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WAVES/ウェイブス

June 05,2020

7月10日(金)公開!
音楽と映像で登場人物の心情を疑似体験させる、今までにない全く新しい映画体験

From FLJ ISSUE 71(3.30.2020)

今やアメリカ映画界の最前線に立つ映画制作会社、A24が放つ最新作、『WAVES/ウェイブス』。トロント国際映画祭では、史上最長のスタンディング・オベーションを浴び、「一生に一度の傑作」「今年、最もまばゆい体験」と一躍話題になった映画だ。ストーリーとしては、傷ついた若者たちが、新たな一歩を踏み出すまでを描く希望の物語なのだが、スクリーンいっぱいに躍動する素晴らしい選曲の音楽、息を呑むほど美しい色彩と独創的なカメラワーク、登場人物の心情を疑似体験させるストーリーテリングは、今までにない映画体験をもたらし、映画の持つ無限の可能性を感じさせるものとなっている。恋人との別れと出会い、親子の確執、家族の絆、すべての傷を癒す愛といった普遍的なテーマを、新たな手法で描いたトレイ・エドワード・シュルツ監督のインタビューを紹介する。

トレイ・エドワード・シュルツ監督 インタビュー

FLJ 『WAVES』のアイデアはどこから生まれたのですか?
トレイ・エドワード・シュルツ 10年以上前から漠然と考えていたアイデアなんだ。でも最初から映画を作ろうと決めていたわけではない。高校時代、映画『バッド・チューニング』、『ブギーナイツ』、『グッドフェローズ』、『アメリカン・グラフィティ』などにハマり、ティーンと音楽というテーマで何かを作りたいと思ったのが原点だった。でも当時は、ストーリーなんて全く組み立てていなかった。『WAVES』は僕の体験が元になっている半自伝的な作品なんだけど、この10年の間にストーリーは進化を繰り返していき、やっと映画としての枠組みができたのさ。

FLJ 『WAVES』はサウンドトラックがとにかく素晴らしく、各時代の名曲が使われていますが、どのように選曲したのですか?
トレイ・エドワード・シュルツ 高校時代、音楽は僕にとって欠かせないもので、常にいいサウンドを探し求めていた。ラジオから流れてくる曲だけじゃない。10年前の曲、5年前の曲、2年前の曲など、とにかく幅広く聴き漁っていた。今でもそれは変わらないね。その頃から、いつか使えそうな曲を集めて、プレイリストを作っていったんだ。各キャラクター、各シーンに使う曲を厳選し始めたのは、脚本の執筆を始めてからだ。主人公のタイラーとエミリーも、僕と同じように時代を選ばず曲を聴くはずだと感じ、最近の曲だけではなく、10年以上前のものも用いることにした。彼らも純粋に心に響く音楽に惹かれるタイプだと思ったんだ。曲はそれぞれストーリーを語っている。映画の物語と共鳴しているのがわかるはずだ。

FLJ 映画で使った曲の中で、特に思い入れが強いものはありますか?
トレイ・エドワード・シュルツ ロードトリップのシーンで、フランク・オーシャンの「Seigfried」が流れるんだけど、彼の『Blonde』は僕が最も好きなアルバムの一つで、「Seigfried」は僕の恋人が最も好きな曲なんだ。そのシーンを見事にとらえていて、正直でありつつも脆い。そこが美しいと思った。あのアルバムはいつ聴いても素晴らしいね。フランク本人が誰かに聞いた物語、もしくはフランク本人が歩んできた人生を体験しているような気分になる。「Seigfried」を用いたシーンでは、主人公が好きな人と旅に出て、自由を肌身で感じるんだ。納得がいくまで何度も編集していたら、最後は僕も泣き崩れてしまった。音楽とビジュアルが見事にシンクロして、心を強く突き動かされたからだ。

FLJ 『WAVES』は監督にとってパーソナルな内容ですが、今の若者たちをとらえています。リサーチはどのようにしたのですか?
トレイ・エドワード・シュルツ 基本的には僕の高校時代、僕の恋人の高校時代、ケルヴィン・ハリソン・Jrの高校時代の経験を参考にしている。体験自体もそうだし、周囲からのプレッシャーや悩みなど10代特有の感情もそうだ。また今の10代を理解するために、SNSやウェブサイトなどを徹底的に調べた。実際に若者と会って話し、脚本を読んでもらって、率直なフィードバックを基に修正を加えていった。今の10代も僕たちの頃とさほど変わらないことがわかった。違うのはインスタグラムなど使うツールだけだ。

