのはスゴくありますね。たぶん今まで批判を恐れていたから自分も批判しないっていうところもあったと思うんです。でも今回、自分が何を言われてもいいから自分の意見をちゃんと素直に言うっていうところは、みんなスゲエ心がけてたみたいですね。

FLJ ラップのスキルがどんどん上がっているのに、スゴくストレートに刺さるリリックなのがスゴいなと思って。
T-Pablow 1文字1文字聴き取れるっていうのは、YZERRからライヴでもちゃんとできるように指示されましたね。

FLJ そこはみんなをまとめる際にどのように指示していったの?
YZERR 今回はスムーズにいったイメージがあります。もうあまり言わなくてもみんなスキルが上がってきたなっていうのと、全国流通だったりでみんなの意識が変わった瞬間があって。今までは遊びの延長線上だったと思うんですけど、今回はアーティストとしてちゃんといいものを作ろうっていう、そういう気持ちが今までと比べて全然強かった。
T-Pablow 今21歳になって、大人になって、お金を稼ぐことの大変さだったり、生きてくことの大切さだったりをスゲエわかったというか。その中で、リスペクトで出してくれるお金に対して、自分たちも、良い作品を作ろうって思うようになった。自分たちが「これカッコいいから聴いて」っていうよりも、買ってもらった人が聴いて好きか嫌いかを判断してほしいですね。
YZERR 俺たちがいけてるかいけてないかを、いろんな人に判断してほしいなっていうぐらい、やり切ったなっていう気持ちはありますね。

FLJ メンバー一人ひとりの個性も強いし、そこを出すための役割分担は意識した?
YZERR 考えましたね。スタジオの中では友達であることを気にせずに、ちゃんとダメなところはダメだって指摘をしましたね。
T-Pablow メチャクチャ言い合ったよね。
YZERR もうダメ出ししかないぐらい。「ハイ、ダメ」「もうおまえダメだよ、それ」みたいな。そこはハッキリしましたね。
T-Pablow で、スタジオ内で書き直す。一回外に出て、車とかに行って書き直すとか。
YZERR みんなレコーディングするのが嫌になるぐらいのプレッシャーがあったと思うんですけど。
Vingo いやもう怖すぎてしゃべれなくなるくらい。
YZERR そのくらいのレベルのダメ出し。「そんなこと言っちゃっていいんだ?」っていうことも言うんで。
T-Pablow あと、今回の作品はみんな個人ができることを無理しないで最大限に引き伸ばした感じですね。声にしても、Barkだったらみんなより声が低かったりするから、高いメロディをやるんじゃなく、Barkの長所、良いところだけをみんなで伸ばして、みんなで意見を言い合いながら、「こうやってやった方がいいんじゃないの?」って。そういうところは目指したかもしれないですね。
Vingo ちゃんと個性が出てるとは思います。やれるだけはやりました。

FLJ 今回のトラック選びからの制作のプロセスは?
YZERR 今回はLil’諭吉さん、Zotさん(Zot on the WAVE)がスタジオまで来てくれて。その場でやってくれましたね。けっこう自分たちからの注文があって。「こういう風にしてほしい」っていうのをトラックメイカーの人に対しても言って。スゴくやりづらかったと思うんですよ。で、一回発売を延期したんですけど。それはちょっと自分たちの納得できるものを作れてないなと思って。結局この発売日になったのは意味があることだなと思いますね。

FLJ じゃあ今までよりも詰めて作ったわけで、妥協をしなかったんだね。
YZERR 絶対妥協はしたくなかったですね。
T-Pablow 85%はやり切りましたね。

FLJ 残りの15%は?(笑)
T-Pablow ぶっちゃけ15%は次の作品に残していますね。最後もう一回詰めればできるんですけど、最後15%のパワーを残した。この制作が終わったら、こで溜めたパワーですぐに次のを作ろうと思っていたんで。残りの15%を使い切っちゃったら、また半年ぐらい作れなくなっちゃうんで。だから、すぐ動けるように。

FLJ でもこれだけ手応えのあるアルバムを作ったら、15%とか関係なく、次にやりたいことがかなり出てるんじゃないのかな。
YZERR もう今の状態でも、今回のアルバムを越せる実力があるなって思うし、もっとやりたいこと、今回できなかったこともあるし。すでにアルバムの曲を今では古く感じちゃってるので。次はもっともっとスゴいことができるんだろうなっていうのを積み上げてってますね。

FLJ 当然USの先端のものを意識してるとは思うけれど、今回そういう部分はどう落とし込んでいったの?
YZERR 今回は「vs 日本」っていうよりも、世界の同い年とか同世代のラッパーに負けたくないなっていう意識。ヒップホップっていうのを日本の中で留めて考えたくなくて、世界のヒップホップに対して、少しでも張り合おうとする挑戦的な部分をみんな一人ひとり考えてたんじゃないかな。

FLJ 今回のリリックは嫌いなもの、ダサイものだけじゃなく、メイクマネーすることや酒、車、女のことも歌ってるんだけど、そういう成功、いい暮らしについてはどう考えてる?
YZERR 今まで現実的ではなかったことがどんどん目の前に現れるようになって。若いヤツらがいい車に乗って、いい時計をつけて、いい酒飲んで、いい女が横にいる、そういうのを日本の若いラッパーでやってる人がいないなと思ったんです。規模感はUSと同じでいきたいというか。ダイアモンドのロレックス着けて、ロールスロイスに乗って、ランボルギーニに乗って。それがもしかしたら可能になっちゃうんじゃないのかな?って、どんどん自分らも思うようになってきて。それがたぶん曲に出てて。今から2~3年経ってこのアルバムを振り返った時に、「ああ、あん時言ってたことが実現されてるなあ」って言えるように頑張りたいです。

FLJ 「Super Car」っていう曲にしても、見栄を張っていい車に乗ってるって言わないで、「誰もが振り向く男の夢 乗るため稼ぐだが足りないぜ まだ想像でエンジンかける」って歌ってるのがリアルでいいなと思って。
T-Pablow 俺らやっぱUSの成り上がり感みたいなものが好きなんで。かわいい女の子といい車に乗って、いいメシ食って、いいとこ住んで、いい酒飲んで、けど地元の友達とつるみながらどんどん生活基準を上げていく。それがUSのマネっこみたいに言われてもしょうがないとは思うんですけど、でもそれを日本でもやってみたいし、最終的には自分でビルとかも持ちたい。それが俺たちの会社だったり。そこまでは見えてますね。そこまでを日本で初めてやってみたいです。

FLJ でも、相手のことを嫌いとかダサイとか、いい暮らしをしたいとか、意外と日本では誰も言ってないなと思って。やっとそういうことをハッキリと歌ってくれたなと思ったんだけど。
T-Pablow 日本人はやっぱりひたむきな感じが好きだから。リアルで現実的なことを言うのがカッコいいというか、そういうことにみんな沸きがちなんですけど。絶対普通にいいとこ住んで、家政婦さん雇って、奥さん超かわいくて、いい車に乗ってる方が、男としてカッコいいじゃないですか。
YZERR 若い人は特に言わないですよね。何でかな?と思って。ヒップホップを選んだからにはガッツリ金を稼がないとっていうのは一つあるので。

FLJ それがヒップホップ・ドリームだしね。そこは言おうと思ったんだ?
YZERR 常に思ってますね。言おうと思うよりも、常に思ってることが言葉になりましたね。


8月25日、豊洲PITで行われた『SUMMER BOMB 2017』のトリのT-PablowのステージにBAD HOPが登場

FLJ 曲の合間にスキットで「# リバトーク (Skit)」が入ってるのも超ウケたんだけど。
T-Pablow あれはZeebraさんのWREPラジオで「CHOOSY TUESDAY」っていう番組をやらせてもらってて、そこで「# リバトーク」っていうコーナーがあって。地元で溜まってるみたいな感じでやろうってなって。どちらかって言うと、T-Pablowというよりは本名でいる時の感じのノリ。友達とかとダベってる時みたいな。俺らいくらカッコいいこと言って、いくらラップしても、まだ21歳なんで。

FLJ あの番組何度か聴いたけど、面白いね。リスナーからの質問とか悩み相談とかもあって。リスナーと交流して何か気づいたこととかはある?
YZERR 日本の人はヒップホップに対して何か勘違いがあるのかな。僕たちが憧れたのはアメリカのヒップホップだったりするので。日本語のバトルから入った人たちって、ヒップホップに向いてないなと思うことがスゴく多くて。ちょっと何か言っただけで悪さ自慢とかして。悪さ自慢だったらヒップホップとか聴かない方がいいんじゃないかって思っちゃいますね。向こうはそれをエンターテインメントとしてやるのに、こっちはすぐ人を叩こうとする。若い子たちは全然曲を知らないし、そういう子たちにどんどん教えてあげようって思いましたね。今回のアルバムでも「Ocean View」はスゴいキャッチーな曲だと思うんですよ。でも、「Black Bandana」や「Gucci Scarf」みたいな、ちょっとトレンドを押さえつつ、ちゃんとヒップホップの暴力的な部分も含めてやってるような曲も、14歳、15歳の女の子にも聴いてほしいなって思いますね。
T-Pablow ラジオを始めた理由は、最新の曲をみんなに知ってもらいたいから。毎回、何曲も紹介してるんですよ。それで徐々に自分たちの番組を聴いてくれてる人たちがUSの最先端のヒップホップをわかり始めて。自分たちでも調べるようになって。番組を始めて3ヶ月ぐらいの間でもスゴく感じられましたね。やって良かったですよ。