FLJ 作中の若者たち、特にタイラーは大きな重圧がのしかかっています。今の10代もご自身と同じようなプレッシャーに苦しんでいると感じたのでしょうか?
トレイ・エドワード・シュルツ そうだね。歩んできた道のりや観点によっても異なると思う。主人公のタイラーは僕とケルヴィンを融合させたような人物だ。僕たち二人は、とてつもないプレッシャーの中で育ってきた。両親の期待が大きく、重い責任を担っていたんだ。僕に関して言うと、高校時代にレスリングをしていて、タイラーのように肩を痛めたんだ。さらに両親の仕事を手伝い、勉強も決して手を抜けなかった。周囲からは大人として扱われるし、一杯一杯だったのさ。身動きが取れず、かわす方法もないから、何でもストレートに受け止めてしまっていた。失敗は許されないと、常にストレスを抱えていたのを覚えているよ。ケルヴィンにとっては、それが音楽だった。ニューオーリンズで生まれ育ったケルヴィンは、素晴らしいミュージシャンと歌手を両親に持っている。だから彼も音楽の道を進むのが当然の流れだった。両親の期待も相当で、神童のように育てられたらしい。

FLJ 本作では黒人の家族が描かれていますが、それもケルヴィンの視点を参考にしたのでしょうか?
トレイ・エドワード・シュルツ そう、ケルヴィンだ。ケルヴィンとは僕の前作『イット・カムズ・アット・ナイト』で出会い、驚くほど意気投合したから、絶対にまた彼と仕事をしたいと思っていた。本作のアイデアをケルヴィンに話した時、彼はタイラーの役にすぐ共感したらしい。それからはテキストメッセージを送ったり、電話をしたりして、互いの過去のこと、両親や恋人との関係のこと、当時感じていたプレッシャーなどについて語り合った。そのやりとりを僕たちは「セラピーセッション」と呼んでいんだんだけどね。だから脚本を書きながら、ケルヴィンの黒人としての視点を取り入れるのは、ごく自然の流れだった。ケルヴィンは脚本の第1稿を読んだ数少ない人物の一人だ。撮影に入る8か月前だった。それ以降もケルヴィンからのコメントを参考にして改訂を重ねていった。それは他のキャストが加わってからも同じだ。僕は、「みんなの意見は聞いているよ。一緒に作っていこう」とスタンスだった。みんなの話に耳を傾け、それを作品に反映していったんだ。だからキャスト全員にとって、半自伝的な内容に仕上がったと思う。全体の8割は、各々が生きてきた人生なんだ。

FLJ 画面比が変わったり、360度カメラを使ったり、ユニークかつ多様なスタイルを用いていますが、それはどこからくるのでしょうか?
トレイ・エドワード・シュルツ これまでの経験が積み重なった結果だと思う。長編デビュー作『Krisha』から始まっている。『イット・カムズ・アット・ナイト』はより客観的な作りだから、どちらかと言うと本作は『Krisha』に近いかもね。主人公に共感し、没入していくタイプの作品だ。20代の時、テレンス・マリック監督の下で働いていたんだけど、彼の影響は大きい。彼は彼にしかできない映画作りをしていて、独自のスタイルを確立しているから、彼のマネをしても無駄なだけだった。だから僕にできることを見つけなければいけなかった。その後、短編で失敗を繰り返しながら模索していき、『Krisha』でやっと僕のスタイルを発見できた。周囲もそれに反応してくれたんだ。登場人物の心情を表すためにはどう撮るのがベストか、本作でも常に意識していたよ。


トレイ・エドワード・シュルツ監督(左)

『WAVES/ウェイブス』

公開時期:2020年7月10日(金)
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
作曲:トレント・レズナー&アッティカス・ロス
原題:WAVES /2019年/アメリカ/英語/ビスタサイズ/135分/PG12
©2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

『WAVES/ウェイブス』を彩る豪華31曲のプレイリスト

アニマル・コレクティヴ「FLORIDADA」「LOCH RAVEN (LIVE)」「BLUISH」
テーム・インパラ「BE ABOVE IT」 「BE ABOVE IT -EROL ALKAN REWORK」「BE ABOVE IT – LIVE」
フランク・オーシャン「MITSUBISHI SONY」「SIDEWAYS」 「FLORIDA」「RUSHES」「RUSHES (BASS GUITAR LAYER)」「SEIGFRIED」
ダイナ・ワシントン「WHAT A DIFFERENCE A DAY MAKES」
ケルヴィン・ハリソン・Jr「UNKNOWN」
エイサップ・ロッキー「LVL」
ザ・シューズ「AMERICA」
ケンドリック・ラマー「BACKSEAT FREESTYLE」
タイラー・ザ・クリエイター feat. ファレル・ウィリアムス「IFHY」
H.E.R.「FOCUS」
エイミー・ワインハウス「LOVE IS A LOSING GAME」
ファック・ボタンズ「SURF SOLAR」
THEY.「U RITE」「U-RITE (LOUIS FUTON REMIX)」
カニエ・ウェスト「I AM A GOD」
キッド・カディ「GHOST!」
グレン・ミラー・オーケストラ「MOONLIGHT SERENADE」
コリン・ステットソン「THE STARS IN HIS HEAD(DARK LIGHTS REMIX)」
チャンス・ザ・ラッパー「HOW GREAT」
SZA feat. アイザイア・ラシャド「PRETTY LITTLE BIRDS」
レディオヘッド「TRUE LOVE WAITS」
アラバマ・シェイクス「SOUND & COLOR」

https://www.phantom-film.com/waves-movie
https://www.instagram.com/wavesmovie_jp
https://twitter.com/WAVES_jp

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