FLJ でもそういう若い子たちにとってBAD HOPは憧れでもあるし、夢を与えているよね。そういうロール・モデルとしての意識はある?
YZERR 今回で自分は生まれたかもしれないですね。僕らのヒップホップって、ストリートで育って、生まれた場所も川崎で、全然お金も何もないところから何かを成し遂げようって出て来たんで。若い子のラップはカッコいいんですけど、全然だなって思うことが多くて。そういう経験もしてきた若いラッパーって、俺たち以降出てこないんじゃないかな。
T-Pablow それが酸いも甘いも知ってるから、表現できる幅も広いっていうことでしょ? 俺はずっと自分がそういうロール・モデルにならなきゃいけないのかな?って思ってきたんですけど、逆に今回のアルバムでそういうのがなくなりましたね。逆に、これから好き勝手やって、誰も追いつけなくなるくらいもっとハチャメチャでもいいんだと思って。

FLJ スーパーサイヤン・キャラ?
T-Pablow そうですね(笑)。
YZERR 一つ言うと、「これがヒップホップだからちゃんと聴いてよ」っていう気持ちがスゴく生まれましたね。自分のことをヒップホップだってしっかり言える。今までは言えてなかったんですけど。自分がヒップホップを好きだっていうのは、今回作った上で改めて感じました。「これを聴いてくれてたら絶対大丈夫だから」っていう気持ちはスゴく強いですね。

FLJ でもそれって、ちゃんとした作品を作れた手応えがあるからだろうね。
YZERR 本当そうですね。周りの人がいいって言ってくれるんで、勘違いさせてもらってます。本当、良かったですよ。

FLJ リアルなことを言うっていうのももちろんあるんだけど、ヒップホップって音楽だし、エンターテインメントだから、そこを形として落とし込むのって実は難しいじゃない? それをやったんだろうなって思った。
YZERR スゴい難しかったです。でも今だからできたことですね。このアルバムは今のこの瞬間だからできたもの。ヒットする前のアルバムなのかもなって思ってます。次はたぶん車に乗った歌を書くと思うんで。だから、これはスゴい夢が詰まったアルバムだなって思いますね。

FLJ 今後の活動は?
YZERR みんなのソロも出していきたいですね。1枚クルーでやったんで、もう1枚は大事な作品にしたい。もうちょっとやって、みんながもう少しスキルアップしてから落ち合おうみたいな感じで。
T-Pablow あと、場所はまだ決まってないんですけど、ワンマン・ライヴをやります。デカいところでやる予定です。

FLJ 最後に、ヒップホップの良さって何だろう?
YZERR それがなかったらろくでもない自分たちみたいな人間が、少しでもスポットライトを浴びられるような音楽。ネガティヴなものがポジティヴになったり。自分たちみたいに何もなかったヤツでもプラスに変えられる唯一の音楽かな。
T-Pablow 最近TVとか観ると、不倫とか流行ってるじゃないですか。不倫って、真面目だった人が裏でやってますよね。でもラッパーって、「女好きだぜ」とか、浮気はもちろん、奥さんがいるのにそういうことを歌ったりする。「こんな悪いことしてるぜ」とか、正直じゃないですか。だから、ヒップホップを好きな人は真っ直ぐな人が多い。ウソつかない音楽だし、ウソつけないじゃないですか。だから、イジメられても、普通だと隠したがるのに、それも力に変えることができる。その真っ直ぐさみたいなところがヒップホップの魅力だと思います。世の中みんなウソついて、ごまかしてるけど、ラッパーはそれを言っちゃってる。一種のアホなんですけど。「そんなこと言うの?」っていうようなアホの人っているじゃないですか。「そんなことトピックにしちゃうの?」って。それが俺がヒップホップの大好きなところですね。




『Mobb Life』
(BAD HOP/KSR Corp.)
9月6日リリース

http://badhop-deal.com
Twitter: @badhop_official
Instagram: @badhop_official

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